以前ご質問いただいた内容と似ているのですが、先日こんな患者さんを診察しました。

 

 かかりつけ医で甲状腺機能低下症を指摘され、甲状腺ホルモン剤を処方されたのですが、甲状腺ホルモン剤の副作用を知り、飲みたくないと言われた患者さんです。

 

 薬局で甲状腺ホルモン剤を処方されたとき、薬の説明書もいっしょに渡され、そこに副作用のことが書いてあったそうです。実物を見せてもらいましたが、副作用についてたくさん書いてあり、真剣に読んだら飲みたくなくなるのは当然だと思いました。製薬会社が出している薬の添付文書(説明書みたいなものです)に記載されているものですから、内容は決して間違っているものではないのですが、「それ全部載せるの?」というくらい盛りだくさんでした。

 

 

 添付文書に書かれている副作用は以下の通りです。

 

重大な副作用

・狭心症

・肝機能障害、黄疸

・副腎クリーゼ

・晩期循環不全

・ショック

・うっ血性心不全

 

その他の副作用

・過敏症:過敏症状

・肝臓:肝機能検査値異常(AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇等)

・循環器:心悸亢進、脈拍増加、不整脈

・精神神経系:頭痛、めまい、不眠、振戦、神経過敏・興奮・不安感・躁うつ等の精神症状

・消化器:嘔吐、下痢、食欲不振

・その他:筋肉痛、月経障害、体重減少、脱力感、皮膚の潮紅、発汗、発熱、倦怠感

 

 

 まともに読んだら、飲む気なくなるのは当然ですね。

 

 これらの副作用とされる症状は、過敏症を除き、不適切な治療によって起きてしまう症状です(これを副作用と呼ぶのか微妙です)。

 

 血液検査で甲状腺ホルモン値を確認しながら適切な投与量で治療している限り、副作用(とされる)症状は出現しません。副腎クリーゼは、合併する副腎不全を見逃して甲状腺ホルモン剤を投与することによって起こることがある副作用です。副腎不全の治療を先行させる必要があります。

 

 適切に治療されている限り、副作用については心配いりません。

 最近は新型コロナウイルス感染症が落ち着いているようです。街にも人が戻ってきました。私は電車通勤ですが、早朝の電車内も混むようになってきました(混むと言ってもたいした混雑ではありませんが)。早朝の乗客ですが、これから通勤するというお客さんもいますが、むしろ朝帰りの若い人たちが多いのです。朝まで仕事をしたり、遊んでいたりした人たちが増えてきたということのようです。ですから、私の乗る電車は、平日よりも土曜日のほうが混んでいます。

 

 さて、新型コロナウイルス感染症の流行のせいで、職場や学校からは毎日体温を測定するように指示されたという方も多いのではないでしょうか。そこで初めて自分の体温が普段どれくらいなのか知った、という方も増えているようです。

 

 自分の体温は思ったより高い、かなり低体温だ、ということで、甲状腺の病気ではないかと受診される方が増えた印象です。たしかに甲状腺機能異常では、微熱が続いたり、低体温になったりする場合はあります。

 

 バセドウ病などの甲状腺中毒症では体温が上昇しますが、ほとんどは微熱程度です。ごく軽度の異常の場合は、体温が上昇することはほとんどないでしょう。体温が上昇する場合は、甲状腺中毒症の他の症状も出ているはずです。

 

 甲状腺機能低下症では、低体温になる場合があります。しかし、軽度の機能低下では体温にはあまり影響はなく、かなりの低下症にならないと低体温にはならないようです。その場合には、甲状腺機能低下症の他の症状も出ているはずです。

 

 つまり、自覚症状が微熱あるいは低体温のみの場合は、甲状腺の病気以外を第一に考えたほうがよいということです。甲状腺機能異常の症状をあまり自覚しない方もいるので、体温異常だけなら甲状腺の病気ではないと断言はできませんが、甲状腺中毒症や甲状腺機能低下症の症状が併存するときに、甲状腺の検査を受けてみるといいと思います。

 新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた方がかなり増えてきました。最近では若い方への接種も進み、当院通院中の若い患者さんから「ワクチンを接種しても大丈夫か」という質問が増えています。

 

 そんな若い患者さんから、「ワクチンを接種するとバセドウ病になる」という話が広がっていることを聞きました。

 

 以前記事にしたように、新型コロナウイルス感染症患者で自己免疫疾患を発症したとする報告が複数あるので、ワクチン接種でも同様のことが起こるかもしれないということは想像できます。

 

 実際に文献を調べてみると、ワクチン接種後にバセドウ病を発症、あるいはバセドウ病が再燃したという報告があるようです(日本からの報告もあります)。また、バセドウ病が安定していた患者さんが、ワクチン接種後に甲状腺眼症を発症したという報告もあります。

 

 これまでに発表されている研究結果は、「症例報告」といって「そんな患者さんがいました」という報告に過ぎません。ワクチン接種とバセドウ病発症を関連付けるには、あまり信頼性の高い報告ではありません。ワクチンを接種するとどれくらいの割合でバセドウ病が発症するのか、といった研究があればいいのですが、これまでにそのような報告はありません。したがって、バセドウ病の発症を恐れる必要はないと思います。

★術後放射性ヨウ素内用療法に用いる放射性ヨウ素の投与量は?★

 

・アブレーションには1.1GBq(30mCi)を用いる

・補助療法には3.7-5.6 GBq(100-150mCi)を用いる

・治療には3.7-7.4GBq(100-200mCi)を用いる

 

 アブレーションに必要な投与量は、30mCiで十分であることが示されており、この量であれば外来でも可能です。

 

 米国では補助療法は100~150mCiで行うことを推奨しています。日本の場合、100mCiを投与する場合、現状では専用の治療室に入院しなければなりません。しかし治療病室はたいへん不足しているため、入院待機期間が非常に長いのが現状です。現在アブレーションとして外来で30mCiの投与が行われていますが、そのほとんどは補助療法目的だと思われます。ただし、補助療法として30mCiの投与で効果があるかどうかについては、これまでに研究報告がありません。したがって、ガイドラインでは治療に準ずる投与量を推奨していますが、日本の現状を考慮して、補助療法を30mCiで行うことはやむを得ないと補足しています。

 

 

 

★分化型甲状腺癌の再発(局所、リンパ節転移、遠隔)に対して放射性ヨウ素内用療法は推奨されるか?★

 

◎◎◎ 病変の部位、数、大きさ、全体の進行度を考慮して判断することを推奨する

 

◎◎◎ 肺転移には強く推奨する

 肺転移は内用療法が最も期待できるので、積極的に行われます。

 

◎◎◎ 骨転移には強く推奨する

 骨転移のみを有する患者に対する放射性ヨウ素内用療法の効果を検証した研究報告はないようです。しかし、肺転移に比べれば効果は劣りますが、骨転移にも明らかな効果が認められるので、強い推奨となっています。

 

◎   手術適応外だが治療を要する局所再発、リンパ節転移には弱く推奨する

 局所再発やリンパ節再発の治療は、原則として手術です。内用療法は効果があまり期待できないのですが、まれによく効いたという報告もあるので、手術ができないような患者に対して行う場合があります。

 

××× 脳転移には推奨しない

 手術や放射線外照射を行うのが原則です。脳転移に内用療法を行うと、脳浮腫をきたして緊急対応が必要な場合が出てきます。その際、治療室に入室中ですから、患者さんを外に出すことができません。適切な対応ができないので、脳転移は治療の対象とはしないのが現状です。また、脳転移だけ認めるということは少なく、実際には肺や骨にも転移していることが多いので、脳転移を手術などで治療したあとで内用療法を行うことはよくやられています。

 

××× その他の臓器転移には推奨しない

 肺、骨、脳以外の転移はまれですが、肝臓、腎臓、副腎などに転移が見られることがあります。多数例を検討した報告はありませんし、進行例でみられることが多いため、内用療法では対応困難とされています。

 

××× 転移部位が明らかでないサイログロブリン高値症例には推奨しない

 ときどきこのようなケースでも行われることがあります。また、血中サイログロブリン値が徐々に上昇している場合にも行う場合があるでしょう。しかし、内用療法を行ったら予後が改善するのかどうかは分かっていません。したがって、積極的には推奨されません。

 

 

以上、2018年改訂の甲状腺腫瘍診療ガイドラインから、放射性ヨウ素内用療法について簡単にまとめてみました。参考にしていただければ幸いです。

★甲状腺分化癌の術後に放射性ヨウ素内用療法は推奨されるか?★

 

◎◎◎ 高リスク乳頭癌には推奨する

 

 米国の研究で、高リスクをStage III・IVとし、放射性ヨウ素内用療法の効果を調べると、癌による死亡や再発を7割程度に抑えられたとされています。

 

◎   中リスク乳頭癌には予後因子を考慮したうえで推奨する

 

 これまでの研究では、再発抑制に関連があったとする研究がある一方で、関連がなかったとする報告も多いこと、中リスクの定義が日本のものとは異なること、また投与量については考慮されていないことなどから、弱い推奨となったのでしょう。

 

××× 低リスク乳頭癌には推奨しない

 

 そもそも低リスク乳頭癌は、甲状腺全摘術の対象にはならないため、放射性ヨウ素内用療法は適応外となります。たまたま両葉に存在していて全摘術が行われても、放射性ヨウ素内用療法は行いません。これまでの研究結果からも、放射性ヨウ素内用療法は再発予防効果などには関連しないことが示されています。

 

◎◎◎ 広汎浸潤型濾胞癌には推奨する

××  微少浸潤型濾胞癌には推奨しない

 

 甲状腺濾胞性腫瘍が疑われた場合、術前から遠隔転移が明らかであれば濾胞癌と診断可能で、甲状腺全摘術後に放射性ヨウ素内用療法が行われます。

 遠隔転移を伴わない場合、通常は濾胞癌かどうか術前に診断できないので、片葉切除が行われます。

 術後の病理診断で、広汎浸潤型濾胞癌と診断された場合、遠隔転移がない場合も補完全摘(残っている甲状腺の切除)を行って、放射性ヨウ素内用療法を行うことが推奨されています。ただし、広汎浸潤型濾胞癌は患者数が少ないため、多数例の研究報告はほとんどなく、内用療法の有無で転移や再発に違いがあるのか調べた研究はありません。遠隔転移の頻度が比較的高いので、転移を早期に発見できるように補完全摘とアブレーションを行っておいたほうが望ましいだろうとのことです。

 微少浸潤型濾胞癌の場合、遠隔転移を起こすこともありますが、広汎浸潤型に比べれば少なく、生命予後も悪くありません。したがって、補完全摘およびアブレーションなどの治療を行うことは一律には推奨していません。ただし45歳以上、4cm以上の大きな腫瘍、顕微鏡で見たときに血管内に腫瘍が入り込んでいる箇所が多いなどの所見は、再発の危険因子になると報告されています。このような因子が複数ある時は、補完全摘を考慮してもよいとされています。