つい先ほど、年内の診療を終了いたしました。

 

 昨年末、

「昨年末、クリニックの内装がダメージを受けてしまい、近い将来大規模な工事をしなければならないと書きました。」

と書きました。

 

 しかし、修復工事が難しい状況になったので、思い切って移転しようと思い、移転計画を進めていきました。そして移転先が決まり、内装の設計もほぼ決まり、契約までした後で、移転先の管理会社との間にトラブル発生。解決するにあたり弁護士さんに依頼する事態になりました。結果的には契約を解消して、移転計画も中止になりました。トラブルの理由について、本当は言いまくりたいのですが、詳しく言えないのが残念です。大きな損失が発生してしまいましたが、「移転するよりはましだ」と思うくらい腹立たしかったのです。

 

 弁護士さんに依頼するのは今回が2度目でした(初回は内装ダメージの件)。仕事がとても速く、相手との交渉も見事です。相手への通知文を読むと、ものすごい圧力を感じます(こんな文章が自分宛てに来たら、かなり動揺するだろうなぁ)。弁護士費用は安くありませんが、強力な味方になってくれます。

 

 ということで、これから最低限の修復工事を予定しています。そしてしばらくは今の場所でおとなしくしていようと思います。

 

 来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 甲状腺の病気では、治療や経過観察のための通院が長期間にわたることがほとんどです。内服薬で治療することも多く、特に甲状腺ホルモン補充療法中の方は、原則として生涯服用が必要です。

 

 甲状腺の病気で内服が必要なのは、多くの場合、甲状腺ホルモン値の異常を正常化させたいという場合です。したがって、血液検査で甲状腺ホルモン値を確認しながら内服量を調節します。また、副作用に注意しなければならない場合は、副作用が出ていないかのチェックも同時に行います。定期的な血液検査が必須なのです。

 

 内服薬による治療は年単位で行うことになるので、その間に薬の飲み忘れが起こることは十分に考えられます。甲状腺の薬は効果が長く持続するものが多いので、多少飲み忘れたところでそれほど大きな影響はありません(でもしっかり飲んでください)。私も毎日忘れずに飲む自信はありません。薬の残量に余裕をもって受診される方もいると思いますので、少しずつ薬が余ってくることはよくあることだと思います。

 

 薬が余っていたので、指示されたタイミングよりも遅く来院される方がけっこうたくさんいます。「3ヵ月後に受診するように言われたのに、薬が1ヵ月分余っていたので、4ヵ月後の受診になった」というようなことです。基本的には受診時期は守っていただきたいのですが、許容できるケースと絶対に守ってもらわなくては困るケースをご紹介いたします。

 

 まずは薬が余っているという甲状腺ホルモン補充療法中の患者さんの場合です。長期間(1年以上くらいか)内服量が変わらずに経過している場合、薬が余っていれば数ヵ月くらい先になってもいいでしょう。1~2ヵ月ごとくらいで内服量の調節を行っている最中であるという方の場合、指示された通りに受診するようにしてください。この状態ならそもそも薬が余ることはほぼないと思います。余っていたら飲み忘れが多いということですので、しっかり服用してください。

 

 次にバセドウ病治療中の患者さんの場合です。チアマゾールやプロピルチオウラシルで治療中の方は、少量(1日1錠くらい)で長期間安定していても3ヵ月に一度(これは私の方針です)は受診していただき、甲状腺ホルモン値や副作用のチェックを行っています。薬が余っていたとしても受診を先延ばしにせず、3ヵ月後には受診してください。治療を開始されたばかりの患者さんは、副作用の確認のために2週間に1回の通院が必須ですので、先延ばしは厳禁です。この時期に薬が余っているというのは、飲み忘れが多いということですので、忘れずに服用してください。

 

 ヨウ化カリウム単独で治療をされている患者さんの場合、副作用を考えなくていいのでその点は安心です。しかし「エスケープ」といって薬が効かなくなってしまう状態になることがあるので、指示されたタイミングでの受診が望ましいと考えます。

 

 先日受診されたバセドウ病の患者さんです。他院でチアマゾール少量による治療をされていましたが、半年以上検査せずに余った薬を飲み続けていたそうです。当院での検査では、甲状腺中毒症の状態でしたので、すぐに内服量を増やしました。ご本人も何となく自覚症状があったようですが、検査を受けていませんでした。

 

 長期間にわたる通院は大変ですが、このような状態にはならないようにお気をつけください。

 何日か前、「女子児童が切りつけられ、12針縫うけが」をしたというニュースが出ていました。「12針縫った」と聞いて、一般の方はどんな印象を持たれたでしょうか。

 

 外科医の立場からすると、この「何針縫った」というのはあまり意味がありません。単純に縫った数が多ければ大きな傷だと思うかもしれませんが、傷を縫う間隔というのは傷の部位や状態によって異なります。縫う外科医によっても様々です。実際には不可能ですが、同じ患者さんの傷を2人の外科医がそれぞれ縫合したら、縫った数は一致しないと思います。

 

 お腹の傷の場合、ある程度の緊張がかかるので、やや太めの糸を使わないと傷を寄せられません。間隔もやや広めに縫うことが多いと思います。顔などの目立つ部位の場合、太い糸で縫ってしまっては跡が目立ちますので、細い針と糸を使って細かく縫います。このような場合も医師によっては縫う数は異なります。特に形成外科の先生は細かく丁寧に傷を合わせて縫ってくれます。あまり縫合の経験がない医師だと...

 

 このように「何針縫ったのか」と聞いても、傷の大きさは分かりません。傷の状態を知りたければ、「何センチ縫ったのか」と聞いたほうが分かると思います。

 

 甲状腺手術の傷も同様です。何針縫うのかは術者によって異なります。最近では表面の皮膚は縫わずに、皮膚のすぐ下の組織を溶ける糸で縫って、皮膚はテープやボンドで固定することも行われています。このようにすると「縫ったのは0針」で、抜糸をする必要がありません。

 

 私は消化器外科や甲状腺外科を経験し、手術を行うたびに手術記録を残してきたのですが、そこに「何針縫った」と記録したことはありません。もちろんできるだけきれいに縫うことは重要なのですが、縫った数はそれほど重要ではないのです(整容性を最も重要視する形成外科の先生は違うのかもしれません)。術後に「何針縫ったのですか?」と聞かれることが何度かありましたが、何針縫ったかは覚えていないので、その場で数えて教えていたものです。

 

 一方で救急外来などでけがをしてできた傷を縫った際には、何針縫ったかは記録していました。多くは自分自身で抜糸ができないため、確実に抜糸をしてもらえるように記録に残していました。

 厚生局の「新規個別指導」を受けてきました。これは保険診療に関する、決して避けては通れない「指導」です。

 

 保険診療というのはどういうものか。患者さんは医療機関で診療を受けると、かかった医療費の3割から1割を窓口で支払います。残りの7割から9割は、医療機関が保険診療の審査機関に請求し、後日医療機関に振り込まれるという仕組みになっています。この際、医療機関側は保険診療のルールに従って診療を行い、医療費の請求を行わなければなりません。

 

 この指導では、審査機関への請求が適切かどうか、記載すべき内容が適切にカルテに残されているかをチェックされます。例えば、行ってもいない医療行為を行ったことにして医療費を請求すると、これは明らかに不正行為となります。また行った医療行為について、カルテに記載しているかどうかが確認されます。カルテにその医療行為がなされたという記載がなければ、本当に行われたのかが分からないので、これも不適切とされます。

 

 指導の1か月前に通知が届き、指導日の1週間前に準備すべき書類の一覧が届きます。指定された10名分の患者さんのカルテや、ある期間の診療費の一覧などを準備する必要があります。それらを指導員が見て、医療費の請求の内訳(レセプトといいます)と照合し、不備があれば指摘、改善するように指導されます。不正請求が明らかな場合、診療費の返還を求められることもあります。

 

 指導を受けたといっても、不正を行っている可能性があるので目をつけられたというわけではなく、新規に開院した医療機関が必ず受けなければならないものです。通常は開院してから半年から1年後に行われるらしいのですが、東京は医療機関が多いこと、また新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中は中止していた(らしい)影響で、当院は開院3年後に指導の通知が来ました。指導当日の午後を急遽休診にして、新宿にある関東信越厚生局に行ってきました。

 

 会場は広い会議室のようなところで、いくつもテーブルが置いてあり仕切りなどはなく、同時に複数の指導が行われていました。指導担当の医師2名と事務員さんと私の4名でテーブルを囲み、指導が行われました。最初に自己紹介があり、事務員さんから今回の指導の主旨について説明があります。法律に基づく指導で必ず指導を受けなければならないこと、不適切な請求が発覚した場合は診療費を返還していただきます、と言われてから指導が開始されます。

 

 2人の指導医がそれぞれ5人分のカルテを見ながら、交互に質問されます。「この医療行為に対するカルテ記載はどこにありますか?」など、10人分が終わるまでずっと続きます。幸い特に大きな問題はなかったようです。所要時間も1時間の予定が40分くらいで終わったので、優秀なほうでしょうか。

 

 1~2か月くらいで指導結果が郵送されるとのことでしたが、届いたのは3か月後でした。結果は3段階あり、「概ね妥当」「経過観察」「再指導」なのだそうです。おもしろいことに「妥当」という審査結果はないのです。何かしらの不備を指摘されるということのようです。「再指導」になると、もっと多くのカルテの提出を求められるらしく、かなり大変なようです。さらに「要監査」もあるらしいのですが、これは相当にやばいそうです。

 

 そして当院の結果は「概ね妥当」で「指摘事項:なし」でした。何とか乗り切ってほっとしました。

 甲状腺が首のどこにあるのか、あまりよく知らない方が多いようです。当ブログでもあまり詳しくは書いていなかったようですので、今回記事にしてみました。基本的には正常甲状腺の位置についての記載です。病気によって大きく腫れてしまうと当てはまらない場合がありますのでご注意ください。

 

 まず高さについてです。軽く上を向いた時、首の中央付近で最も突出した部分があります。これが甲状軟骨(いわゆる「のどぼとけ)です)です。甲状腺はそれよりも下にあります。鎖骨の位置を基準にすると、鎖骨のすぐ上くらいに甲状腺が存在します。

 

 甲状腺が位置する高さには個人差があります。性別や年齢による差が大きいようです。一般的には女性よりも男性のほうが甲状腺は低い位置にあります。首がやや長めの女性(特に若い方)では、鎖骨の位置よりもだいぶ上方に存在することがあります。また、男性(特に高齢者)はかなり低い位置に存在することが多く、鎖骨に隠れてしまうこともあります。いずれにしても甲状軟骨より下に位置しますので、あごのすぐ下に甲状腺が位置するということはありません。

 

 甲状腺は左右どれくらいの大きさかというと、だいたい4~5cmくらいの幅です。親指と人差し指を4~5cmの幅に開いて、鎖骨のすぐ上に当ててみてください。甲状腺は二本の指の間に納まります。その外側には甲状腺は存在しません。当てた指の外側に動脈の拍動を感じると思います。それが総頸動脈です。脳に血液を送るための動脈で左右に一本ずつあります。正常甲状腺は原則として総頸動脈の内側にあります。

 

 下顎部や首の側面の筋肉を触って、「ここが腫れているので甲状腺の病気では?」と多くの患者さんが来院されます。しかしそれらの位置には甲状腺は存在しないのです。ぜひ甲状腺の正確な位置を覚えておいてください。