慢性甲状腺炎(橋本病)の患者さんで、甲状腺ホルモン剤を内服中の方が一生懸命にヨウ素制限を行っている場合があります。

 

 ヨウ素制限は少しでも機能低下にならないように行うものです。特に潜在性機能低下症(甲状腺ホルモン値は正常だがTSH値のみが高値)の方には有効だと思います。しかし、すでに甲状腺ホルモン剤を内服している方には、ヨウ素制限は不要です。ホルモン剤補充によって甲状腺機能を正常化させているのですから、ヨウ素なんて関係ありません。

 

 橋本病と診断されると、ヨウ素制限を行うように言われることが多いのですが、ホルモン剤を内服するようになったらヨウ素制限は不要ですと言われることはまずないでしょう。

 

 甲状腺ホルモン剤を内服して甲状腺機能が安定している方は、ヨウ素制限は無意味ですので、すぐにやめて好きなものを食べましょう。

 慢性甲状腺炎(橋本病)と診断された方は、ヨウ素(ヨード)制限が必要だと言われることが多いと思います。ヨウ素を多く含む食品をたくさん食べてしまうと、甲状腺機能低下症になりやすいからです。

 

 しかし、「ヨウ素を多く含む食品をあまり食べないように」と言ってしまうと、徹底的に避けてしまう方が多いようです。

 

 お味噌汁のわかめをすべて残す、お弁当に入っているひじきの煮物を残す、海藻サラダの海藻だけを残す、ちらしずしの海苔をよけて食べる、昆布だしを一切使わない。

 

 話を聞いてみると、こういう方は結構いらっしゃいます。

 

 橋本病に限らず、葉切除(甲状腺の半分を切除する)後にもヨウ素制限が必要と言われる場合があります。甲状腺の体積が小さくなり、予備力が少なくなるためです。

 

 私も一応ヨウ素制限については説明していますが、実際にはあまり注意しなくてよいとお話ししています。普通に食べて問題ありません。

 

 ただし、健康のためといって大量に摂取するのはやめましょう。昆布を水に浸してその水を毎日飲む、海藻サラダを毎食たくさん食べるなど、健康に良いとはとても思えませんので、やめたほうがいいでしょう。ポビドンヨード(茶色)のうがい薬もやめましょう。

 今はインターネットで様々な情報が入ってくる時代です。いい加減な情報もありますが、役に立つ情報もたくさんあります。

 

「バセドウ病と診断されて治療開始。バセドウ病の治療についていろいろ調べてみると、自分の受けている治療は何かが違う。本当にこの治療法でいいのか。」

 

 このように、治療法について疑問を感じて、私のクリニックを受診される患者さんが結構いらっしゃいます。

 

・抗甲状腺薬の副作用について説明を受けずに処方された。

 

・治療開始から間もないのに、1~2ヵ月後の受診とされた。

 

・薬が効きすぎて甲状腺機能低下症になっているのに、内服量が減らされない。

 

・理由もなく、最初からプロピルチオウラシル(チウラジール・プロパジール)が処方された。

 

など、いろいろあるようです。

 

 副作用の説明を受けないというのは恐ろしい話です。しかし、調剤薬局では説明してくれるはずですので、そこが救いでしょう。

 

 少しでも疑問を感じたら、他の医師の意見を聞いてみるのがいいでしょう。

 バセドウ病として長年治療されていたが実は機能性結節であった、という患者さんを最近続けて2名経験しました(いずれも外勤先での経験です)。

 

 甲状腺内に結節(しこり)ができて、そこから甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気があります。これを機能性結節といいます。

 

 甲状腺中毒症を呈する患者さんで甲状腺内に結節がある場合、バセドウ病と機能性結節の鑑別が必要です。TRAbが高ければバセドウ病の可能性が高く、TRAbが低ければ機能性結節の可能性を考えなければなりません。放射性ヨウ素による検査を行えば両者の鑑別が可能ですが、最近あまり行われなくなったので見逃されているケースも多いかもしれません。機能性結節の場合、抗甲状腺薬では治りません。

 

 長期間バセドウ病で治療中の方、最初に必ず超音波検査が行われているはずですので、甲状腺に結節がないかどうか思い出してください。

 

 残念ながら当院には放射性ヨウ素を扱えませんので、必要な患者さんは他院を紹介しています。

 今までに何度も「試験」というものを受けてきました。学生時代には頻繁にありましたよね。

 

 医師の世界では、「専門医」の資格を取得するための試験があります。

 

 先日、私は「日本超音波医学会超音波専門医」の認定試験を受けてきました。超音波医学の中でも「甲状腺」という分野の専門医です。認定施設での研修、超音波検査の実績などの書類審査、その後に筆記試験があります。先日受けたのは筆記試験です。

 

 筆記試験はマークシート方式ですが、これがかなり難しい。基礎的な超音波工学に関する内容が出題されるのです。つまり物理学の世界です。学生時代に習った部分もありますが、まったく覚えていませんので、一から勉強しなおしでした。クリニック開院の時期にも重なりましたので、けっこう大変でした。また、年々記憶力が衰えてきているのがはっきりと分かります。何度勉強しても覚えられないのですよ。こういう試験は若いうちにやっておかないといけませんね。

 

 もちろん甲状腺に関する問題もありますが、こちらも難しかった。甲状腺に関しては、ほぼ勉強しませんでした。今までの知識で大丈夫だと思ったからです。ところが重箱の隅をつつくような問題や、「超音波医学の専門医にこの知識は必要なのか」というような問題が多数出題されていました。まあ、そんなに問題にするネタがないのでしょう。出題を担当した先生も大変だったと思います。

 

 かなり苦戦した試験でしたが、結果はもちろん合格です(合格していなかったら記事にしませんから)。何とか合格しましたが、ぎりぎりの点数だったのではないかと思います。

 

 10月1日から認定されるとのことで、それに合わせてクリニックのWebページも書き換えようと思います。