「最近首が痛いと思っていたんですよ」

 

 甲状腺がんが発見された患者さんがよく言われることです。

 

 一部の例外を除いて、甲状腺がんに痛みはありません。甲状腺に限らず、基本的にがん自体が痛むことはありません。痛みが出るのなら、早期発見に苦労しません。

 

「首が痛い」

「肩が張る」

「首に違和感がある」

「物が飲み込みにくい」

 

 このような症状を訴える甲状腺がん患者さんが多いです。よほどの進行がんなら症状も出る場合がありますが、通常このような症状が出現することはありません。健診で見つかったような小さながんなら、症状との関連はまずないでしょう。

 

 がんを指摘されて初めてこのような症状を訴える患者さんも多くいらっしゃいます。これは仕方がないと思います。だって突然首にがんがあるなんて言われたら、気になりだして症状の一つも出ますよね。

 

 首の症状はあまり気にしないようにしましょう。ただし、しこりが急速に大きくなる、声がかすれるようになったなどの症状が出現したら、早めに担当医に相談してください。

 健康診断などで甲状腺腫大を指摘され、精密検査の結果、甲状腺癌と判明。これ、いつからあったのだろうと思われる患者さんが多いのではないでしょうか。「この癌はいつできたのでしょうか?」という質問を時々受けます。

 

 以前、超音波検査を受けたことがある方なら、その時異常がないのであれば、前回の検査以降にできたものだと言えますが、多くの方は検査歴がありません。したがって、いつできたかは誰にも分かりません。

 

 甲状腺結節(しこり)の増大速度には個人差があります。結節の性質によっても違いますし、他にも様々な要因が関係しているようです。

 

 良性悪性にかかわらず、結節を経過観察していると比較的早く増大するもの、何年もかけてゆっくり増大するもの、大きさがほとんど変化しないもの、縮小してしまうもの、いろいろなパターンがあることが分かります。

 

 経過観察していても、ほとんど大きさに変化がないという結節がかなり多いようです。もともと甲状腺には結節はありません。小さいものができて、次第に大きくなって発見されるはずです。ところが、発見されて経過観察していてもまったく大きくならない。ということは、成長が止まったとしか言いようがありません。

 

 これは悪性腫瘍、特に微小乳頭癌にも当てはまります。微小乳頭癌も多くの場合は増大しないことが分かっています。

 

 残念ながら癌がいつできたのかは分かりませんが、未分化癌などの特殊な例を除いて、発見前の数ヵ月で急に増大してきたということはありません。多くは年単位で増大するものですので、「何年か前にはあったのだと思いますが、正確には分かりません」という答えになるでしょう。

 甲状腺疾患専門クリニックを開院し、3ヵ月が経過しました。

 

 最近、バセドウ病の患者さんが増えている気がします。本格的に暑くなってきたので症状が強く出てしまい、発見されるきっかけになっているのでしょうか。

 

 一方で、他院で甲状腺がんの手術を受け、その後の経過に不安を感じて相談に来た患者さんも数名いらっしゃいます。

 

 私はもともと外科医ですので、術後の管理については詳しいつもりです。相談だけでも結構ですので、遠慮なさらずにご来院ください(簡単な検査だけは行わせていただきたいと思います)。「紹介状を持ってこないと診察できない」という施設が多いのではないかと思いますが、私はそんなこと言いません。紹介状はいりませんので、これまでの経過をお話しください。検査結果があれば、ご持参ください。

 先日バセドウ病で治療中の患者さんが私のクリニックを受診してくれました。かかりつけ医で治療が開始され、もう5年以上メルカゾールを内服しているとのことでした。現在はメルカゾール1錠を週に2回内服しており、かかりつけ医からは「内服はやめてはいけない」と言われているそうです。ここ数年は甲状腺機能は安定しているようです。

 

 診察すると、甲状腺腫大はなく、甲状腺機能も正常、TSH受容体抗体(TRAb)も陰性でした。

 

 治療がよく効いたのか、最初からバセドウ病ではなかったのかは分かりませんが、そろそろ薬を中止することを提案し、一旦休薬してみました。

 

 数ヵ月後、その患者さんが再び受診してくれましたが、メルカゾールをやめてからすごく体調がよくなったとのことで、ものすごく感謝されました。甲状腺機能も正常のままでした。

 

 週2回のメルカゾール内服をやめたくらいで体調が良くなるのかどうかは分かりませんが、漫然と内服を継続されているケースが時々ありますので、そのような方は一度専門医の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。

 リクエストがあったので、転院について考えてみます。

 

 甲状腺の病気になると、多くの場合、長期にわたる通院が必要になります。慢性甲状腺炎(橋本病)で甲状腺ホルモン剤の内服が開始されれば、生涯内服が必要ということも少なくありません。バセドウ病の治療期間も年単位です。悪性腫瘍の場合、5年で一区切りとしている臓器も多いかと思いますが、甲状腺がんは5年で経過観察終了にはできません。腫瘍の増殖速度がゆっくりなので、生命に危険が及ぶことは少ないのですが、何年たっても再発してしまう可能性があるのです。また、甲状腺全摘されていれば、甲状腺ホルモン剤の内服が生涯必要となります。

 

 長期間通院するわけですから、自分に合った相性の良い担当医を見つけたいものです。しかし自分の担当となった医師に不満があり、転院したくなることもあるでしょう。転院したくなる理由は様々です。説明が一貫していない、あいまい、ほとんど説明がない、態度が威圧的、治療方針に疑問を感じる、担当医と何となく合わないなど、いろいろあるでしょう。

 

 転居などで通院困難になったら、転院をお願いするのは難しいことではないでしょう。また、受診からあまり時間が経過していなくて、他院での意見を聞きたい、より専門性の高い施設に転院したいというのも、それほどハードルは高くないと思います。

 

 言い出しにくいのは、ある程度長期間診てもらっていて、他施設に転院したいという場合でしょうか。転院の切り出し方ですが、担当医に自分の考えをはっきり伝えるべきだと思います。他施設に通院したいことを言うときには、ご家族や友人に勧められたことにしてもいいでしょう。それで怒り出したり、紹介状は書かないとか言われたりしたら、それこそ早く転院したほうがいいです。とはいってもそれがなかなかできないのですよね。一人で切り出すのが難しければ、ご家族に同伴してもらうのもいいでしょう。同じ診療科に複数の医師がいれば、他の医師に相談するという方法もあります。医師を変えることで解決できれば、そのまま通院すればいいでしょう。施設を変えたければ、別の医師に紹介状作成を依頼するのもいいかもしれません。

 

 いろいろな医師がいるとは思いますが、私なら転院理由をはっきり伝えてもらいたいです。人間ですから、誰だって相性の良し悪しは存在します。もちろん私の診察は受けたくないという患者さんもいらっしゃいます。これは人間なのだから仕方ありません。お互いのためにも、転院をためらう必要はないと思います。

 

 転院したいと言われた医師は、なぜそうなったのかを考えるいい機会ですね。