転移性甲状腺腫瘍はまれな病気ですから、多数例での研究報告はほとんどありません。したがって以下の記述は、いくつかの文献と私の経験に基づくものですので、ご了承ください。
甲状腺への転移の仕方ですが、最も多い腎がんは血行性転移が主な転移経路、乳がんや肺がんは血行性もリンパ行性もあるようです。
転移経路が異なると、何か違いがあるのでしょうか。実は転移経路によって、超音波検査の所見に違いが出てきます。
一般的に甲状腺は血流が豊富なので、がん細胞が定着しにくく、転移を起こしにくいと言われているようです。しかし甲状腺に腺腫様結節などの腫瘤があると、そこで血流が滞るので、がん細胞が定着、転移が起こりやすいのだと思います。したがって、血行性転移では腫瘤を形成するタイプの転移となります。超音波検査でも腫瘤の形成が確認できます。
一方、リンパ行性転移では、甲状腺内に張り巡らされたリンパ管の中にがん細胞が入り込むので、腫瘤をほとんど形成しないタイプの転移となります。比較的近隣の臓器、乳腺や肺からの転移が多く、リンパ管に沿う転移ですから、周辺のリンパ節も腫大します。超音波検査では腫瘤ははっきりせず、慢性甲状腺炎(橋本病)と見間違うような所見となることもあります。普通の甲状腺腫大とは見え方がやや異なること、リンパ節腫大もはっきりしていることが多いのが、良性疾患による甲状腺腫大と区別する点だと思いますが、実際には診断は結構難しいと思います。