バセドウ病と診断されると、ほとんどの患者さんは飲み薬で治療されることになります。抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)が処方されるのですが、抗甲状腺薬には重大な副作用がありますので、初めての内服の際には必ず副作用のお話をしています。

 

 抗甲状腺薬の重要な副作用に「無顆粒球症」があります。白血球数が極度に低下してしまう副作用です。内服開始から数か月間が最も注意が必要になります。この副作用の初期症状が「高熱」や「のどの痛み」などの風邪様症状であることが多いので、そのような症状が出現した場合は検査を受けるように伝えています。

 

 しかし今の時期、発熱となると...

 

 やはり心配なのは新型コロナウイルス感染症ですよね。抗甲状腺薬を内服し始めた時の発熱は、無顆粒球症によるものなのか、新型コロナウイルス感染症によるものなのか、あるいはまったく別の原因なのかの区別ができません。白血球数を調べれば無顆粒球症かどうかは分かることですが、今の時期に高熱の患者さんを簡単に受診させるわけにもいきません。幸い無顆粒球症は頻繁に起こるものではありませんので、今のところ困ったケースには遭遇していませんが、もし疑われた際には、他の患者さんと接触することがないような時間に来院していただくしかないかなと思っています。

 

 そんな時に便利なのがヨウ化カリウムという薬です。甲状腺ホルモンを急速に抑えてくれて、これといった副作用もない、とても便利な薬です。多くの場合、いずれ効果がなくなってしまうのですが、(特に軽症の場合)しばらくはヨウ化カリウムだけで治療するという方法も行っています。

 新型コロナウイルスの影響で、消毒液が手に入らなくなっています。当院でもなかなか入手困難なので、ネット通販での販売状況を頻繁にチェックするようにしていますが、常に在庫なしの状態です。

 

 ネット通販サイトを見ていた時、気づいたことがありました。うがい薬も品薄となっているということです。感染予防にうがいは意味がないと考えているので、うがい薬については全く気にしていませんでした。在庫があったとしても、高値での転売のようです。

 

 イソジン®などの茶色いうがい薬も完売のようです。飲用のアルコールが消毒用に転用されている世の中ですが、まさかうがい薬を消毒用に転用しているはずはない(茶色いですから)と思いますので、みんなうがいを一生懸命しているのでしょう。

 

 ポビドンヨードを含んでいる茶色いうがい薬には、ヨウ素が多く含まれています。これを毎日使用していると、ヨウ素過剰摂取になります。甲状腺機能低下症になる可能性がありますので、慢性甲状腺炎(橋本病)の方は、このうがい薬を使用することは避けてください(慢性甲状腺炎(橋本病)でなくても、機能低下症になる場合があります)。

 

 

 (甲状腺の話ではありませんが、)私はうがいで風邪などを予防できるとは思っていませんので、うがいを積極的にすることは勧めません。

 

 ポビドンヨードのような消毒薬によるうがいは、のどの粘膜を障害してしまいます。また、のどの常在菌を死滅させ、病原体が侵入しやすい状態になる可能性があります。例えばインフルエンザウイルスは、細胞に付着してから数十分以内に細胞内に侵入すると言われているようです。うがいでウイルス感染を防ぐのなら、最低でも数十分に1回はうがいをする必要があるということになります。うがいの水が届く領域よりもさらに奥の粘膜に付着したウイルスは排除できません。

 

 それでもどうしてもうがいをしたいのなら、水やお湯など、消毒薬の成分を含まない液体でのうがいを勧めます。のどに潤いを与えるという意味では、多少は効果があるかもしれません。

 新型コロナウイルスが流行し、外出自粛している世の中ですが、医療機関にはどうしても行かなければならない場合があります。

 

 新型コロナウイルスが心配で、医療機関を受診できないと言われる患者さんが増えており、電話で相談を受けるケースも多くなっています。甲状腺疾患で通院中の患者さんはどうしたらよいか、思いつくものを挙げてみます。

 

 バセドウ病で通院中の方は、抗甲状腺薬の副作用のチェックが必要ですので、できれば受診していただき、血液検査を受けた方がいいでしょう。ただし、治療が長期間に及んでおり、何年も内服量に変化がないような安定した状態なら、1~2ヵ月受診を遅らせても問題ないと思います。

 

 慢性甲状腺炎(橋本病)で通院中の方ですが、内服治療を行っていない場合、特に心配な症状がなければ、今の時期にあえて診察を受ける必要はないでしょう。内服治療中の方は、薬の継続が必要ですので、医療機関で処方してもらう必要があります。

 

 甲状腺の結節(しこり)で通院中の方は、しこりが急に大きくなった、あるいは強い痛みがあるなどの場合を除き、受診を遅らせて問題ありません。

 

 微小乳頭癌で経過観察中の方ですが、ほとんど大きくならない、大きくなるにしても非常にゆっくりであるという乳頭癌の性質から行われている経過観察ですので、1~2ヵ月受診を遅らせても問題ないでしょう。ただし、悪性であるということで心配な方も多いでしょうから、不安が強い方は受診してください。

 

 甲状腺手術後で通院中の方は、術後どれくらい経過しているのかにもよりますが、特に心配な症状がなければ受診を数ヵ月遅らせても問題ないと思います。内服治療中の方は、薬の継続が必要ですので、医療機関で処方してもらう必要があります。

 

 今回の新型コロナウイルス拡大により、非常時の特例として、電話などによる診察、薬の処方が認められています。長期間安定している慢性甲状腺炎(橋本病)・バセドウ病の内服治療中の方、甲状腺切除後の甲状腺ホルモン補充療法中の方が対象になるでしょう。通院中の医療機関が対応してくれるかどうか、問い合わせてみてください。

 新型コロナウイルス感染症が流行しており、東京都にも緊急事態宣言が出される事態となりました。

 

 福島県郡山市の病院で定期的に甲状腺外来をやっていますが、感染症の流行地である東京在住の私は福島に行ってはならないわけで、今月はお休みさせていただくことになりました。患者さんや病院スタッフにはご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

 

 福島といえば、当クリニックも福島県が行っている「県民健康調査」に協力しています。

 

 原発事故時に18歳以下だった方を対象に、「甲状腺検査」、つまり甲状腺の超音波検査が行われています。避難や就職などで転居されている方もたくさんいらっしゃいますので、福島県外在住の方が転居先で検査を受けられるように、全国の医療機関が検査を実施できる体制を整えています。

 

 私は学生時代、福島に大変お世話になりましたので、クリニックを開院したらぜひとも協力しようと思っていました。現在検査機関に登録され、検査が受けられますので、検査対象の方はご利用いただければ幸いです。

 亜急性甲状腺炎や嚢胞以外にも甲状腺が痛む病気はありますが、以下はかなりまれな病気になります。

 

・急性化膿性甲状腺炎

 甲状腺の細菌感染による炎症です。(専門家の間で)有名なのは、下咽頭梨状窩瘻(かいんとうりじょうかろう)によるものです。先天的に下咽頭(のどの奥の方)と甲状腺とのつながりがある方がいて、下咽頭から細菌が侵入して甲状腺に感染が起こります。

 

・橋本病の急性増悪

 慢性甲状腺炎(橋本病)の患者さんに起こるまれな病気です。甲状腺が腫大し、甲状腺の痛みや発熱を伴います。

 

・未分化癌

 とても進行の早い悪性腫瘍で、痛みを伴う場合があります。

 

・髄様癌

 髄様癌も痛みが出ることがあるようです。私も一人だけ、触診して痛いと言われた経験があります。

 

 甲状腺に痛みを伴う病気はほとんどが良性疾患ですので、過剰に心配する必要はありませんが、ごくまれには悪い病気が隠れている場合がありますので、しっかり診てもらいましょう。