1cm以下の甲状腺癌を微小癌と呼んでいます。ほとんどが乳頭癌ですので、「微小癌」と言ったら「微小乳頭癌」のことだと思ってください。

 

 甲状腺乳頭癌の治療法は、原則として手術しかありません。しかし、微小癌は非常におとなしい腫瘍であり、経過を見ていてもほとんどの微小癌が大きくならないため、直ちに手術するのではなく、場合によっては経過観察でよいということになっています。

 

参考記事:経過観察可能な微小癌とは

 

 

 

 一方で、経過観察がお勧めできない微小癌があります。どのような場合に手術が勧められるのでしょうか。

 

 リンパ節転移が明らかである、(めったにないことですが)遠隔転移があるなどの場合は、手術が推奨されます。また、明らかな周囲への浸潤を認めるときにも手術が推奨されます。例えば、声がかすれてしまい、反回神経に浸潤している可能性が高いと思われる場合です。

 

 特に症状がなくても、腫瘍ができた位置によって、手術が勧められる場合があります。

 

 腫瘍が背面に位置し、反回神経と腫瘍が近接していることが疑われる場合です。腫瘍の増大により、反回神経に浸潤してしまう可能性があるためです(図)。

 

参考記事:微小乳頭癌の手術適応と反回神経との関係

 

 

 

 気管に接する場合も手術が考慮されます。

 

参考記事:超音波検査による癌の局在診断の重要性

 

 

 

 さて、他臓器に微小癌が接していればすべて手術した方がよいのかというと、必ずしもそうではありません。

 

 前頸筋という、甲状腺の前面を走っている筋肉があります。甲状腺の前面近くに腫瘍があると、筋肉に浸潤する場合があります(図:これ本当は1cmを超えているので微小癌ではありませんが、いい例がなかったので...)。この場合、必ずしも手術しなければならないということにはなりません。大きくなったとしても、筋肉を一緒に切除すればいいからです(浸潤がなくても一緒に切除する施設が多いようです)。前頸筋は2層に分かれていて、甲状腺に近い側の筋肉を一緒に切除することになります。

 

 甲状腺の外側には総頸動脈(脳に血液を送る動脈)が走っています。その動脈に腫瘍が近いと、手術したほうがよいと言われることがあります。しかし、総頸動脈は厚い組織に覆われていますので、小さな癌が近くにあっても、浸潤することはまずありません(図)。したがって、手術を積極的に勧める理由にはなりません。

 

 微小癌で手術を勧められた方、あるいは経過観察でよいとされた方、疑問に思うことがあれば、その根拠をしっかり聞いてみてください。

 甲状腺中毒症を認め、TRAb値が高いため、バセドウ病と診断された。抗甲状腺薬が処方され、甲状腺ホルモン値は速やかに正常化、内服量が減らされている。あるいは低下気味になったため、内服を中止された。

 

 このような患者さんが他院から紹介されてくる、あるいは患者さん自身が専門医の診察を希望されて受診されることがよくあります。紹介状の内容や、患者さんから聞いたこれまでの経緯などから、ほとんどの患者さんは正しくバセドウ病と診断され、治療されていたのだということが分かります。しかし一部の患者さんで、「これ本当にバセドウ病?」と疑問に思ってしまうことがあります。

 

 TRAb(抗TSH受容体抗体)測定は、バセドウ病の診断に必須の検査です。バセドウ病と同様、甲状腺ホルモン値が高くなる病気である無痛性甲状腺炎と区別する必要があるからです。無痛性甲状腺炎ではTRAbが高くならないことから、バセドウ病と区別することができます。

 

 TRAbが測定されていないのに甲状腺中毒症というだけで抗甲状腺薬が処方されてしまう、残念ながらこういう患者さんもときどき受診されます。このような場合、当院で初めてTRAbを測定することになりますが、TRAb高値ならバセドウ病との診断でよく、抗甲状腺薬を継続できます。しかしTRAb低値の場合、治療によって陰性化したのか、もともと高くなかったのかが判断できません。したがって、治療を継続していいのかどうか悩んでしまいます。

 

 診断当初からTRAbが測定され、高値であればバセドウ病と判断される、基本的には問題ないのですが、まれに無痛性甲状腺炎なのにTRAbが高くなることがあります。この場合、高いといっても、ごくわずかに高いだけです。TRAb値が基準値を超えていればすべてバセドウ病かというと、そうとは限らないのです。

 

 TRAbが軽度高値の場合、自覚症状や他の検査値を考慮すると、何となくバセドウ病らしくないということがあります。この場合、TRAbではバセドウ病と無痛性甲状腺炎の区別はできないので、超音波での甲状腺内の血流を参考にしたり、シンチの検査を行ったり、またこれといった副作用もなく使いやすい無機ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)で様子をみたりしています。バセドウ病と確診できなければ、抗甲状腺薬を使用してはいけません。

 

 無痛性甲状腺炎をバセドウ病と間違えてしまうと、不要な検査や内服治療が延々と続くことになってしまいます。(どんな病気でもそうですが)最初にしっかりと診断することが重要なのです。

 病院で血液検査を行うと、検査結果報告書をもらうことが多いと思います。検査結果が分かりやすいように、基準範囲から外れている項目に印がついていたり、色で表示されたりしていることが多いでしょう。何も印がないと、基準範囲内とのことで、異常なしとなります。

 

 そう多いことではありませんが、基準範囲に入っているからといって、「病気ではない」とならないことがあります。特に血液中のカルシウム濃度は、基準範囲であっても注意が必要です。

 

 血中カルシウム値が上昇する病気の代表は、原発性副甲状腺機能亢進症です。副甲状腺ホルモンが過剰に産生されて、血中カルシウム濃度が上昇、リンが低下する病気です。軽症の副甲状腺機能亢進症では、カルシウム値が基準値上限を超えずに、基準範囲内である場合があります。たいていは基準値の上限に近い値なのですが、基準範囲に入っているということで報告書には何の印もなく、見逃されやすいようです。もちろん副甲状腺ホルモン値を測定し、高値を証明できれば副甲状腺の病気を疑うことができますが、カルシウム値が基準範囲だと副甲状腺ホルモンの測定までは行われないのです。

 

 血中カルシウム値は、値が高ければ高いほど症状が出現しやすいので、基準範囲内で上限に近いくらいの値では、ほとんど無症状です。そのような場合は、特に治療せずに経過観察となることが多いと思います。

 

 カルシウム値が正常でも副甲状腺機能亢進症を見つける、それが専門医の腕の見せ所です。

 昨日、クリニックの内装工事を行いました。

 

 明るい待合室にしようと思い、窓のあるスペースを待合室にしたのですが、午後になると強烈な日差しで温度が上昇。ある程度予想はしており、遮熱ロールスクリーンを付けていたのですが、予想をはるかに超える日差しでした。昨年は待合スペースのソファーをずらして対応していましたが、毎年そうするわけにもいかないので、窓にボードを取り付けました。夏の暑さ対策になりますし、冬の冷気も防いでくれるものと思います。

 

 そして天井にスピーカーを取り付けました。本当は開院の時に付けるつもりだったのですが、オーダー漏れで付けることができていませんでした。だいたいどこのクリニックでも音楽流れていますよね。ようやく当院も流すことができそうです。

 

 そしてまもなく新しい超音波装置を導入する予定です。今の装置も決して悪くはないのですが、さらに高性能の装置を追加導入し、超音波診断に磨きをかけたいと思っております。

 最近質問を受けることが多いのが、

「甲状腺の病気の人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりやすいですか?」

「重症化しやすいですか?」

です。

 

 新しいウイルスに関することですから、この質問にはまだ誰も答えられないはずです。しかし多くの医師は、「多分かかりやすい(重症化しやすい)ということはないでしょう」と答えると思います。私もそのように答えています。

 

 このことに関連して、イギリス甲状腺学会から「甲状腺疾患とCOVID-19」に関する声明が出されていますので、ごく簡単にまとめてみました。

 

「COVID-19は新規の感染症なので、甲状腺の病気を持つ患者にどのように影響するかはまだ分かっていない。しかし、甲状腺疾患によってウイルスに感染しやすくなるということは一般的には言われていないし、ウイルス感染の重症度との関連についても言われていない。」

 

「甲状腺ホルモン補充療法(レボチロキシン)、抑制療法(チアマゾール、プロピルチオウラシル)中であっても、その薬剤が免疫系を変化させたり弱めたりすることはない。」

 

「甲状腺機能のコントロールが不十分な患者であっても、一般的にはウイルス感染症にかかりやすいということはない。ただし、全くコントロールできていない患者の場合、特に甲状腺中毒症では、感染症によって起こる合併症の危険性が高まる可能性がある。したがって、抗甲状腺薬の内服を継続することが重要である。」

 

 以上、「甲状腺の病気の人は新型コロナウイルス感染症にかかりやすいですか?」の答えに近い事項を要約してみました。参考にしてください。