クワッカリーに注意! | TMSジャパン公式ブログ

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ガァーガァーと大声で自慢話をするところから、イカサマ師・インチキ療法・健康詐欺師を「クワッカリー(quackery:アヒルの鳴き声に由来)」と呼びます。しかし、クワッカリーの鳴き声はメディアが広めています。それもそのはず、クワッカリーの鳴き声(広告)はメディアにとっては最大の収入源だからです。当然のことながら、メディアは事実や科学的根拠よりスポンサーを大事にします。クワッカリーから貴重な時間とお金を守るために、私たちは「ヘルスリテラシー」を高める必要があります。

 

 

 

クワッカリーは「即効性がある」「万病に効く」「奇跡的な効果」と声高に主張し、さまざまな健康関連商品(医薬品もどき・化粧品・意味のない食品・不必要な健康補助食品・ニセモノ医療機器)を盛んに勧めます。しかし、その安全性を考えるとき、主に3つの問題点があることに気づきます。

第1は、健康被害という直接的な問題です。

クワッカリーの宣伝文句の中には「天然だから」「自然だから」「食品だから」という記述がよくみられます。化学製品ではないことを強調し、あたかも副作用がないかのように思い込ませたいのでしょう。

ところが、天然や自然のものには毒素を含んでいることもあれば、食品とはいえ特定の成分が濃縮されているもの、不純物が含まれているものがあります。さらには、表示成分がまったく含まれていないものや、逆に違法医薬品が含まれていることを表示していないものまであり、安全どころか命に関わる危険性をはらんでいます。

また、特許番号や利用者の体験談、動物実験の結果、医学博士の推薦、あるいはマスメディアが取り上げた回数も、安全性とはまったく無関係です。なぜなら、いずれも科学的根拠(エビデンス)とはいえないからです。

エビデンスがあるというためには、ヒトを対象とした対照群のある臨床試験を行い、高い再現性が確認されなければなりません。ところが、クワッカリーは医学の専門家ではないし医学教育を受けていない場合が多く、エビデンスよりも経済的利益を優先します。

そもそも、利用者が体調を崩すような副作用があったとしても、クワッカリーにその事実を公表する義務などありません。それどころか、表沙汰になるのを恐れて隠そうとするでしょうし、瞑眩(メンゲン)反応や好転反応と称して一時的なものだと説明するでしょう。

これはきわめて危険なことです。とりわけ高齢者、妊産婦、授乳婦、小児、ならびに医師の治療を受けている患者やCAM(補完・代替医療)を利用している患者は注意が必要です。エビデンスが存在しないということは、どんな悪影響や相互作用が現れるか予測できないことを意味するからです。

もしクワッカリーから購入した健康関連商品を利用して体調が悪くなった場合は、直ちにその利用を中止して医療機関を受診すべきです。その際、「何を」「いつから」「どの程度」利用して「どんな症状が出たか」を医師に報告しましょう。また近くの保健所か国民生活センター、もしくは消費生活センターに相談し、過去に同じようなケースがなかったかを問い合わせてみるのもよいでしょう。

第2は、治るチャンスを失うという間接的問題です。

クワッカリーの被害者は、自分の健康に漠然と不安を感じていたり、人一倍健康に気を付けている割には、現代医学に不信感を抱いていることが多いようです。そこにクワッカリーの付け入る隙が生まれるのです。

ところが、自己限定性疾患(self-limited disease:ある一定の過程を経て自然に終息する傾向を持つ予後良好の疾患)ならまだしも、命に関わるような危険な疾患が潜んでいる場合、クワッカリーの虚偽誇大広告を鵜呑みにして手を出すと、適切な医療を受ける機会をみすみす逃してしまうことになります。そうなってからではもはや取り返しがつきません。

また、命に関わるような疾患は、少しでも治療が遅れただけで手遅れになることがあるため、瞑眩反応や好転反応が出現した際にも十分な注意が必要です。

買い手危険負担(caveat emptor:悪い商品を買ってもその責任は売り手ではなく買い手にある)という言葉を念頭に置き、必要な医療を受ける機会を失うことだけは断じて避けましょう。わが国には「健康のためなら命はいらぬ」という笑えない風潮があるようですが、そろそろ目覚めてもよい時期ではないでしょうか。

そして第3は、クワッカリーによる心理社会的問題です。

前述したように、絶対に効かないという治療法は存在しないし、信念だけで治ることもあります。したがって、いくらクワッカリーといえども、それを信じ込むことで何らかの効果が得られる可能性は大きいのです。そしてその効果を実感した者は、『三た論法』を用いて周囲の人々にも勧めるかもしれません。

ところが、効果が得られない者やクワッカリーであることを見破る者、あるいは体調を崩す者も出てきます。そうなると、たとえ善意の気持ちからだったとはいえ、周囲の信頼と友人を同時に失ってしまい、心に深い傷跡を残す危険性があります。とりわけ勧めた相手が肉親で、不幸にも健康を損なった場合の心理的ダメージは計り知れないものとなるでしょう。

また、マルチ商法(multi-level marketing:連鎖販売取引)という形態をとるクワッカリーも大きな社会問題となっています。ディストリビューターと呼ばれる販売員が知人を勧誘して顧客とし、その販売網をピラミッド型に形成していくマルチ商法自体は違法ではありません。しかし、虚偽説明や脅迫などの違法行為を含む勧誘、購入実績を維持するための過剰な買い込み、その購入資金捻出のための借金(クレジット契約)といった被害が後を絶ちません。

そこで国民生活センターや消費者センターでは、マルチ商法を悪質商法として注意喚起を促しています。「健康になると同時に高収入が得られる」という甘い言葉に踊らされ、金銭や友人を失うことのないように十分注意する必要があるのです。


 

 

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