キムチ鍋 53
現下の、ぼくの立つ位置で、幸せか否かを問わ
れたら、さて何と答えたらいいのか、少なくとも不幸
であることはないが、かといって幸せの自覚はない。
食事がおいしくいただいているのでよしとするほか
ないか。
思い返してみれば、長い人生行路の中で、なにか
いいことがあったであろうか。皆無のようなきがしな
いでもない。幸せか否かなんて、あれこれ詮索して
も、ほとんど無意味なような気がしてならないが、と
きどき、そんなことが脳裏を過ぎる。死もそうだが、
幸不幸も、自分自身に問いかけて、考えても、答え
が出るわけでもない。ただひたすらに生きるだけで
ある。やがて死が訪れるだろうが、それは自然の摂
理だからいたし方がない。というよりも、チェホフじゃ
ないが、死がおとなう恐怖よりも、むしろ死ねない恐
怖のほうがはるかに大きいものだそうだ。ぬべなるか
な。言いえて妙なるかな、である。