ステーキ 418
唐突で恐縮であるが、わが茅屋を見渡して見れば
物であふれかえって入るではないか。テレビ二台、
エアコン四台、冷蔵庫、電子レンジ、JBLオーデオセ
ット、掃除機三台、ジューサー、ミキサー、トースター、
レコード五千枚、本数え切れず、映画ビデオ多数、車
二台、これはみんな、我が家の家族の欲望を満たす
が為に買ったものである。
ぼくが子供の時はなにもなかった。子供の頃が、今
よりよかった、などとは言うつもりはないが、物がない
時代が詰まんなかった、ともいえない。
こんなことを、つらつら慮ってみるに、物質的欲望を
いくら充足しても、心の平安を手にすることは出来ない、
ということである。たしかに、ほしいものを手に入れれば
一時的な喜びはある。しかし、喜びは短く、すぐ飽きて
別のものがほしくなる。この連続である。気がつけば、膨
大な物に囲まれて、ため息をつく。ぼくら家族の欲望で
手に入れたこれらの物は、ぼくら家族が死んじゃえばど
うなるんだろうか。おそらくは、捨てられちゃうんじゃない
のだろうか。