門松 81
白猫の通る夜ふけのさるすべり 森 澄雄
しみじみ思うことだけど、ぼくらって本当は幸福なんじゃないの
だろうか。ただ、実感があまりないんだよね。ついつい不満のほ
がリアルだよね。
幸福感を、物質と精神と二つに分けちゃうと、まずはさ、物質は
さ、どうしても豪邸やベンツを乗り回している奴と比較すると、落
ちるように感じるけれど、江戸時代の将軍なんかより美味しいも
のを食べたり、当時は、テレビやエアコンなんてなかったんだよ。
車もなくて、かごや馬で移動していたので、今と比すれば、格段
に今のほうがいい暮らしさ。
精神のほうの幸福感てさ、いい女にもてたり、他人から尊敬を受
けることなんだろうか。蔑視されたりバカにされると幸福じゃないよ
ね。人間はさ、社会を形成して生活を営んでいるから、人間関係か
ら生ずる、嬉しいこと、不快なこと、いろいろあるよね。毎日、楽しく
てたまらない、なんてあるわけないじゃない。
日常って退屈だよね。幸福も不幸もないよね。ただひたすらに倦
んで、おお欠伸なんだよね。人生のほとんどの時間がそんな風に
過ぎていくんだよね。そして時々、おれは幸福なのか、それとも不
幸なんだろうかと反問して、答えが見つからずに苦笑いさ。そんな
ふうにして時間ばかり過ぎて死んじゃうんだろうね。寂しいね。侘し
いさ。さよならだけが人生だ。はい、お粗末さまでー