梨と支那 595
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎
ぼくは、俳句のみならず、詩全般、短歌、自由律、現代詩などを
好み、自らもへたくそながら創作し、新聞や雑誌に投稿し、何篇か
は掲載されましたが、能力の限界に気づき創作を断念いたしまし
た。しかし、現在も詩は好きなので古い詩集のほこりを払い、読み
返しています。俳人も山口誓子、中村草田男、西東三鬼、金子兜
太、富沢赤黄男などが好みですが、小説家で俳人の久保田万太
郎がことのほか好きで、一句ゝをかみ締めるように味わっているの
ですが、宝石のような万太郎の句に魅了されっぱなしです。ここに
何句か書いてみますから鑑賞してください。
竹馬やいろはにほへとちりぢりに
わが胸にすむ人ひとり冬の梅
叱られて目をつぶる猫春隣
くもることわすれし空のひばりかな
何もかもむかしとなりてかぎろへる
夏場所やもとよりわざのすくいなげ
さみだれや澄みわたりたる水の底
この恋よおもいきるべきさくらんぼ
何ごともひとりに如かず冷奴
死ぬものも生きのこるものも秋の風
秋風や水に落ちたる空のいろ
何もかもむかしの秋のふかきかな
冬の灯のいきなりつきしあかるさよ
死んでゆくものうらやまし冬ごもり
ゆく年や草の底ゆく水の音