_ 阿弥陀仏と菫 239
今日も休んでいる。こんなことは学生時代以来のこと
である。ぼくの生活たるや、ほとんど仕事が中心で休暇
は、一年で2日ほどしかない極めて異常なスケジュール
は、家族にはかねて不評であった。
仕事と言っても、県下に点在する建物に行って、お客
さんが現れるのを、深海のアンコウのように大口を開けて、
本を読んだり、資料を整理したり、疲れたら午睡をむさぼ
ったりするので、世間のあまたの労働者諸兄諸嬢にはは
なはだ遺憾ながら、なんとも安直な仕事と言わざるを得な
い。
その行くべき建物がなくなった。しかし、なくなったとい
うのは正確ではない。有るにはあるのだが、ぼくの気がす
すまないのだ。たとえば距離が遠うすぎるとか、売れそう
な気がしない、と言うのが、気の進まぬ主因である。遠因
としては、駐車場が狭い、近所に食堂がない、などである
が、いかに魅力が失せた建物でも、近所に魅惑的なご婦
人がちょろちょろしている場合いは、牡の本能にとらわれ、
遠路であろうと厭わずはせ参じるつもりである。