_ 四字と熟語 194
昔、一匹の犬を飼っていた。名をはなと言い、黒犬の
雑種である。少しダックスが入っているのか、胴長の短足
だった。もともと隣の家に貰われてきたのであるが、なぜ
か我が家に居ついてしまった。そのいきさつは忘却のか
なたである。顔は美犬と言っても過言ではない。
犬の成長は早い。いつの間にか腹が膨れてきた。不埒
にも妊娠したもようである。少々尻軽犬だったようだ。犬は
飼い主に似ると言うが、当時、ぼくはまぎれもなく童貞だっ
たことは天地神明に誓い断言する。いわば飼い主を出し抜
いてあらぬことをいたしたわけで、ぼくとしては先をこされた
うえに、飼い犬にあそこを噛まれたようなもので、泣き面に
蜂とか、はたまた、カエルの面にしょんべんのごとし。
やがて三匹のまるまるとした子犬をひりだしたが、いず
れもぶす犬ばかり、どうも相手が醜犬だったもよう。はなち
ゃんはどうやら、美醜をいとわぬ、なんでもこい犬だったこ
とが実証された。そういえばと家人の見れば、なるほどぼく
は飼犬はなちゃんに似たんだ。