_幻視と政治 130
こんなことがあった。ごぞんじのようにぼくは、しばしば
本屋をのぞく。その日も何か面白い本がないか、と立ち寄
ったのである。図書館とか、本屋を訪れると、気分がすごく
おちつく。安心立命の感じだ。
本屋のドアを開けて本を物色していると、ふと背中のほ
うでたどたどしい日本語が聞こえた。振り返ってみると二人
の男女がいた。ひとりはフツーの二十歳前後の女性で、もう
一人が白人の外人だった。
ぼくは同性愛の傾向はない。勿論、同性愛者を忌避する
思想の持ち主者でもない。異性を愛そうが、はたまた同性
愛そうが、なんらやぶさかではない。自由である。
その外人の青年を見た瞬間、雷に打たれたような衝撃を
うけた。実に美男子なのである。身長は180センチぐらいだ
ろうか、顔は小さく、さながらギリシャの彫刻のごとし。さりと
てプレスリーのように、甘すぎるフェイスにあらず。適度な甘
さと気品、およびりりしさを備えたそれであった。ぼくは女性
の美しさに心打たれることは、しばしばあるが、男性の美し
さに驚愕くることは、人生を振り返っても、数えるほどしかな
い。まさか、18歳の折、自分の顔を鏡に映してうっとりした
などのナルシズムはなかったはずだ。