_ 幻視と政治 127
政治の幅は、生活の幅より小さい、と言い放ったのは
埴谷雄高である。確かに、わたしたちの身の回りには、さ
まざまな、眼に見えない政治で決められたルールが張り巡
らされている。それにもかかわらず生活はダイナミックな奔
流となっている。人間は労働を通して自然に働きかけ、生活
の持続を可能ならしめている。社会が変化するたびに、労働
の分業も、より複雑になる。生活を送る人々は、政治を意識
しないが、政治は常に国民を意識する。なん人といえど政治
から自由ではない。政治が作るルールを守らざるをえない。
政治の要諦は、いかに人民から税金を収集し、そのお金
をいかように使用するか、である。そのことで万民が満足する
ことは困難である。分配の不公平が生じると、どうしても不満
が生まれ、民心が乱れる。生活の幅を政治が犯したのであ
る。いかに政治が腐敗しても、人々は生活を放棄することは
出来ない。流れ行く川の流れのように途絶えることなく生活を
続けなければならない。
個は有限の生命を閉じることがあっても、類としての人は
悠久の時間の旅人である。一時的に政治が生活の領域を侵
犯することがあつても、やがて人々の生活が政治を駆逐する
であろう。なにを言いたいのやら。ふん。