ブルース 7
今日はなにがあったのだろうと、ふと顧みるに、何も
思い浮かばない。毎日毎日が強烈な印象がのこる生活
というのは同なんだろうか。例えば戦場、いつ死ぬかわ
からぬ状況。一分先が判然としない、明日までいきれぬ
のか分からない濃密な時間の連続。こんな状況において
も人間は、昨日なにをしていたか思い出せないことがある
のではないか。
あるいは、燃えるような恋をしていて一分、一秒でも会
いたい。ただ目を合わすだけでいい。そうしなければ狂い
死にそうだ、というような経験をなさった方もいらっしゃると
思いますが、そんなな時でさえ、雲の形や、野に咲く花に心
を奪われて、あれほど狂おしく思った恋人のことを忘れて、
ぼんやり雲や、名も知らぬ花に見とれたりしている自分に、
ふと気づきうろたえた経験はないであろうか。
大きな話になるが、ぼくは今だ宇宙のなんたるかもわか
らぬ。それと同じくらいに、自分がなんであるかも理解がか
なわぬ。わからぬままいきているのだが、わからぬというも
のは、なんだかおかしなかんじだ。だからといってわかって
どうなるものでもない。確かなことは、生命ある者、いつかは
死ぬ、というばかりだ。あの憎まれっ子の談志さえ死んだ。
どうやら、このことばかしは確かなようだ。