ブルース 6
阿佐田哲也という作家がいた。あるいは色川武大とも
名のった。
阿佐田哲也は、ご存じ麻雀放浪記などエンターティーメ
ントを、そして一方色川武大は百、狂人日記など純文学を
書いた作家である。
ぼくはこの二人が、いえ一人なんだけど、大好きだった。
長嶋流にいえば、いわゆるフアンなのである。もう何年にな
るのであろうや、急死されたのであるが、ぼくのなかでは生
きている。博打が好きで、ジャズが好きな人だったが、ぼく
がジャズを聴いていると、ときどき現れて、それはつまんな
いや、と顔をしかめるのだ。
色川さんが好むジャズ歌手や演奏家は、ぼくの知らない
人ばかりだった。いかにもツー好みの地味な人ばかりだった
ような記憶がある。ぼくみたいにコルトレーンなんて絶対言
わないひとだった。一度美人の誉れ高い奥さんにおめにか
かり、本当はどんなレコードを聴いていたのか尋ねてみたい
気がする。意外とマイルスとか件のコルトレーンなる名があ
がるかもしれないが、いやいやあの朴念仁が、妻にさえそう
いう様を見せてはいないであろう。みんなが知らないようなレ
コードばかりを聴いていたんであろう。それが色川武大のダ
ンディズムであろうや。