突破者 12
寒い。実に寒い。はななだ寒いともいえる。冬だから
あたりまえじゃないかと言われても、寒いものは寒いの
である。しかし、寒いからといって、寒いと言ってなんに
なるのかといえば、なんにもならない。でも寒いのである。
今日もこれから仕事である。やれやれといった気持ち
はない。ぼくは家でいるより仕事で外に出かける方が好
きである。どういうわけかそのほうが生活のリズムが生ま
れるのである。正月などで休みが続くとかえって体調が変
になってしまうのだ。
かといってぼくが勤労意欲に富むかといえばサニあら
ず。極めてずぼらである。いいかげんともいえる。現に本
ばかり読んでいるし、尋ねるところは図書館ばかりである。
ぼくは海の近くか、本がたくさんあるところ、つまり図書館
にいると心が落ち着くのである。海はわかる。生物は海で
生まれた。ぼくも生物の端くれだ。無意識のうちに故郷を
懐かしむきもちが、ぼくをして海に引き寄せるのであろう。
では図書館がどうしてぼくを引き付けるのであろうか。ぼく
はこう思う。ぼくの学校生活たるや惨憺たるものであった。
いわゆる劣等生なのであった。したがってぼくには知性に
たいするコンプレックスがあるのだ。その巨大な劣等感の
穴をふさいでくれるのが図書館なのである。おわかりであ
ろうか、おのうのがた。