独り言   6月8日 | はなのブログ

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         天国への階段    8

  東山が鴨川に向かって緩やかに張り出したあたり、

東福寺は月輪山山麓の渓谷に臨む景勝の地にある。

境内およそ二十万平方メートル。洛東のはずれ、ここ

はもう京都のゴバン目圏をはずれている。おそろしく広

い境内は、うっかりすると方向をもとまどわせかねない。

  広々としたという気のよさは、だがここの境内にはな

い。人の手を尽くしきれないままであるのを、荒廃ともい

いがたい。人工がすでに自然を身につけてしまったのだ。

それはもう、人の及ぶところではない。この禅寺はだから

ペンペン草がはえるのにも無頓着だ。ひょうひようとして

いる。

 通天橋を登りつめて開山堂につくと、とりつくしまのなか

った東福寺のイメージは、あっさりぬぐい去らなければな

らない。門をくぐって右に池泉、左に枯山水。屋上の桜閣

が門の真正面にはいると、緊張した美の空間が生まれる。

晩秋の寒さに通天橋を渡ってきたものに、はっと息をのま

せるのは、落ちつきはらった堂と庭のたたずまいだ。日の

光が堂をてらして、庭にながく黒い影を描き、静寂を極限

にまで緊張させている。冬の気配がまじかに感じる東福寺

である。