鰻と犬 5
いよいよ秋である。秋になればおいしい果物がた
くさんある。まず梨、栗、蜜柑、柿などが代表的で
あるが、とくに蜜柑などは年中あるが、やはり秋の
モノが勝る。ぼくは食べ物で好き嫌いが全くないの
であるが、果物の中でとりわけ好きなのは柿であ
る。柿を好きな理由をのべよ、といわれてもハタと
考え込んで困惑するが、好きなものは好きなので
ある。詩人ならもそっと違った言の葉で修辞するで
あろう。
木の枝にたわわに熟れる黄金色の実を、君が白
き手でもぎ取らん。柿の実も君の口内に食せらんこ
とを喜悦すべし。嗚呼柿よ、甘き柿よ。ぼくは君を思
慕する。たとえ明日ぼくの命が絶えても、今日ぼくは
柿の木の苗を曠野に植えるだろう。
つきなみだが、秋は読書の季節でもある。何故そ
うなのかは合点できないのだが、とにかくそうらしい。
ぼくの人生も後半にさしかかっているので、何度もト
ライして挫折した本に改めて挑戦してみたい。そんな
本の一部を列挙してみよう。戦争と平和、ファスト、ユ
リシーズ、存在と時間、失われた時を求めて、資本論、
純粋理性批判、ツァラスストラはかく語りき、源氏物語、
コーラン、仏典、死霊、ドグラ・マグラ、さざえさん全巻、
こんなところだ。ハタ坊だじょ、足ばたばた。