猫と柳 16
開高健は、徳島の街を眠ったようなそれである、と
のたまったが、けだし名言である。ぼくはその眠った
街で働いているのだが、つくずく同意せざるを得ない。
何の刺激も、魅力も皆無で、ただ平穏に生きるという
ことのみにおいてはさしつかえなき地である。
ぼくはこの街が好きかと言えばそうでなく、嫌いかと
言っても首を振らざるを得ない。要するにどうでもいい
のである。
そのどうでもいい街を少し意識したブログに最近で会
った。それは以前にも書いたと思うが、異国に住むうら
若き聡明なるご婦人のブログの文章の語尾にじょ、な
る言葉が使用されていたからである。この言葉は現在
は死語になっているが、かって徳島市内で、とくに女子
の間でよく使われていた。例えば「わたしこのごろ勉強
しょんじょ」てなぐわいである。久しぶりにじょに出会えて
頗るなっかしく、ぼくの脳裏の中に当時の少女たちが1
ダース現われた。現在徳島でこの言葉を使っている人
はほとんどいないと思う。少なくともぼくは絶えて聞かな
い。
あッ、そうそう赤塚不二夫の漫画のなかのハタ坊が
「ぼくハタ坊だじょ」と言って、足をばたばたさせているの
を思い出した。もしや異国のご婦人は、ハタ坊の縁者で
はありはしないか。そうであるなら是非、ハタ坊ファンの
ぼくに彼の消息をお伝え願いたい。