まほろば 2
B氏は、とある人妻とそのマンションで情熱的な
一夜をともに過ごした。人妻の夫は出張中なので
安心し切っていたら、朝方、玄関のインターホンが
鳴り、扉のレンズ越しには、なんと夫の姿。B氏は
あわてたものの、人妻の方は落ち着き払ったもの
で、台所からゴミ袋を抱えてきて玄関の扉をあけ
ると、
「まあ、お帰りなさい、あなた。ちょうど良かったわ。
わたしまだネグリジェだから、これ出してきてくれな
い」
夫がゴミ袋を抱えて階下へ降りて行った隙に、B
氏は部屋を抜け出し上階へ登っていき、そこでゴミ
置き場から戻った夫が部屋に入ったのを確かめて
から階段を降りて無事建物の外に出た。歩きなが
らも、ひたすら人妻の機転に感心するばかり。
「いやあ、たいしたもんだ。なんて頭のいい女なんだ。
それにしても間抜けな亭主がいたもんだ。フフフフ」
ついつい顔がほころぶ。時計をみると、まだ朝7時
なので、職場へ直行せずに、ひとまず自宅へ立ち寄
ることにした。玄関のインターホンを押すと、しばらく
して寝間着姿の妻が寝ぼけ目をこすりつつ、ドアを開
けてゴミ袋をおしつけてきた。
「あら、あーた、ちょうど良かったわ。わたしまだパジャ
マなのよね。悪いけど、お願い」
ゴミ袋を抱えて階段を降りながらB氏は愚痴る事しき
りだった。
「まったくどうしょうもないグータラな女だ。困ったもんだ、
一日中家にいて、ゴミもだしとかないなんて」