流転と啓示 24
資本主義は私有財産制と自由契約制が在って、初
めて成立する。これは資本主義の原理である。これを
国の法に定め、資本主義発展の礎を築く事ができた
のは、資本主義の精神を備え持つ貴族が支配者とし
て機能していたからである。つまり、政治の事はすっ
かり彼等に任せ、経済の担い手ある資本家がその活
動に没頭できたからこそ資本主義は開花し、発展し得
たのである。
かって日本にも、真の企業者として資本主義過程を
支え、大胆な革新を敢行した人々がいた。それは明治
維新の下級武士達である。禄高百石以下を下級武士
というが、革新の担い手となったのは下級も下級、最下
級の武士達である。生活は貧しかったが、彼等にはプラ
イドが在った。自分達こそが国家の柱石であるというプラ
イド。我が事として国の行く末案じ、いざとなれば総てを
投げ打って身心を奉ずるという高い志。加えて彼等には
教養が在った。
革新の担い手たる資質をを備えていた、というだけでは
ない。明治四年に階級制度が廃止され、彼らは職業を失
ってしまった。武士という職業そのものが無くなってしまっ
たのだから、最早伝統にこだわる術も意味もない。生きて
ゆくためには、それまでとは全く違った事を遣るしかなかっ
た。彼等こそが新生日本の立役者になった。
資本主義は、その経済的成功故に生き詰まり、失速する
とシュンペーターは語った。又、創造的破壊を推進する資
本主義のエートスが衰弱し、資本主義の屋台骨とも言える
私有財産制と自由契約制が形骸化すれば、資本主義は衰
退し、やがてその終焉を迎える、とも予言している。つづく