流転と啓示 27
スミスの自由放任主義を支持したベンサムだが、
皮肉な事にその思想は後に古典派の宿敵となるケ
インズにも大きな影響を与えた。ケインズが主著「
雇用・利子および貨幣の一般理論」で展開した利子
理論、即ち流動性選好説である。
例えばある人が財産を持っていたとしょう。単純化
のため、保有方法は現金で持つか、投資をするかの
二つしかない事にする。現金で持てば利子は付かな
い。証券で持てば利子が付く、ロックの継承者たる古
典派であれば証券で持つ筈だ。将来に亙る欲求を予
見でき、しかもその効用を正確に計算できるのなら、
富を最大化するために利子の付く証券を選ぶに決ま
っている、これが古典派の考えである。ところがケイン
ズは、そんな状況でも現金でもつ事を選ぶ人は必ずい
ると言う、理由は証券の価格は変動するかもしれない
からである。
古典派の教義はロックの哲学を源泉とし、ロック・モデ
ルは、人間には予見能力があるとの仮定を置く、ベンサ
ムはこれを更に精密化して、人間は将来における幸福
も正確に計算できる、とした。ケインズはこれを途方もな
い仮定ーー将来を正確に予想することなどできない、とし
て否定したのである。
市場は自由放任にすべきか、それとも政府による介入
も是とすべきか、古典派とケインズ経済学の論争は、未
だ決着を見ていない。 つづく