空想と潮騒 4
ただ今、悪魔の街東京から帰ってまいりました。
飛行機は仕事で使うもの、旅には汽車か船がい
い。何も急いでなんかいないから、景色をたのしん
だり隣に座った御嬢さんとお喋りしたりで、気分は
いいもんね。旅でぼくが一番好きなのはバスで街
並みを走っている時の両側のなんでもない家々の
たたずまい。一期一会なんて気恥ずかしい言葉は
ぼくには似合わないけど、バスの窓から、ちらっと
見かけたおばさんやおじいさんの姿にセンチメンタ
ル・ジャーニーを感じて胸がアックなるって経験てあ
りませんか。もう二度と会えないだろう。むこうもぼ
くを知らない。これは抽象的な人々だから起こる現
象なのかもしれない。だってぼくの家族やお付き合
いしている人々に対してこんな感傷を感じることは
ほとんどない。おそらく死んだときぐらいだろう。日
常は腹立たしく憎たらしく、おめえなんか早く死んじ
ゃえ、と心のなかで呟いている。どんなに憎んでい
ても本当に死んじゃえばつぅん、となるけどね。
憎まれっ子世にはばかるだ。お互いにはばかりま
くって憎まれましょう。
やれやれそれにしても東京は住むところではない。
シカとこの目でみてきた。