おんながひとり、夜道をあるいている。
ハイヒールの靴がアスハルトにあたり、きそくただしい音をたてている。
おんなは今夜、,おとことわかれてきたのだ。
おとこには妻子がいる。それを承知でおとこを愛したのだった。
おんなはもう、三十をこえている。
いままでになんどか恋をしたが、なぜか結婚にはいたらなかった。
原因は、おんなのわがままというひともいるが、おんなのキャリアと高収入におとこがひるむのかもしれない。
今夜わかれたおとこは、仕事で知り合ったのだが、つきあってすでに五年になる。
籍をのこしたまま、妻子はおとこのもとからさったのだった。
そのご、しばらくして男は病にたおれ、仕事ができなくなった。
おんなが物心ともにめんどうをみてきたのだが、このことは、おとこのプライドをきずつけた。
今夜の別れ話も、おとこのほうからでたものだある。
おとこのきもちが、わかるだけに、おんなはつらかったが、この話をのんだ。
愛情が、かえってあいてをきずつけることもある。
なんども、おとことの別れをけいけんしても、心のいたみはますばかりだった。
今は、平静をよそおっているが、部屋にかえれば、おんなは泣きくずれるにちがいない。
夜道をあるいていく、,おんなのしろいトレンチコートが,しだいに闇にとけこんでしまい、もうみえなくなってしまったが、きそくただしいハイヒールのおとが、まだかすかに夜の無言にひびいている。