秋も深まる10月10日、「第4回世界青少年「志」プレゼンテーション大会」が開催されました。オンライン配信の大会模様をパソコンから視聴しました。

<第4回世界青少年「志」プレゼンテーション大会>
一般社団法人 志教育プロジェクトが主催するプレゼンテーションの大会。「みんなの「志」が世界を変える」をテーマに自分の役割を果たそうとする事を決意した子供達の発表の場として開催される。プレゼンテーション時間は5分。予選を突破した12名によるプレゼンテーションが行われる。



1.石原 聡太さん
志:「水生動物が人間の環境汚染の影響を受けることなく全ての生命を全うし、同時にそこに住む人々が安全で美味しい水を口にすることのできる世界をつくるため、世界の水環境を調査・保護する人になって、この世に生きる全ての生物から水に対する不安をなくす」

 小5の頃にTV主催の琵琶湖の水質調査に参加したりダムに投棄された家電の実態を目の当たりにしたことを切掛けに、ごみによる水質汚染を知る。人は1週間にプラスチックカード1枚分のごみを体内に取り入れ、海洋生物もナイロン袋をクラゲと間違えて食べてしまっている。自分はこうした状況を改善したい。そのため、夏休みの研究や科学の甲子園ジュニアにて、水を取り巻く問題への訴えを続けてきた。今後は大学へと進み共にこれらの活動を啓蒙できる同志を募りたい。

 1番手ですが堂々としたプレゼン、そして誰もが関わる水に関する問題という題材も相まって、聴き手を惹きつけていました。自分自身が志を達するための人生の道筋をも描けており素晴らしいです。
 最終的な理想・目標がやや観念的であるため、問題の解決した社会をどの様に描いているかを聞けるとより納得させられるプレゼンとなります。
 未来の地球への提言として、今後の発信が楽しみなプレゼンでした。

2.鈴村 萌芽さん
志:「人と人との繋がりで、笑顔と幸せがあふれる社会を創る」

 自分は人々の繋がりが深い地域に育ってきた。多くの人々に救われ、人の優しさに触れてきたことへの恩返しがしたい。そう考え福祉施設への訪問活動をしてきた。「来てくれてありがとう」という施設の方々の声、そこには感謝の意と共に介護人材が年々不足しているという厳しい現実がある。そうした施設と学生の繋がりを模索し、マッチングのサービスを立ち上げた。学生への情報提供、そして福祉施設事業者への学生との接点を提供することで福祉体験から就職へと流れを作りあげていきたい。
 
 ご自身で行動におこされている志ということもあり、実感を伴った説得力の有るプレゼンでした。何が問題であるかを捉え、解釈ができていることも聴衆を納得させる力となっています。
 鈴村さんの活動の原動力となった内容(地域の人々との交流)について、なぜ恩返しがしたいと思ったのか、その救いと繋がりの連鎖がどんな社会を創り上げるのかをより深く言及してもらうことで、活動の意義がより浮かび上がってきます。
 是非、多くの人に繋がりの大切さを伝えて頂きたいと感じたプレゼンでした。

3.グレシャス 采紀さん
志:「英語の本を通してみんなに楽しい思い出と笑顔を届ける」

 子供の頃、好きだった本は何ですか。登場人物と共に喜びワクワクする、それは想像力を広げる本が持つ魔法なのだ。自分は図書館でボランティアをしている。今、本のデジタル化に伴い、本に触れない子供が増えると共に世界中の本が処分されつつある。そんな本の魅力を再発見して欲しいと思い、英語の本を日本の学校や施設に贈るNPO法人を立ち上げた。多くの施設に届けお礼を頂く中で、改めて感じる。読書とは頭の心の栄養であり、楽しみながら異なる文化の知識を得られるものなのだ。世界中の子供達にこうした本を届けられる環境を作りあげていきたい。
 
 本というものに対する愛情、そして本の魅力を改めて世界に伝えたいという気持ちが伝わってくるプレゼンでした。特に本の魅力とは何かということに、自らが考える定義を伝えられており、芯の有るスピーチとなっています。
 デジタル化による紙の本の処分が問題ということについては、紙の本が持つ力をデジタルの本と比較して伝えることで、より内容の説得力が増します。
 今まで読んできた本を振り返り、次の世代に伝えていきたい。そう思い返すことのできる素敵なプレゼンでした。

4.高久 夢華さん
志:「どんな環境でも「夢」について考えることができる環境にするため、教養を広める教育を提供する国際社会で働く人になる」

 泥水を飲む子供の写真に衝撃を受けたことが切掛けで、自分は水の問題に関心を持ち国連で演説、カンボジアで水の大切さを伝えてきた。子供達が水汲みに費やす時間を減らせれば、その時間は勉強に充てられる、そんな社会イノベーションを成功させることができたが、その際カンボジアの子供に将来の夢について聞くと「夢って何?」という言葉がが返ってきた。その言葉に再度の衝撃、同時に自分は夢を与えられる人になりたいと思った。夢を考えることができる環境こそが、人々が意思・意欲を持ち社会イノベーションをしていくうえで大切なことなのだ。
 
 夢を持つためには、夢を考える環境に在ることが大切。視点が素晴らしく、かつ掘り下げられておりました。また、どの様に考えを深めていったかがご自身の活動を通してよく分かりました。
 視点が良いだけに、夢を考えることができる環境とはどの様な環境であるかについて、分析された見解や考えを聞いてみたいところです。
 是非、今後活動を進めていく中で考えを深め、そして主張を広げて欲しいと思いました。
 
5.諸岡 杏佳さん
志:「自由で希望にあふれた世界にするために美術の教員になって子供たちに絵の素晴らしさを伝える」

 小さい頃海外に住んでいた自分は心細くて泣いてばっかりであった。そんな自分を救ってくれたのが美術館で出会った絵であった。誰もが心の奥に在る美しさを表現できる様に豊かな想像力を広げることができるのだ。自分が気付いた様に、多くの人にそのことに気付いてもらうため、病院の中に絵の美術館をつくる、そんな活動を世界中に広めてみたい。そのため10年後、自分は必ず美術の教員として広めているだろう。
 
 ご自身の気付きの切掛けが最後の決意まで繋がっており、意志の強さを感じるプレゼンでした。ご自身の描いた絵を見せて頂いたことからも力強い決意が伝わってきます。
 病院に絵の美術館をつくることについては、鮮明に未来を描かれてはいるものの唐突に思えます。言葉を費やすと共に病院に限らず考えを広めてみても良いかもしれません。
 決意の元に、どの様にその夢を広げていくかが楽しみなプレゼンでした。

6.石飛 樹さん
志:「赤谷の森の動植物を守るため、豊かな森創りをして自然との共生を実現させるという、人間が永遠に生きて行ける唯一の道を切り拓く」

 群馬県の赤谷の森は寒冷地域に生息するイヌワシ、温暖地域に生息するクマタカといった生息地が異なる絶滅危惧種が共存する世界でも珍しい地域である。豊かな森が無いと動物、ひいては人類は生きていけないのだ。小さい頃からこの森に慣れ親しんできた自分は、この豊かな森を守るべく大切さを世界中に伝えていきたい。小さなどんぐりがこの森の創りあげる礎となる。この小さな種は人類と自然の共生への希望の種となる。
 
 慣れ親しんだ森という環境の大切さを改めて見つめ、共生を訴える。自分自身の願いを世界への提言へと昇華しており改めて考えされられるプレゼンでした。
 森をどの様に大切にしていくかのロードマップ、そして目指すべき理想のかたちについて言及があると、より説得力が出てきます。
 しかしながら森を思う大切さが、言葉のひとつひとつから伝わってきました。 

7.岡村 有紗さん
志:「世界中の貧困で苦しむ子供達のために、プログラミングを使って貧困を解決する」

 以前、ミャンマーでバイオリン演奏のボランティアに参加した。電気もガスも水道も無い中でもキラキラした眼で演奏を楽しんでもらった。楽しむとはどんなに素晴らしいことか。しかし世界は楽しむどころではない地域が多過ぎる。幸せはお金では買えない、しかし貧困の中ではそこまで辿り着けない場所も多いのだ。今、自分はIT企業でインターンをしており、プログラミングの勉強をしている。高校はアメリカに渡り、最先端の技術を学び貧困を解決できる研究者となりたい。  

 力強いプレゼンが印象的でした。自分がやるべきことが明確でぶれていないことから来るのでしょう。聴き手を惹き込むプレゼンでした。
 ミャンマーの子供達の笑顔と貧困下での幸せ、そして貧困の解決のためプログラミングを学ぶことについては、聴いている限りでは主張にずれが感じられました。話の展開の中でより言葉を費やしましょう。
 ご自身の研鑽と、進む道をとことん極めて欲しいと感じたプレゼンでした。 

8.岡田 栞那さん
志:「日本における外国人技能実習生の問題と地域活性化、そして観光を掛け合わせたグローカルなビジネスを通して、自分の島から、国籍に関係なく誰もが幸せに生きられる社会を創る」

 瀬戸内海の島の農家である自分の家には、アジアから農業の研修生がホームステイに来る。そこで実習生が直面する問題は、地域と繋がる糸口が無いということだ。異文化交流。コミュニケーションの活性化を図ることでこの島は島民と実習生が対等な立場、「グローカルな島」となり得る。そう思い、ブータン人の実習生に話を聴き、島の人々との交流イベントや特産物を使ったミカンランタンナイトを開催した。大好きなこの島から幸せを発信したい。

 故郷への想い、そしてその故郷の今を分析し、良い方向へ進めていこうという、欲張りではありながら聴いていてワクワクする内容でした。発想、そしてそれだけに留まらない行動力が光ります。
 グローカルの内訳としてのグローバル、ローカルな点からのメリットを分けて説明することで、グローカルへの活動の意義が見えてきます。上手くラベル分けすると良いでしょう。
 瀬戸内海の映像も相まって、島の未来を見てみたくなる素敵なプレゼンでした。 

9.中井 健翔さん
志:「表現によってマイナスをプラスに変える場を作る」

 小学生の頃、いじめで不登校になった自分は劣等感と不安の中で生きてきた。そんな中でも、絵本を書き販売し多くの人に読んでもらうことで自部の気持ちを認められた。いじめた相手も誰かに否定されたストレスを自分にぶつけていたのかもしれない。やりたい表現が認められる、そんな場所が今必要なのだ。そう思い2018年から子供万博を開催、コロナ禍の中でも子供アートエイエンナーレを開催。子供たち誰もが主役となる、そんな活動を続けていきたい。

 ご自身の辛い経験を辛いままで終わらせずに相手さえも思いやり、そして多くの人々を救う活動にまで昇華しているには、素晴らしいの一言です。マイナスからプラスに転じた理由も明確であり、力強い主張となっています。
 誰もが主役となり認められる場については、是非とも詳しく聴いてみたいところ。多くの人に伝えて頂きたいと思います。
 これからの活動が楽しみなプレゼンでした。 

10.ロシーナ・モタポさん
志:「HIVに感染している女性を支援することを目的としたNPOを立ち上げ、発展させる」

 世界には恐れや精神的な虐待の中で生きる環境が有る。祖国である南アフリカでは辛い経験や病気をする女性が多い。自分の母もまたHIVに感染し亡くなった。しかし、母はそんな中でも気丈に祖国を良い方向に変えようと活動していた。私も母の遺志を継ぎ、南アフリカでHIVの女性への支援、そして女性のシェルターと作る活動をしている。日本で勉強ができているのも、ある人に自分のポテンシャルを見出してもらったからだ。同様に多くの女性がポテンシャルを持っている。そうした女性のリーダーシップを学ぶ場所を提供していきたい。

 祖国を良くし変えていきたいという想いが伝わってくるプレゼンです。
 切迫した現地の状況の訴えと、未来への力強い決意はご自身のリーダーシップを見事に表現しておりました。
 お話からだと、HIVの女性への支援活動を広めたい、リーダーシップを学ぶ場を提供したいというふたつの志が有る様です。話の展開は混同を避ける様にすると良いでしょう。
 是非とも、祖国を変える力となることを応援しています。

11.松木 美空さん
志:「子どもたちの声なき声に耳を傾け、笑顔あふれる未来をつくる」

 兄がケアしていた妹を殺害してしまう、この痛ましい事件の背景には子供がケアが必要な子供の世話をするヤングケアラーの問題が潜んでいる。自分も家族のケアをする中、戸惑い複雑な気持ちを抱えていたが、頼れる人は居なかった。そんな折、同じ境遇の人達の集いに参加する中で、ひとりではない、頼っても良いことを知る。こうした輪を広げ、多くの人々にヤングケアラーの実態を知って欲しいと願った。一人ひとりが自分の人生を歩める世界を共に考えていきたい。 

 ヤングケアラーの実情、そしてこの問題を多くの人々に知ってもらうこのと意義を余すことなく伝えられていました、何が問題であるかという真の原因を捉えている点も素晴らしいです。
 これからどの様に人々に広めていくか、そしてそのために何をしていくべきかということについて、ご自身の考えが有れば是非入れていくよ良いでしょう。
 ヤングケアラーの問題を真正面から取り扱った価値の有るプレゼンでした。

12.加藤 陽菜さん
志:「エシカル(倫理的)な社会を子供達に楽しく真剣に考えてもらうためにゲームやイベントを通じて「遊び場」の提供をする」

 自分達が飲んでいるコーヒーが外国の子供達の強制労働により作られている、そんな事実に衝撃を受け、そこから持続可能な社会とは何かを考える様になる。スイス、スゥエーデンでは日常生活を未来に繋げる活動が盛んであることを知り、このシステムを日本でも取り入れていきたいと考えた。欧州ではカードゲームで環境教育を行っており、これを普及する活動をしている。遊びを通して自分で気付き自分で考える。こうした場の提供こそが大切なのだ。 

 良いものを積極的に取り入れる姿勢、その学びを日常の遊びの中に取り入れる。楽しみながら学ぶことの意義と大切さについて考えさせられるプレゼンでした。
 コーヒーの強制労働とSDGsの繋がりについては、別の問題のの様にも捉えられますので、より言葉を費やすと良いでしょう。
 積極的な活動、そして提案が光るプレゼンでした。

 以上、12名のプレゼンでした。
 皆さん学生さんという立場でありながら、自分と社会との関わり方を真剣に考えられており、自分が何を成すかというところに真正面から言及しているところが素晴らしいと思いました。
 ひとつ気になったのは、志とは心に決めた目的であり目標なのですが、その手段までも志としている方が多く見受けられ、その結果として志が長文となっていました。長過ぎると覚えきれないこともあり、今後、自分の志を訴える場面も増えていくかと思いますので、志(目標・目的)と手段は分けておくと良いでしょう。

結果の方は、下記と相成りました。入賞された皆様おめでとうございます。

最優秀賞:高久 夢華さん
最優秀賞:中井 健翔さん
優秀賞:石飛 樹さん
優秀賞:ロシーナ・モタポさん
特別賞:岡村 有紗さん


入賞できなかった皆さんもそれぞれが素晴らしい熱意を持たれているプレゼンでした。是非ご自身の志を実現すべく、活動を広げていってください。素敵なプレゼンをありがとうございました。