最近、風鈴を買いました。ここのところは雨が続きますが、暑い時に窓を開けると”チリン、チリン”と心地良い音色が響きます。
 風鈴は夏の風物詩なのですが、最近はあまり見なくなりましたね。
 
 我々は言葉や声だけではなく、聞こえる物音からその情景を描きます。このときその物音を端的に表すのが擬音語です。先ほどの風鈴の”チリン、チリン”もそうですね。これが”リン、リン”であれば鈴の音、”ゴーン”であればお寺の鐘、”ゴーン、ゴーン”だと教会の鐘や古時計でしょうか。
 
 また、物音ではなく情景の程度をも類似のかたちで表します。”ズキズキ”頭痛がする。”カラカラ”と笑う。”ポツリポツリ”と語りだす・・・。実際にそんな音はしませんが、こうした表現をすることによりより情景が鮮明になります。これが擬態語です。
 
 擬音語・擬態語を総称してオノマトペと言います。オノマトペという言葉自体はフランス語であり、ギリシア語の”作った言葉”を意味するオノマトポイアという言葉からきているそうです。
 
 日本語はオノマトペが非常に多い言語です。実は、話の面白い人というのは、このオノマトペを多用するという特徴が有ります。オノマトペは情景をより繊細かつ鮮明に表現するのに非常に有効なだけでなく、話し手がオノマトペを使うことで、その対象にどんな印象を持っているかをも表現できるからです。
 
 そして、聴いた側がそのオノマトペを紐解くことで、そこに在る感覚をも想像し、話し手と聴き手が同じ感覚を持つことができるという特徴が有ります。改めてみると凄い表現技術ですね。
 
 「あー、そうそう今日もこっちは湿った雨でさー、さっきまで小降りだったのに、少し前から強くなってきてるよ。気持ちも沈むし、たまには晴れて欲しいよな~」
 
 「あー、そうそう今日もこっちはジトジト雨でさー、さっきまでシトシト位だったのに、少し前からザーザーきてるよ。気持ちもドンヨリするし、たまにはカラっと晴れて欲しいよな~」
 
 上記の2つの文を比べてみても、圧倒的に後者の文の方が情景を想像しやすいですね。
 
 日本では、古くは古事記にもオノマトペの記載が有ったそうです。
 我々の祖先は、情景に合ったオノマトペを”作る”こと、そしてそのオノマトペを伝えることで、聴き手にとって話の内容の情景、その精細な描写を手助けすると共に、話し手にとっても物事の捉え方、感受性を養ってきたのでしょう。
 
 ”チリン、チリン”
 
 初夏の風鈴の音は、暑い夏に一服の涼しさを想像させる音です。
 是非、今年の夏は風鈴の音に、涼を感じてみませんか。
 
 


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