さて、英会話は瞬間英作文、その前工程として主語、動詞、目的語或いは補語が明確な「英語になりやすい日本語」(=ある意味"不自然な日本語")に和文和訳することが大事、という話をしました。


それには「要約力、具体化力」がものを言う、とも書きました。「要するに何が言いたいんだ?」「具体的に言うと、xxが○○について△△した、ということだよね?」など、話の要点をすばやく捉え、分かりやすく具体化することです。我々日本人が大人になってから英語を学ぶわけですから、培ってきた日本語力、思考力、想像力を十分に生かせばよいのです。


ある分野の専門的な話、例えば技術、経済、金融などの難しい話は、確かに専門用語を英語で何と言うのか分からないと正確に伝わりませんが、それでも工夫すると大抵内容の5割は伝えることが出来ます。そのうちに皆さんもネイティブが書いた色々な英語の文章に触れるようになると思いますが、難しい内容の記事や論文の多くが、(単語は時々専門用語が使われていたとしても)驚くほどやさしい言葉、シンプルな文法で書かれていることに気がつくでしょう。


英語を母国語としない我々日本人は尚更、やさしい英語を話すよう心がけるべきです。それには英作文の前工程の和文和訳で、まずはやさしい日本語にする練習をすれば、やさしい英語が使えるようになります。


ということで今回は、実際に和文和訳(日本語要約)の練習をしてみましょう。2016/3/8 日経新聞朝刊 の「私の履歴書」に、アイリスオーヤマ社長である大山 健太郎さんという方が、下記のような文章を書いていました。専門用語があるわけではないけど、英語にするのがすごくやさしい文章という感じでもないですから、いい練習になると思います。


(1)「父から継いだプラスチック工場は下請け仕事が大半だった。原料は支給され、要望通りに部品などを作って納める。1個数十円の加工賃だけが収入だ。『お父さんが亡くなって大変だろう。力になるよ』と取引先は言ってくれたが、だから儲かる仕事を回してくれるような甘い世界ではない。」


例1) 「わりと原文に忠実」バージョン:

私は父からプラスチック工場をもらった。それはメーカーの下請会社だった。我々はメーカーから材料をもらい、それで部品を作り、メーカーに返していた。売上は、工賃(労働コスト)のみで小さかった。
取引先(メーカー)は、お父さんが亡くなったので私を助けると言った。が、彼らは利益の出る仕事はくれなかた。

英訳例:

I got a plastic factory from my father. It was a subcontractor of makers. We got materials from the makers, made components with them, and got them back to the makers. Labor cost was the only sales we made, and they were small.

The makers said they would help us because my father had died. But they didn't give us profitable business.


例2) 「要約」バージョン

父のプラスチック工場では我々はメーカー(取引先)から注文をもらっていた。しかし売上は少なかった。
父の死後、メーカーは同情してくれたが、儲かる仕事はくれなかった。

英訳例:

At my father's plastic factory, we got orders from makers. But ours sales were small.
After my father's death, the makers felt sorry for me, but they didn't give us profitable business.


例3) 「削ぎ落とし・'要するに"」バージョン

私の工場は儲からなかった。

英訳例:

My factory was not profitable.


もう1段落:
(2)「会社の強みは私の若さしかないと営業は「すべてイエス」で臨むと決めた。
納期、コスト、内容などで他社が断るような注文も積極的に引き受ける。もともと向上心や探究心強く、あれこれ考え工夫することが好きな性格なので、無理難題ほどやる気が出た。」


例4) 「わりと原文に忠実」バージョン:

私は、私の若さが会社の強みだと考えて、顧客の要求にすべてイエスと言うことを決めた。私は、納期、コスト、仕様などが難しい注文も引き受けた。私は考えてアイデアを出すのが好きだったので、難しい注文ほど喜んで取り組んだ。

英訳例:

I thought that my youth was the company's strength. I decided to say yes to any requests from the customers. I accepted orders with difficult delivery, cost, and specification. Because I liked to think and  come up with ideas, the more difficult the order was, the happier I was to
meet the challenge.


例5) 「削ぎ落とし・'要するに"」バージョン

私は若かったので、難しい注文でも全て喜んで引き受けた。

Because I was young, I was happy to accept any difficult orders.


私がここにあげた英訳例は、英語の専門家から見れば必ずしも上手い英語ではないでしょう。若干の間違いもあるかもしれません。が、ここでの目的は、内容の5割を伝えることであり、正確で上手い翻訳ではありません。


日本語の段階で要約し、切り捨て、英語になり易いやさしい日本語にすることによって、シンプルかつ趣旨が伝わる英語に出来ること、また適当な英単語が思いつかなくても、諦めずに、工夫して言い換えることで何とか同じようなことが伝えられること、が分かって頂けたらと思ったわけです。皆さんの英語発信力の向上に参考になれば幸いです。


今回も私のブログを訪れて頂きありがとうございました。