今回は、私のこれまでの経験から英語の発音について書きたいと思います。もう大昔になりますが、私の海外経験は、大学4年の時友達3人とアメリカ西海岸を中心に卒業旅行をしたのが初めてでした。残念ながら、その時書いた旅行記?はどこかに無くしてしまったのですが、サンフランシスコ、ラスベガス、グランドキャニオン、ロサンゼルスをレンタカーで回ったと記憶しています。


で、初めてアメリカで使ってみた英語の通じ具合は、内容・語彙のレベルは低かったですが、「まあまあ通じた」と思います。大学時代、クラスメートには小さい頃にアメリカに数年間住んでいた帰国子女や、高校時代にAFS (American Field Service)の異文化交流プログラムで留学した人も数人いて、その素晴らしい発音に憧れたものです。私は耳も良くなかったし、発音もうまくなかったですが、音声学の授業・教科書は英語の発音の理屈を学ぶ上で役に立ったと記憶しています。もちろん外国人や、こういう帰国子女の友達の発音を真似しようと自分なりの努力はしてみましたが。


大学を卒業して、主に海外関係の仕事に携わることになり、外国人と話す機会も段々増えていきました。今でもまだまだありますが、自分の英語が通じなかったり、また相手の言うことが聞き取れなくて、恥ずかしい思いも何度も味わいました。海外研修や駐在経験も経て、その間やはりネイティブスピーカーのしゃべり方・発音を学びつつ、段々発音も良くなってきて、今では帰国子女ではないけど外国人に英語がうまいね、と褒められる程度にはなれました。(本当にネイティブレベルであればそもそも褒めないと思います(笑)。日本人にしてはという意味でしょう。)


でも、そもそも英語の発音は日本語にない音多くあって難しいですよね。最近読んだ、同時通訳の草分けで英語教育者である鳥飼玖美子さんの「本物の英語力」(講談社現代新書)に書いてありましたが、例えば日本語の母音が5音素(あいうえお)であるのに対して、英語の母音は20音素もあるそうです。そう言われれば、「あ」に近い英語の母音は、cup, cop, cat, garden, girl などちょっと思いついただけでも違う発音記号を使う単語がいくつもありますよね。


子音でも、日本語の16音素に対し、英語では24音素あるそうでです。おまけに日本語は子音の後に必ず母音が付きますが、英語の子音は独立独歩、後に母音が付かないことも多くあります。「子音連結」といって複数の子音が母音なしに連続して並ぶ単語もあり、日本人は苦戦します。


鳥飼先生が例に挙げているのが、milkやsimple。milkは"l","k"と2つの子音がつながっていますが、日本人はつい「ミルク(mi-ru-ku)」と母音付きで発音してしまい、外国人は「??」となるそうです。simpleに至っては、"m","p","l" と3つも子音がつながっています。「シンプル(shin-pu-ru)」と日本語風に発音すると、英語では2音節なのに3音節に聞こえるし、通じないのもわかりますよね。


こんな場合にネイティブの発音のように聞こえるには、くちびると舌の形や位置をどのように連続して変化させるのか、その具体的なやり方(技術)学ぶ必要があり、上述の音声学が役に立ちます。最低限子音の後に不必要な母音を付ける日本人のくせは直さないといけないでしょう。


と、「英語の発音が難しい理由」を述べてきましたが、発音も突き詰めると深いものです。ただ、このブログの主旨である「5割出来いいから伝える」ことですから、「通じる発音」を身につけるために日本人としてやるべきことを私の経験から独断と偏見でいくつか挙げてみます。


(1) 大きな声でしゃべる(熱意を持って)

私達は、文法や単語を間違えたから、或いは単語の発音が悪いから通じないと思うことが多いですが、実は声が小さいから通じないことが多いものです。昔、アメリカで車の走っている道の両側で2人の男が会話しているのを見て、その声量に驚いたことがあります。TVの女性キャスターも、日本人の多くの女性アナウンサーと違って、低く太い声でしゃべる人がほとんどです。大きな太い声に慣れているとしたら、我々日本人の細い小さな声は聞き取りにくいのかもしれません。


コミュケーションは意思や情報の伝達、何よりも大事なのは「伝えたい」と熱意を持つこと。そうすれば自然と声も大きくなります。



(2) アクセントを意識して発音練習する

日本語は外国人が聞くと抑揚のない平板な言語に聞こえるようです。対照的に、英語は大体単語の中の一つの母音にアクセントがあり、また一つの文の中でも伝える内容によって動詞にアクセントをつけたり、代名詞を強調して発音したり、と抑揚の多い、表情豊かな言語とも言えます。


上述のmilk, simpleの例も関係があり、子音の後に不要な母音を日本語式に挟んでしまうと音節数も変わってアクセントが狂ってしまうので通じにくくなります。鳥飼先生の本にも例示されていたハンバーガーのMcDonaldは、「マック""ヌルドゥ」と"o"に強いアクセントがつき3音節ですが、日本人は平板に「ma-ku-do-na-ru-do」とアクセントなしに、しかも6音節に発音しがちですから、通じにくいのも無理ありません。


アクセントは正しい英語を聞いて覚えるのが一番ですが、単語を英和辞典で調べる時も発音記号を見て、どこにアクセントがあるのかを確認する、など常に「意識する」ことが大事だと思います。



(3) Japanese Englishでゆっくりとハッキリしゃべる

よく米国式発音は母音の後にR音を響かせるが、英国式はR音を響かせない、とか、アメリカ人はhotを「ハット」と発音するけど、イギリス人は「ホット」と言う、とか聞いたことありませんか? 私はあまり拘らなくていいと思っています。英語は世界の共通語であり、各国の人々がお国訛りの英語で日々コミュケーションしています。通じる発音の基本は押さえるべきですが、あとはJapanese Englishでいいからゆっくりとハッキリ話せばいいと思います。


ネイティブスピーカーの「英語耳」はとても良く、訛った英語への許容範囲は広いです。インド人は公用語として英語を使っていますが強い訛りがありしかもとても早口です。シンガポールの人々もSinglishと呼ばれる中国語とチャンポンでしかも語尾の音が落ちる("car park"が「カパ」に聞こえる)独特の英語を話しますが、私は今でも良く聞き取れなくて苦労します。でもネイティブの人たちは彼らの英語も苦もなく理解しているようです。アメリカ人には、他のアメリカ人の英語を聞いて「彼はオハイオ州出身だ。」等、出身州まで当ててしまう人も多く、驚いたことがあります。訛ったJapanese Englishでも、最低限の基本を外さなければ、十分理解してくれます。


日本人は先程触れた、LとRの発音・区別が苦手と言われていますが、言葉は文脈の中で理解されるものです。食事の話をしている時に、お米のことを"rice"と言う代わりに間違えて "lice"("louse(シラミ)"の複数形)と発音したとしても誰もシラミだとは思わないでしょう。


L、Rがうまく使えないなら、日本語のラリルレロでもいいと思います。アメリカ人は母音の後のR音を響かせるからと、母音など本来必要のないところでもR音を混ぜる人がいますが、かえって不自然で分かりにくいのでやめた方が良いと思います。元祖イギリス人や、オーストラリア人のR音を響かせない英語が、アメリカ人に通じるのは当たり前の話です。日本人は無理に真似しないで母音アイウエオをはっきり言うことに専念しましょう。



(4)声を出さずに音読練習をする(母音・子音を強く発音する)

日本語は抑揚がなくて平坦、単語一つ一つもあまり強く発音しませんね。ネイティブが英語を話すのを近くで聞いていると、kとかpとかch、b、vなどの子音をつばが飛びそうな位(笑)、強く発音していた印象があります。だから通じるようにするのには、アクセントの置かれる母音をハッキリ発音するのに加えて、子音も強く言う練習も大事です。


その昔、確か今でも「スマステーション」とかBS放送の「ベストヒットUSA」などのTV番組にDJとして出演している小林克也さんが、ラジオの英語教育番組(「百万人の英語」かな?)の中で言ってたと記憶しているのですが、「英文を声を出さずに音読する」練習すると良い、と言っていました。「声を出さずに音読」って矛盾して聞こえますが、要するに「声を落としてひそひそ話をするように音読する」ということです。声帯の震えない無声音で読む感じですが、こうやって英文を読むと、破裂音(p、t、kなど)とか摩擦音(s, sh, f, v, thなど)をハッキリ発音しないと自分の耳にも良く聞こえないんです。母音をハッキリ強く発音する練習にもなって、効果があると思います。私は音読の練習にもなるし、周りの人には聞こえにくく変な人に思われにくいので(笑)、今でもよくやっています。



(5) 音声学の基本を学ぶ

前述しましたが、興味のある方は音声学の基本的な教科書で英語の発音の理論・技術を学ぶことは役に立つと思います。子供が経験や感覚で言葉を覚えるのと違い、我々大人は理屈を先に学ぶ方が早いと私は思っています。鳥飼玖美子さんの前述の著書にも、日本の英語教育では、音声学の基本を教えないので、学校の英語の先生も生徒に教えられないそうです。


学生の頃習った音声学の教科書はどこかに行ってしまいましたが、ネット検索すると「初級英語音声学」や「英語音声学入門」など多くの辞書編纂にも携わった音声学の大家、竹林 滋先生による著書がいくつも出てきます。これらに拘らず、読みやすそうなもの、気に入ったもので良いですから、1冊何か読んでみることをおすすめします。



(6) 発音だけでは通じないと理解する

さて、今回発音の話をしたのも「通じる英語を5割の出来で良いから話す」というコミュケーションのためです。で、当たり前のことですが、「単語の発音が良いだけで通じる訳ではない」ということを理解しておきましょう。どんなに単語一つ一つの発音がネイティブのように素晴らしくても、語順が変だったり、文法がひどくおかしかったりすれば、通じないということ。逆に言えば、ある程度正しい文法、これまで復習した5文型に基づいた英語の語順でしゃべれば、個々の単語の発音が少々悪くても文脈も含めて相手は理解してくれます。


会社で時々見かけるのですが、英語をかなり上手に書いたり話したり出来るのに、何故か外国人と話が噛み合わない、そして相手にうまく意図が伝わっていない、という人がいます。そういう人は(技術的な)英語力が問題ではなく、英語・日本語に関わらずコミュケーションに改善の余地があるようです。例えば、why?と聞かれても、きちんとbecause... と答えない、Aを聞かれているのにBに対する答えを言って相手を「?」と戸惑わせる、結論・趣旨を分かりやすく伝えない、或いは相手の立場になって付加価値のある情報を提供しない、などです。そんなの当たり前じゃないかと思う方もいるでしょうが、我々は結構当たり前のことが出来ていなかったりするものです。


これは伝えたいことを「要するに...」と要約してまず和文和訳する、それから英語にする、という以前お話しした方法と通じます。
結局コミュケーションは総合力なんだと思います。発音はその大事な1要素であり、コツ・技術はもちろん学ぶべきですが、中身・論理思考も更に重要です。



鳥飼玖美子先生が前述の著書の中で、
「習うより慣れろ」という格言があるが、外国語学習の場合は「慣れるまで習え」、練習しないで慣れることは外国語学習にはあり得ない、と書いています。我々日本人学習者にはとても相応しいアドバイスだと思いました。文法もそうですし、発音も、例文ごと繰り返し音読し、脳に英語回路が出来る(=慣れる)まで練習するのが結局は近道です。


いかがでしょうか。自分の納得出来るもの、興味がある項目が一つでもあったら是非試してみてください。


今回も私のブログを訪れて頂きありがとうございました。