何を覚えるにしても、楽しんで学ぶことで効果が上がる、という話をよく聞きますが、私もそんな気がします。楽しいと興味が湧き、もっと知りたいと調べたり勉強する、するともっと分かるようになる、もっと楽しくなる、という好循環が生まれるのでしょう。


私は歌も楽器も下手くそですが、歌や音楽を聞くのが好きで、中学・高校と英語に興味を持ったことあってアメリカのポップスチャートのラジオ番組などで英語の歌を聞くようになりました。今でもやっているんだと思いますが、FM局で毎週末やっていた「ポップスベスト10」的な番組とか、AMでは駐日米軍向け放送局であるFEN (Far East Network、今はAFN(American Forces Network、東京近辺ではAM 810kHz)では当時ケイシー・ケイサム(Casey Kasem)がDJをやっていたAT40 ('American Top 40)を聞いた時期がありました。意味は良く分かりませんでしたが、ケイシーのトークもカッコ良く聞こえたし、英語のポップスも、日本語と違う英語独特の語感や響きに格好良さ、心地良さを感じていたんだと思います。


学習の面で、英語の歌を活用する効果としては、楽しみながら英語という外国語に慣れ親しめるということ。語感、語順、発音、リズムを体得するのに役立ちます。気に入った歌は繰り返し口ずさむようになって、前に話した繰り返し朗読と同じ効果があり、英語回路を作る助けになります。原曲のネイティブスピーカーの歌手の真似をすることになり発音の勉強にもなります。


入門者にはバラード、特にスローバラードは言葉が聴き取りやすくてオススメです。バラードはやはりラブソングが多いのですが、ベタで平易な定番表現がよく使われているのも英語学習者には参考になりますよ。


例として1曲紹介しましょう。年がばれてしまいますが(笑)、かなり昔、サラリーマンになって間もない頃に流行ったホイットニー・ヒューストンのラブバラードで、「この英語なら聞き取れる!」と覚えて口ずさんだ曲で、"All at Once" (突然に) という歌です。歌詞も一部付けてみます。


WHITNEY HOUSTON
ALL AT ONCE
作詞:Michael Masse
作曲:Jeffrey Osborn

All at once
I finally took a moment and I'm realizing that 
You're not coming back
And it finally hit me
All at once

All at once
I started counting teardrops and at least a million fell
My eyes began to swell
And all my dreams were shattered
All at once

Ever since I met you
You're the only love I've known
And I can't forget you
So I must face it all alone

All at once
I'm drifting on a lonely sea
Wishing you'd come back to me
And that's all that matters now
All at once
I'm drifting on a lonely sea
Holding on to memories
And it hurts me more than you know
So much more than it shows
All at once

All at once
I looked around and found
that you were with another one
In someone else's arms
And all my dreams were shattered
All at once

All at once
The smile that used to greet me
brightened someone else's day
She took your smile away
And left me with just memories
All at once

Ever since I met you
You're the only love I've known
And I can't forget you
So I must face it all alone

All at once
I'm drifting on a lonely sea
Wishing you'd come back to me
And that's all that matters now
All at once
I'm drifting on a lonely sea
Holding on to memories
And it hurts me more than you know
So much more than it shows
All at once


とてもやさしい、分かりやすい英語で突然失恋しちゃった悲しみを切々と歌ったラブソングですね。ホイットニーは残念ながら数年前に若くして他界してしまいましたが、改めて素晴らしい声で上手なシンガーだったと思います。歌詞を見て分かる通り、感情に訴えるラブソングには長くて難しいいわゆるbig wordは使われていません。中学校で習うようなtake, come, start, begin 等、短くて良く会話に使われる基本的単語・熟語しか使われていません。


1文1文もとても短く、主語(S)・動詞(V)・目的語(O)・補語(C)が明確な教科書通りの5文型がきちっと使われています。外国人である我々はこういうシンプルな英語を自分がしゃべる時の参考にすればいいんだと思います。


歌詞の中からいくつか表現を拾って見てみましょう。


"and I'm realizing that
You're not coming back"


現在進行形になっていますが、I(S)+am realizing(V) + that以下(O)、と第3文型になってます。「私は、that以下を、悟り(理解)しつつある」という意味ですね。で、従属節のthat you're not coming back はこれまた現在進行形ですが、未来を表してます、「もうあなたは帰って来ない」と。


現在進行形は、現在一時的にやっていることを表すのが基本ですが、goとかcome 、leave、arriveとか、「往来」を表す動詞の場合, という未来・予定を表すことが出来ます。基本はbe going to go/come/leave/arriveですが、be going/coming/leaving/arrivingと進行形で言っても同じ意味になるということで、良く使われます。



I started counting teardrops and at least a million fell
My eyes began to swell


最初の文はI (S)+started(V)+counting (O)という第三文型ですね。目的語(O)には動名詞が使われています。ここでstarted to countと不定詞の名詞的用法を使っても「数えることを始めた」「数え始めた」というほぼ同じ意味ですね。(ちなみにstop smokingは「タバコを吸うのやめる」、stop to smokeは「立ち止まってタバコ吸う」、と全然違う意味になります。)


「私は涙の粒を数え始めた。」という情感溢れる表現、そしてat least a million fell「(数えたら)少なくとも百万粒落ちた。」と続きます。これはa million(S) + fell(V) と第一文型ですね。涙の粒も数えられないし、百万粒も大袈裟ですが、沢山あることを表すのにアメリカ人が良く使いますね。でもベタな表現ですが、短い文で悲しい気持ちをとても効果的に表しています。


次のMy eyes began to swellで「(泣きはらして)目が腫れ始めた。」とこれまた短い文で具体的情景を伝え、悲しみを表現しています。文法的にはMy eyes(S) + began(V) + to swell(O) と不定詞を目的語にした第3文型ですね。begin ~ingと動名詞でも、begin to doと不定詞でも、「~し始める」とstartと同様意味は変わりません。基本的で便利な表現ですから使ってみましょう。



I'm drifting on a lonely sea
Wishing you'd come back to me


ここもまた現在進行形が使われています。習慣や自然の法則・事実は現在形、今一時的に行なっている動作や行為は現在進行形です。I(S)+am drifting(V)の第1文型。「私は孤独な海の上を漂っているところです。」と比喩を使っていますが、日本語でも言いそうな表現ですね。Wishing以下は現在進行形と考えても問題ないと思いますが、多分文法的には前の文(或いはam drifting)を副詞的に修飾する分詞構文というやつなんでしょう。とにかく「that 以下を願いながら」という意味で、便利な表現です。


以前、仮定法を勉強しましたが、仮定法過去というのは「現在の事実」と反対のことを仮定して言う場合に使われます。If I were a bird, I could fly in the sky. (もし私が鳥だったら、空を飛べただろうに。) = As I am not a bird, I cannot fly in the sky. (私は鳥ではないので、空を飛べない。)  この応用で、I wish I could fly in the sky. (空を飛べたらいいのに(現実は飛べない))という表現があります。この歌詞のWishing you'd come back to meはWishing you would come back to meの短縮形で仮定法過去、「(現実には私の元へ帰って来ないのに)帰って来たら良いのに、と願いながら」という意味ですね。



I looked around and found
that you were with another one
In someone else's arms


最初は I (S) + looked around (V) (第1文型)、次はand (Iは省略)(S)+ found (V) +  that以下(O)の第3文型ですね。「私は見回した、そして(私は)that以下を見つけた」、that以下が辛い光景ですね、「あなたが他の人と一緒にいた、(私以外の)誰か他の人の腕に抱かれて。」と。ここでもyou (S) + were (V) という第2文型、シンプルかつ分かりやすい表現ですね。



The smile that used to greet me
brightened someone else's day

ここも悲しいくだり。この文の骨組みは The smile (S) + brightened (V) + someone else's day (O) で、「微笑が、誰か他の人の日(日常)を、明るくした。」と無生物主語になっています。主語であるsmileを先行詞にして関係代名詞thati以下の節(S(that)+V(used to greet)+O(me))で「以前私に挨拶して/私を迎えてくれたその微笑みが」今は他人の日常を明るくしていた、と補足説明しています。used to doは「かつて~したものだった」という過去の習慣を表す良く使われる表現です。使ってみましょう。



She took your smile away
And left me with just memories
All at once


Take ~awayで「~を取り上げる、持ち去る、連れて行く、(食事などを)持ち帰る(=take out)」などのの意味があります。熟語として覚えなくても、awayが「ある場所から離れて遠くに」というイメージを持っていることを思えておけば意味はとれると思います。ちなみに「遠くに」という距離感がなく、「離れて」だけのイメージであればoffが使われます(take-off 離陸 など)。


歌詞に戻ると、ほかの誰か(she)が元カレの微笑(your smile)を自分から奪って遠くに持って行ってしまった、という意味ですね。


次の文にあるleave(leftは過去形) は、「出発する、去る、~を離れる」という意味に加え、目的語とる他動詞で「~を残す、放っておく」という意味もあります。これに付帯状況(「~という状態で」、など)を表すwithが付いているという構成。left me with just memories  all at onceで「(新しい元カレの彼女が)私を残していった、記憶/思い出だけがある状態で、突然に」「突然に思い出だけを残して私を置き去りにした」というような意味です。



実際に聴いてみると、ホイットニーが口を大きく開けてとてもハッキリ、語尾の子音も発音しているのを聞いて、ネイティヴの英語はこんなに子音を強く発音するんだ、と感じます。


英語学習的視点で色々と書きましたが、もっと大事なことは、いい歌なので何度も聞いて、口ずさんで、楽しんで下さい、ということです。その結果として皆さんの脳の英語回路が強化されると思います。


今回も私のブログを訪れていただき、ありがとうございました。