さて前回ホイットニー・ヒューストンの"All at Once"というバラードの歌詞を紹介しました。私も久しぶりに歌詞を読み歌を聞いて楽しかったので、調子に乗ってもう一つ紹介しましょう。これはホイットニーから更に時代を遡って1970年代に人気のあった兄妹デュオ、Carpentersの"Only Yesterday"という歌です。


ビートルズが典型ですが、何十年も前にヒットした歌が皆に愛されて、リバイバルしてドラマのテーマソングに使われたり、別のアーティストがカバーしたり、世代を超えてスタンダードになることがありますね。カーペンターズの歌もそうだと思います。もっとポピュラーな曲がある中でこれは若干渋めの選曲だったかもしれませんが、聞いたことがある方も多いのでは?


CARPENTERS
ONLY YESTERDAY
作詞:John Bettis
作曲:Richard Carpenter

After long enough of being alone
Everyone must face
Their share of loneliness
In my own time nobody knew
The pain I was goin' through
And waitin' was all my heart could do

Hope was all I had until you came
Maybe you can't see
How much you mean to me
You were the dawn breaking the night
The promise of morning light
Filling the world surrounding me
When I hold you

Baby, Baby
Feels like maybe things will be all right
Baby, Baby
Your love's made me
Free as a song singin' forever

Only yesterday when I was sad
And I was lonely
You showed me the way to leave
The past and all it's tears behind me
Tomorrow may be even brighter than today
Since I threw my sadness away
Only yesterday


All at Onceは、悲しい失恋ソングでしたが、これは孤独で寂しい年月を過ごした主人公が新しい恋を見つけ希望に満ちた心境を歌った歌ですね。

この歌も習ってきた語法・文法がかなりきちっと使われていますし、良く使われる英語らしい表現も満載です。また歌詞を見ていきましょう。


After long enough of being alone

ちょっと我々日本人には使い慣れない表現ですが、Afterは名詞の前に置かれて「〜の後に」という意味を表す前置詞で、この例ではlong enoughという名詞句の前に来ています。enough(十分な)という形容詞は名詞の前だけでなくこのように後ろついても修飾できる言葉です。longは「長い間」=long timeという意味の名詞ですね。「長い」という形容詞で使うことが多いですが。after long enoughで「十分に長い間の後に」です。

その後に同格・補足説明の前置詞ofが来ていて、当然前置詞の後には名詞・名詞相当の言葉が来ます。この文ではbeing aloneという動名詞(動詞を名詞にする時に便利な用法)が来てlong enoughを補足しています。合わせると、「1人きりでいる長すぎる時間の後で」「本当に長い間1人でいた後は」というような意味でしょう。


Everyone must face
Their share of loneliness

faceは名詞では「顔」ですが、動詞で使われると「向き合う」「直面する」という意味になります。"Let's face the reality." (「現実を直視しよう。」)などと使います。everyoneは単数扱いなのでtheir shareは文法的にはhisかherが正しいのでしょうが、男も女も含めて言いたいのでtheirを使っています。「(長い間1人でいると)誰もがそれぞれの『孤独の割り当て』に向き合わなければならない。」というとても英語らしい表現です。まあこなれた日本語では「誰もが孤独を味あわなければならない。」ってとこでしょうか。


その後「(私が1人で時間を過ごしている時に)私が経験していた痛みを誰も知らなかった。」と続きます。

nobody knew
The pain I was goin' through

Nobody(S) + knew(V) + the pain(O) という第3文型ですね。the painという目的語を目的格の関係代名詞節 (which) I was going through (過去進行形)で説明しています。 go through は「物理的にトンネルなどの中をくぐる/通り抜ける」という意味から派生して「経験する」「体験する」という意味になります。"goin'"は goingが実際の会話では最後のgの音が落ちることが多く、歌詞や小説の会話文ではこのように発音通りに綴られるようです。


And waitin' was all my heart could do

waitin'は同様にwaitingを発音通りに綴ったもの、動名詞で「待つということ」のいみですね。英語には5つの文型があると以前勉強しましたが、さらに大雑把に分けると(A)「誰/何が〜である」(SVC 第2文型  S = C)か、(B)「誰/何が、〜を・・・する」(SVO   第3文型)、のどちらかとも言えます。このフレーズは(A)です。waitin'(S) was(V ,=) all(C) という骨組みで、allを(that)my heart could doと関係代名詞節で説明していて、「待つことが、私の心がすることが出来た全てだった」「待つことだけしか(私の心は)出来なかった。」という意味になります。

「all (that) S + V」はとても英語らしくて応用が効く表現なので覚えておきましょう。This is all I know.  (これが私の知っている全てです。)  All you have to do is (to) follow the red line. (あなたがしなければならないことは、赤い線をたどって歩くだけです。)など、色々使えます。


Hope was all I had until you came

このフレーズも全く同じ構文ですね。(A) 第2文型(SVC)で、Hope(S) was (V,"=") all(C)が骨組みです。allという(補語)を先行詞として(that) I had という関係代名詞節で説明しています。「希望が私が持っていた全てのものであった」「希望だけしか持っていなかった」となります。until you came 「あなたが来た(現れた)時まで(ずっと)」と説明が加わっています。


Maybe you can't see
How much you mean to me

このseeは"I see."などで使われる「分かる、理解する」という意味ですね。how much以下の名詞節がO(目的語)になっているSVO 第3文型です。how much you mean to meはスピーチや手紙などで人に感謝したり評価したりする際にとても良く使われる定番表現で「あなたの存在が私にとってどれだけ大きな意味を持っているか」というような意味ですね。全部合わせて「多分あなたは、あなたが私にとってどれだけ大切な存在分からないだろうけど」という感じでしょうか。


You were the dawn breaking the night
The promise of morning light

これはまた第2文型 SVC、You(S) were(V) the dawn(C)  でS=Cですから、「 あなたは(私にとって)夜明けだった。」という比喩表現ですね。それに続く"breaking the night"は、文法的にはthe dawnを修飾、the dawn which was breaking the nightのwhich wasが省略されていると考えて、「夜を中断しつつあった/終わらせようとしていた夜明け」という意味だと思います。

the promise of ...も、the dawnと並列のC(補語)で、「(あなたは)朝の光の約束だった/朝の光がやって来るという約束だった。」となります。"Filling the world surrounding me"はその前のmorning lightを修飾していますが、ここもwhich wasが省略されていると解釈していいと思います。「(あなたは)私を取り囲んでいる世界を満たしつつある(朝の光の約束だった)」という感じです。


When I hold you

Baby, Baby
Feels like maybe things will be all right

"baby"は男女問わず家族、恋人など愛する人を呼ぶ際に親しみを込めて使う呼称のようです。「あなたを抱きしめると(when I hold you)」、"feels like..."は天気、時刻、漠然とした状況・状態を表す主語の"it"が省略されていますが、「...のような気がする」という意味の便利な表現です。 

"things will be all right"はポジティブで前向きな発言を好むアメリカ人がとても頻繁に使いますが、「物事は大丈夫だろう」「万事OKになる、問題ない」という意味で、"things"の代わりに単数形の"everything"を使うことも非常に多いです。「ベイビー、あなたを抱きしめると、多分すべてが大丈夫、問題ない、という気がするわ。」という感じ。

ここbabyとmaybeは母音が「エイ・イー」と同じで、韻を踏んでいます。結構英語の歌詞には多いようです。


Baby, Baby
Your love's made me
Free as a song singin' forever

Your love(S) + has made(V) + me(O) + free(C) で、使役のmake(〜を...にする/させる)を使った第5文型です。「あなたの愛が私を自由にした」、どういう"free"かと言うと(as) free as a song (which is) singin' forever「永遠に歌っている/歌い続ける歌と同じように/歌のように」と説明しています。

ここでもbabyとmade meの母音が「エイ・イー」と同じで韻を踏んでいるのに気がついたでしょうか。ゴロが良く、リズム感が出て心地よいと思いませんか? 


ここからサビですが、

Only yesterday when I was sad
And I was lonely

「つい昨日(まで)は」、どういう時だったかというと、「私が悲しく孤独だった時」


You showed me the way to leave
The past and all it's tears behind me

主文はS+V+O+Oと目的語を2つ(誰々に、何々を)とる第4文型です。giveとかteach, tell, showなど限られた動詞で使われますね。「あなたが私に道(方法)を見せてくれた」という意味です。the way(方法、やり方)をto leave the past and all it's tears behind me、とto不定詞の形容詞的用法で説明しています。leave 〜 behind ...で「〜を...の後ろに置き去る」という意味です。合わせると「過去とその(=過去の)全ての涙を私の後ろに置き去る方法をあなたは私に示してくれた」という感じです。

ちなみにall it's tearsは間違いで、all its tearsが正しいですね。it'sは"it is"の省略形、itsは「それの」という所有格ですから、ここは「過去の全ての涙」で後者です。どこかで転記ミスがあったんでしょう。発音が同じなのでメールなどでもアメリカ人はしょっちゅう間違えますので、安心して下さい(笑)。


Tomorrow may be even brighter than today

"may"は「かもしれない」という推量の助動詞でしたね。"even"は比較級の形容詞を強調する副詞、「明日は今日よりもさらに(より)明るい(brighter)かもしれない」という意味になります。

何故かというと、理由が次の "since"以下に書いてあり、

Since I threw my sadness away
Only yesterday

「(何故なら)私は悲しみを投げ捨てたから、つい昨日のことだけど」という感じだと思います。"since"という接続詞はここでは"because"と大体同義の「なぜなら〜だから」の意で使われています。sinceは他に継続を表す現在完了形等と共に使われて「〜以来(今まで...し続けて来た)」という意味でも良く使われますので覚えておきましょう。


結局、一番の歌詞のほとんどを解説してしまいました(笑)。長くてここまで読んでくれる方は少数派でしょうか。振り返ると英会話で良く使われる便利な表現が盛り沢山でしたね。おもしろいもので、こうやって一つ一つ意味を確かめながら歌詞を勉強した後、歌を口ずさんでみたら結構スラスラと歌えました。考えてみれば、記憶力が悪い私は丸暗記が苦手で、むしろ意味を理解して覚える、という方法をとってきたかもしれません。


改めてこの歌を聴いて、懐かしく、いい歌だなと思いました。カレン・カーペンターの低音とはっきりした小気味良い発音が耳に心地よいですね。お兄さんにリチャード・カーペンターとのハーモニーも素晴らしい。


皆さんも好きなスタンダードやバラードを見つけて、意味を理解し、口ずさんでみて下さい。英語の会話、発音の勉強にも役立つし、英語回路が発達しますよ。


今回も私のブログを訪れて頂きありがとうございました。