Play boy 2000.6月号
撮・竹中直人×女優・鶴田真由
・口上
真の女優とじっくり論議して撮影したい(彼女は何をどう撮られたいのか)。
それを呑み込んだ上で予想外の写真を撮ってくれる写真家と仕事がしたい(打ち合わせの時点であがりが見える人とは組みたくない)。
そんな夢想をしているとき、竹中直人との出会いがあった。
・佐渡物語
第一回の女優は誰にしようか。あれこれ思い悩んでいる某日、夜九時に電話が鳴った。「今、ドラマの撮影で佐渡島に来ているんです。共演者が鶴田真由さんなんですが、撮影オーケーということになりました。いろいろと話し合ったんですが、「昼下がりの情事」の線で行こうと。ラストシーンの別れの駅のイメージなんです。男と女の束の間の逢瀬を表現できたらなぁ、なんて思ってるんですがね。場所は東京ステーションホテルという感じですか。窓辺に一輪挿しなんかがあったら最高ですね」
言わずと知れた、ビリー・ワイルダー監督、ゲーリー・クーパーそしてオードリー・ヘップバーン主演の名作だ。 人見知りするのか、ぼそぼそと呟くような声だったが妙に説得力があり、つかみどころがなく、一瞬虚をつかれた。
・どんでんかえし
二人の過密なスケジュールを擦り合わせがあり、ようやく撮影日が決まった。場所は望みの通りとはいかなかった。 都内某所。まぁ、怪人・江戸川乱歩が徘徊しているような雰囲気の一軒家を想像してもらえばいい。急遽、設定変更である。
鶴田「これだったら、狂女を演じたらどうかしら」
竹中「インド人とか中国人のお手伝いさんなんかも面白いかも。アンティックな鏡を跨いで貰って、それを上から俯瞰で撮ってもいいかな」
そんな丁々発止の掛け合いが続き、とにもかくにも、8×10(エイト・バイ・テン)のポラロイドで撮影は決行された。
・大団円
竹中の写真家初挑戦は、休み無しの八時間で幕を閉じた。感想を一言ずつ。
鶴田「何度も、もう止めて!と思ったけど、映画と思えば楽しかったです」
竹中「カメラマンは一瞬を捉えなければいけないし、難しいよ。一コマの映画を撮るつもりで迫ってみたよ。