オッペンハイマーみてきたよ ② | 舞姫の「世界が面白いじゃんね」

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詩人ですが、アニメも、映画も、岡田斗司夫も、絵画も、建物も、怪談も好きなヲタクのブツブツブログ。

 

オッペンハイマー、見てきました

の続きです。

 

昨日は大筋について触れたのだが

今日はディテールについて私が気になったことを

書いていきたいと思う

 

 

1930年代の大学キャンパスにどのくらいの物理学専攻の女性がいたのかはわからないが、

視界の割と目立つ場所に

女性が配されていたということ。


これがまず心に残った。


もちろん嘘は描けないだろうが、

あまりに画面が男性の物理学者や数学者で埋め尽くされると

「やはり理系は男性」という無意識の刷り込みが発生してくると思う。

ノーラン監督にも娘さんがおり

「インターステラー」という前々作の映画でも

原作と違って父の宇宙への憧れという意志を継ぐのは息子ではなく、

娘という設定になっていた。

女性が理系の研究分野にいるということも、

しっかり描いておきたかったのでないだろうか。

実際オッペンハイマーの奥さんは生物学者で

結婚と同時にキャリアをあきらめざるを得ず

不満はもちろん精神的に不安定になっている様子も描かれ

「今でもこれは変わらない部分があるな」と思わされる場面があった。

 

それから

情熱的な恋人とのエロティックなシーンについてである。

彼女の勝ち気で強い性格を表すためなのかもしれないが

いつも彼女が「上」なのである。

美しい裸体を惜しげもなく見せつけ

むしろオッペンハイマーから奪っていくような

彼女のスタイルは、

媚びがない女のパワーを感じさせていた。

行為そのものを描いているのに、

エロスというよりも「身体を使って遊ぶ」という感じで

興味深く思われた。

 

対比として面白く感じられたのは

荒野と密室である。


オッペンハイマーの故郷としての広々とした荒野。

そして、核爆弾の開発のための広い土地のなかの街。

それらと、オッペンハイマーが詰問される密室の人口密度の高さと言ったら!

観客は解放と拘束を交互に味わう。

さらに時間軸が行ったり来たりするのである。

それだけではない。

今回はそこに主となる視点の切り替えも盛り込まれている。

どんどん縦糸と横糸が織られ布地ができていくように

ラストへと向かってゆく。

その重厚さはぜひ体験してほしいと思う。

 

ほかにも光と音の炸裂は一回の爆発だけではなく

所々で印象を残しているが

その映像効果はとても素晴らしいものだった。

 

というわけで

彼の初期作である「メメント」からずっと

時間軸の操作というものはテーマとしてあるが

今回は集大成のような作品であった。

(「メメント」は因果関係が逆に流れる極めて不思議な作品なので、地味ですが推します!)

 

ご興味のある方はぜひ上映が終わってしまう前に

急いで映画館へいらしてくださいねランニングランニングランニング💨