先月末、和歌山を訪れた。世界遺産の熊野古道を歩くツアーに女房と参加した。熊野古道も堪能したが、予想外に圧倒的だったのは、訪れた前夜から降り続く大雨で、とんでもなく雨量を増した那智の滝だった。
以上は、私が勝手におおげさに言っているのではなく、ツアーを案内してくれた地元のガイドさんによれば、「こんな、とんでもなく勢いのある滝」は、五年前に見たきりなんだそう。その時は、警報が出てしまってガイドは中止。二度とはないチャンスかと思って、ぽつんとひとりで、荒れ狂う滝の動画をスマホで撮っていたとのこと。
ということは、今回も、もっと天気が荒れるかしたら、ここまでは来れなかったわけで、そういう意味ではラッキーなんでしょうが、私のツアーのメンバーも、集まった観光客も、上からの大雨と滝から容赦なく吹きつける「シャワー」で、傘もカッパ
も役に立たず、びしょびしょ。山の天気をナメて軽装だった私なんかは、完全にずぶ濡れで、この後、近くの土産物屋で「KODO」のロゴをデザインした、インバウンド客むけのTシャツを購入して、着替えた。
実は、那智の滝を訪れるのは、これで三度め。最初は、はるか40年以上も前、就職してすぐの、まだ独身のころ。当時、関西に住んでいた兄を訪ねた帰途、和歌山を一周した時。八月のはじめで暑く、山と海しかない和歌山を、ローカル列車とバスでまわった旅は、想像以上に酷だった。ふもとの駅から、一日に何本も出ないバスで登っていき、いきなり山中から滝が「出現」したときは、感動した。とにかく暑かったので、滝から吹き付ける水煙は、冷たいシャワーのようで、爽快だった。この滝に「神」を見て、崇め、山深い山中に神社を建立した古人の気持ちが実感できた気がした。
下の写真は、遠く青岸渡寺から見た三重塔と滝で、本当に絵にかいたような絶景。今回は、桜が満開で、全体が雨にかすむ様は、それはそれで美しかった。記憶にあった那智の滝は、このイメージ。
二度めは、息子と。コロナのころで、ふたりでレンタカーで山陰を回ろうとしていたのを断念して、伊勢と和歌山を巡るツアーに参加した。ツアーですんなりと滝に到着して、ふたりで滝を見上げて、「まさか息子とまたここに来るなんて...」と感慨にふけっていた。
三度めの今回は、女房の熊野古道を歩いてみたいという希望に沿ったもので、「今度は妻とここに来たか...」と感慨にふける予定だったが、荒れ狂う滝は、そんな老人の感傷などは吹き飛ばしてしまった。そういえば、帰宅して息子に那智の滝の話をしても、ほとんどろくに覚えていなかった...
大粒の雨と、滝の水しぶきにずぶ濡れになって、茫然と立ち尽くしていた。何か、滝が「過去」を吹き飛ばして、人生が「リセット」されたような不思議な瞬間だった。大自然の「絶景」を前に立ち尽くす、老年の自分。
さて、那智の滝の印象があまりに強烈だったので、付け足しのようになってしまうが、三日間のツアーで、二日めは、いち日熊野古道を歩いた。那智の滝を訪れた三日めは、お話しした通り、ひどい雨になってしまったが、熊野古道を歩いた日は、暑からず寒からず、ハイキングには絶好の気候だった。
ちょうど、どこも桜が満開で、上の写真は、熊野本宮大社の旧社地、大斎原(おおゆのはら)の大鳥居。桜とのコラボレーションが見事。
大自然に心なごみ、癒され、そしてまた、その厳しいまでの神々しさにうたれた旅でした。





