Webマーケティングの基本概念である「プロダクトアウト」・「マーケットイン」を、ご存知でしょうか。

 

単純に「プロダクトありき」「マーケット(ユーザーニーズ)ありき」という認識になりそうですが、実際は単純に区別できるものではありません。なんとなく理解したつもりになってしまいがちな「プロダクトアウト」・「マーケットイン」について解説します。「プロダクトアウト」「マーケットイン」について全く知らなかったという方も、自信を持って答えれるないという方もしっかり理解しておきましょう。

 

○プロダクトアウトとは

プロダクトアウトの一般的な定義は、会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うことを指します。プロダクトを作ってから、どのように販売していくかを考えるスタイルです。

 

○ マーケットインとは

マーケットインの一般的な定義は、プロダクトアウトとは反対に顧客の意見・ニーズを汲みとって製品開発を行うことを指します。モノを作れば売れる時代ではなくなり、競合と簡単に比較されてしまう今、「プロダクトアウト」は時代遅れな考え方であり、いかに「マーケットイン」の概念に基づき、顧客の満足度を高められるかどうかを重視するべきだという風潮が強まっています。

 

○ 今の時代はプロダクトアウトよりマーケットイン?

2013年、SONYはスマートフォンに外付けするタイプのレンズ型カメラを発売しました。その製品に対し、経営コンサルタントであり起業家の大前研一氏は「ユーザーのニーズを無視し、技術ありきで製品開発したプロダクトアウトの会社」だと批判しています。このケースを見ると、「プロダクトアウトはユーザーのニーズを考えない企業がやること。そうではなくユーザーを優先したマーケットインを行うべき」という風に捉えることができます。

実際、「プロダクトアウトからマーケットインへ」という論調は一時期声高に叫ばれていましたが、果たして本当にプロダクトアウトは悪なのでしょうか。プロダクトアウトの代表的な企業としては、先に例で挙げたSONYや、世界的大企業であるAppleなどが挙げられます。時代を変える革新的なプロダクトを制作する企業はほとんどが「プロダクトアウト」タイプに分類できます。これらの製品は従来なかった製品であり、ユーザーに意見を聞いても作れるものではありません。プロダクトアウトは悪かというと、決してそんなことはないのです。

 

 

○ プロダクトアウトもマーケットインも、根底には「ユーザーニーズ」がある

「顧客のニーズを無視して企業側の意志のみに基づいて製品開発が行われる」というのは、継続不可能なモデルではないでしょうか。それはプロダクトアウトではなく、ただ「企業の思い込みで作るもの」であり、マーケティングを介さずに開発に乗り込んでしまっている状態です。「マーケットインは顕在化した顧客のニーズに、プロダクトアウトは潜在的な顧客のニーズに対してアプローチするもの」という論を展開しています。

 

○ マーケットインとプロダクトアウトは対比されるものではない

マーケットインもプロダクトアウトも、どちらもユーザーのニーズをベースにしていると考えた場合、「マーケットイン/プロダクトアウト」と対比するようなかたちで語るのは果たして適切なのでしょうか。マーケットインを徹底し、ユーザーのニーズ調査をしても、必ずしもヒットする商品を開発できるとは限りません。逆に、革新性と独自性を求めすぎたプロダクトアウト展開では、ヒットするかどうかは運次第というレベルになってしまいます。商品は、顧客に「選ばれる」ことが重要です。マーケットインか、プロダクトアウトかというのはそこへ到達するための手段でしかありません。

 

そもそも、マーケティングにおいて最も重要なのは「顧客」です。

マーケティング用語である「プロダクトアウト」が「顧客」を無視して製品開発する、という風に解釈されてしまうのはよく考えるとおかしなことなのかもしれません。顧客の、自分自身も気づいていないような潜在ニーズを掘り起こすという意味では、プロダクトアウトの方が難易度は非常に高いでしょう。しかし、顧客に驚きと感動を与えられるのも成功したプロダクトアウトの製品に多く見られる特徴です。

マーケットインもプロダクトアウトも、社会に必要な概念です。まずは誰が顧客なのかを見極め、彼らのニーズを聞き出すことです。ただ「マーケットインとプロダクトアウトは対比されるものではない」で紹介した記事にもあったとおり「意見を聞く」のと「ニーズを知る」のは似て非なるものです。営業にも通じるところだと思いますが、単なる御用聞きで終わるのではなく、顧客の真のニーズを洗い出す工夫が必要です。