上野の国立科学博物館に常設展示されている恐竜の看板標本と言えば
トリケラトプスのレイモンドなのですが
他にも世界レベルの標本があります。
その一つがパキケファロサウルス・ワイオミンゲンシスのNMNS PV20424標本
通称サンディです。


以前は2体のパキケファロサウルスのキャストレプリカ標本が展示されていましたが
リニューアルに伴い現在の実物化石標本サンディに変えられました。

このサンディ標本、白い部分はアーティファクトで
観るにはとても解りやすいです。
一見すると実物部分が半分程度で、あまり大した標本には見えませんが
実は大変貴重な標本なのです。
というのも、パキケファロサウルスは厚頭竜を代表する恐竜ですが
良好な標本というのが少ない恐竜なのです。
その殆んどが、頭骨の部分標本で
模式標本であるAMNH 1696ですら頭骨だけの標本なのです。


そんな中、このサンディは身体の多くの部分が残っており
現在世界最優良のパキケファロサウルスの全身骨格標本なのです。
サンディは1994年6月にサウスダコタ州のヘル・クリーク累層で発見されました。
パキケファロサウルスとしては、世界初の頭骨と体骨格が残っていた
(全身の約50%が完全とされています。であるならば、現在世界唯一のパキケファロサウルスの完標本と言えるでしょう。)
とても貴重な、そして歴史的な標本なのです。
本来アメリカ国外に出る(売却される)様な化石標本ではありません。

このサンディは外鼻孔の背側の縁が初めて判明した標本であり
このサンディの発見により、それまで推測されていた前上顎骨の形が誤りであった事が明らかになりました。
このサンディの脊椎の関節を詳しく解析した結果
パキケファロサウルスがそれまでの直立姿勢から、ヤジロベーの様な水平姿勢である事が確実視されました。

このサンディ、AMNH 1696とは後頭部のスパイクの形が異なります。
これがスパイキーと呼ばれる由縁で、これが性差を示しているのか
それとも成長差なのか、種の違いなのかは不明です。
スティギモロクとの関係を指摘する意見もあります。

しかしながらこのサンディ標本、未だ詳しい研究が行われておらず
詳細な記載が待たれる標本です。
厚頭竜を専門とする恐竜学者は少なく、研究資料も多くは無く、色々と難しいのかも知れませんが
科博には是非このサンディの研究を頑張ってもらいたいものです。

もっと詳細な骨格図が現在絶賛発売中の『新恐竜骨格図集』(イースト・プレス社発行)に載ってます。
素晴らしい恐竜の専門書なので、上級の恐竜マニアにお薦めです。


現在世界各国の博物館に展示されているパキケファロサウルスの全身骨格マウントは、その殆んどがこのサンディのキャストレプリカ標本です。
例えば、カーネギー自然史博物館やバーピー自然史博物館等のパキケファロサウルスのマウントも、このサンディのレプリカです。
そんな世界レベルの貴重なメジャー恐竜の実物標本が観れるのですから
皆さん科博の常設展示ではこのサンディ標本はお見逃しなく
是非じっくりご覧下さい。