アンテナショップの昨日・今日・明日
池袋にある、宮城県のアンテナショップが来年2月の、賃貸借の契約満了の時点で閉鎖する、という情報。
同店は2005年にオープンして、約18年間営業を続けてきている。
毎年、県として1億2千万円の支出超過になっている、という説明。
これについて、サンドウィッチマンの伊達みきおは「俺の中では大ニュース。ショックだよ。― 中略 ― 天下の宮城県がアンテナショップがないのは駄目ですよ」と語る。
複数の視点で言及できるが。
東京には多くの道府県のアンテナショップが開業している。
隣接する千葉、神奈川、埼玉のショップは元々ないし、群馬も銀座から撤退している。
以前は有楽町の交通会館にあった、静岡、大阪のショップも撤退している。
八重洲にあった京都のアンテナショップも、だいぶ前に撤退している。
個々の事情は大きく違うはず。
例えば、京都は別格のブランド力があるので、東京にショップを展開するメリットが乏しいと推測できる。
費用対効果として弱いという考察である。
整合性や合理性に否定する要素はない。
因みに東北地方は宮城以外は全て、都内にショップがある。
青森は飯田橋、岩手は銀座、秋田は有楽町、山形は銀座、福島は日本橋である。
毎年の1億2千万円という財政負担をどう捉えるか。
完全な独立採算は無理だから、一定の支出は県として止むを得ない、と受け止めるのか。
上記の1億2千万円の具体的な内訳が分からないが。
固定資産税と光熱水費・通信費は県負担でも妥当であり、不当とは言えないだろう。
1億2千万円のうちに、人件費の一部が含まれているのであれば、それは検討を要するかもしれない。
ただし、帳簿上の数字に表れない、プラスの影響も無視してはならない。
アンテナショップは実店舗であり、現下のデジタル万能・デジタル全盛の時代に実効は乏しい、という解釈もあるだろう。
しかし、これからの極度の少子高齢化の時代に、地方は人口減少に伴うマンパワーの衰亡と枯渇に直面することは確実と言える。
その対策が喫緊の命題であることに疑問の余地はない。
そのためにも、有形無形の発信を間断なく実践する必要がある。
これからは物販以外の機能を持たせることも考えるべき時期と言える。
その拠点としてのアンテナショップの存在は肯定しても間違いではないと捉える。
因みに全ての県事務所が都内にあるが、職員が充分に広報としての力を発揮しているとは思えない。
各事務所は飽くまでも、大口の業者・顧客や全体的な戦略の構築は行うが、移住を希望する個人まで具体的な対応をしていないケースが大半と推察する。
この辺りの意識を変革していかないと、公務員だから営業スマイルは不要という心理と観念では、東京の水と空気に馴染んで終わりになってしまうだろう。
東京と田舎を比較したら、一長一短である。
東京は遊興・娯楽施設は多いし、刺激も絶えることがない。
熊も出没しないし、マダニやスズメバチに刺される心配もほぼゼロだろう。
退屈しない代わりに、多忙で長時間労働で心身が疲弊する。
友人や同僚との距離感も、つかみづらいだろう。
東京砂漠である。
地方の美点や長所を周知するための拠点としての効用も捉えると、一定の赤字も許容範囲ではないか。
あとは個々の県の実情及びシミュレーションに基き、判断決断するしかないが。
ショップが減少傾向であることは否めない。
ここにも勝ち組と負け組の構図があるとは思いたくないが。