ビルの記憶を辿る時間旅行 | 硝子の中年のブログ

ビルの記憶を辿る時間旅行

  昨日、NHKで新しい番組がスタートした。

タイトルは「すこぶるあがるビル」

進行役はアンガールズの田中卓志とフリーアナの宇賀なつみ。

ナレーターに高橋克実。

1回目の探訪は有楽町のよみうり会館。

元のそごう百貨店である。

  この建物は1957年に竣工。

設計は村野藤吾。

浅学のため、全く知らなかった。

1891年佐賀県の生まれで、1984年に逝去。

享年93歳。

早稲田大学卒。

文化勲章も受けている。

  多くの建築を手掛けているが、有名なところでは日生劇場、箱根プリンスホテル、新高輪プリンスホテル、横浜市庁舎、横浜市立大学、志摩観光ホテルなど。

私的には、館内のよみうりホールは立川志らくの落語会で複数回、ジャズのコンサートで1回利用した。

キャパシティは約1,100席。

見た印象よりも席数は多い。

  この番組は「ブラタモリ」が終了したので、その後継の番組的な要素もあると思う。

建築物の個性・機能性・芸術性などを視認して活写するような観点で。

因みにアカデミックな視点ではなく、ビル内部のテナント及び店主の半生に焦点を当てた企画として、「ビルぶらレトロ探訪」という番組がBSフジで一昨年から始まっている。

微妙に不定期ではあるが。

若干、ネタ切れの様相でもあるが。

  よみうり会館の次は?

今の日本では歴史を紡いでいても、簡単に解体される。

再開発が正解、という金科玉条の如き錯誤に基いて。

継続は美学ではない、という信条。

バブルの実相を受けて、ますます加速して浸潤している。

次回がニュー新橋ビルであれば、それは予定調和であり、常套句のような既視感を覚えるが。

霞が関ビルも解体されるか?

  改めて次回の予定を知ると、代々木体育館である。

勿論、丹下健三の設計。

有名過ぎるが、昭和の東京オリンピックを目途に建造された。

21世紀に生まれた若者たちにとって、昭和の東京五輪に伴う建築は我々の世代が明治時代に建てられた、ジョサイア・コンドルの設計を見るような感覚なのかもしれない。

例えば、鹿鳴館のような。

  建築に込められた設計者の思想や独自のアイデア、さらに心象風景などを紐解くのであれば、規模に関係なく取り上げて欲しい。

例えば、雑司ヶ谷の旧宣教師館なども。

日本はスクラップアンドビルドが費用対効果という判断以前に、経済を活性化するための絶対的な方程式として認知されている。

だから、文化的な価値は優先順位として最下位であり、容赦なく更地となり、次の物件に更新される。

鉄とコンクリートの構造物だけが重要視される。

前述のように、令和のバブルが弾けるまでは、このベクトルは続いて、特に都内は土煙が舞う現場とともに空疎な時間が長引くだろう。

  この動静・動向が基調となるのか、未だ私には分からないが、少なくとも肯定的には捉えていない。

最後に五反田のTOCが解体せずに、テナントを再募集して営業を再開するという、最新情報。

資材と人件費の価格高騰で、当初の予算では事業の完結が不可になったため。

ここでも、円安の苛烈な悪影響が頓挫という現実を、途中経過の闇を招いている。