漫画家ちばてつや先生:近況
先日、ちばてつやの漫画本を通販で購入。
タイトルは「ひねもすのたり日記⑤」
価格は1,430円。
本人の日常の出来事を漫画というか、イラスト的な役割を添えて、文章を綴っている。
氏は現在85歳。
経歴を確認すると、紫綬褒章、文化功労者、芸術院会員の肩書もある。
「巨匠」と記しても誇張ではないと思える。
氏の作品としては、何と言っても「明日のジョー」が傑作として、不滅の輝きを放っている。
今更、改めて言及するのも無粋というか、恥ずかしい、と思えるほどの作品である。
スポーツを描いた漫画の金字塔と言える。
原作は梶原一騎。
すでに鬼籍に入っている。
作品は1968年から1973年にかけて、少年マガジンに連載。
テレビアニメとしても放映されて、テーマソングの尾藤イサオの歌唱は今でも全く色褪せない。
「ひねもすのたり日記」では、主人公である矢吹ジョーのライバル、力石徹が死んでしまう設定の是非が梶原、ちば、講談社の編集担当などの、関係者の会合で議論された当時の経緯が記されている。
講談社側は強く反対した。
しかし、最終的には漫画家の主張が通って、力石はリングで勝利した後に倒れて、搬送されるが亡くなる。
ちばの構想では亡くなることで、さらにジョーの苦悩や葛藤を描き、人生の非情や虚無を表現したかったと推量する。
そのストーリーの方がインパクトもあるし、スケールも大きくなると考えたはずだ。
勿論、美学もあると捉えたに違いない。
力石の死は当時、社会現象になったと記憶している。
「ひねもす~」では、出版社の大講堂で力石の告別式が行われて、複数の僧侶の読経の中、多くのファンが詰めかけたと記されている。
発起人は寺山修司である。
1970年前後は熱い時代だった。
リアルタイムで体感していたので。
安保闘争もあり、学生運動が最高潮だった。
政治に無関心な若者はノンポリと呼ばれて、バカにされた時代だった。
その意味では二極化していたかもしれない。
真剣に自分自身を模索しながら生きていた連中と、惰性とは言わないが、世の中を斜に構えて見ていた奴らと。
しかし、私の記憶では告別式は日本武道館で行われたと思っていたが、勘違いか?
記憶媒体が劣化しているのかもしれない。
「ひねもす~」では他に先年亡くなった、さいとうたかをのエピソード、本人の入院中の出来事などが克明に活写されている。
氏はアメーバブログにも「くずてつ日記」というタイトルで日常を綴っている。
勿論、高齢者の視点や実感を含めて。
氏の世代の漫画家の多くが物故している。
存命は、つげ義春くらいか。
昭和の漫画史の証言者として、役割は残っている。
氏の健勝を願いたい。