ケースワーカー ⇒ 心労と疲弊
昨日の新聞に、江戸川区のケースワーカーが昨年1月、担当する60歳台の生活保護受給者の死亡を知りながら、放置していた事案が報じられていた。
第三者委員会が報告書を区に提出した。
「必要な対策を行わなかったことは重大な事務懈怠(けたい)」と批判し、上司の支援不足などの組織管理の甘さも指摘、と記事には載っている。
担当者本人の失態、過誤、怠慢、不作為などが主たる原因という分析ではないようだ。
本人のスキル、資質、適性について触れているのか、分からないが。
一個人の問題に矮小化せず、全体で事務事業を執行することに総括における力点と結論が示されている、ように読み取れる。
勿論、組織論とはそういうことである。
今さら、という感覚で受け止める諸兄も多いとは思うが。
裏返すと、忙しくて仕事が山積していて、体調が悪くても休めない、という職員がいると仮定する。
結果として本人は病欠から休職に至ったとしたら、それは個人としても組織としても不幸と言わざるを得ない。
だから、遠慮することなく、休むことを薦める。
勿論、迷惑をかける部分があるかもしれないが、それはお互い様であり、逆の立場になったときに応援すればよいことである。
一個人の体調不良による休暇取得で、仕事に大きな穴が開くようでは、組織の体制が脆弱であり、お粗末ということである。
適正な人員配置が行われていない、という事実に尽きる。
削って減らした人件費の分を名目に関係なく、内部留保に回す算段である。
役所か民間か、に係わらず。
上記の実例として、年間に20日間付与される、公務員の年次休暇のうち、5日間程度しか取得できず、15日間は捨てることになる。
レアケースではなく、珍しくもない。
それが単年度ではなく、常態化する。
同じ東京23区の役所でも、大きな落差・格差がある。
これに関しての詳細は極めて長くなるので省略したい。
本件の担当者は100世帯を担当していた、という記事。
直近の統計では、全国の平均は85世帯のようである。
当然、負荷が大きいと推量できる。
ネット検索すると、2021年の民間団体の調査では回答を得た43の自治体で、最少は73世帯、最多は241世帯。
有り得ない乖離がある。
これは、この生活保護という名の、制度設計の当初からの不備と欠陥が明白に表れている、と言える。
各自治体の裁量に任せられている、と言えば聞こえがいいが、実際は全く統制がとれていない、ということである。
不均衡の極み。
これでは、担当者は過労死になるだろう。
最悪と言える。
また、過去の中野区の事例では、ケースワーカーの仕事を民間に下請けとして委託していた、という記事を検索で知ることができた。
これは違法性が指摘された事案だが。
自治体が主管する制度において、住民が受給する公金、あるいは当該等級認定に直接係わるような仕事を民間に丸投げすることは、行政として邪道であり、論外と言える。
意思決定した部課長などの管理職、さらに区長の見識と資質を疑う。
国の行政監査が入るような次元の案件と言える。
いずれにしても、この制度の現実は混迷という言葉が該当する。
根本的な制度設計の不備は不正受給という犯罪にも直結して、ときどき逮捕者が出る。
性善説に依拠していることの機能不全。
この件についても、さらに長尺になるので割愛するが。
総論として、未だ顕在化していない、複数の現場の闇があると推認できる。
最後に上記に綴った見解は間接的な伝聞だけでなく、私自身が終活世代ではあるが、公務員と民間の両方の職歴と経験に基づく考察であることを記して、終わりとしたい。