天使のハンマー:概説 | 硝子の中年のブログ

天使のハンマー:概説

  番組「ずん喫茶」は芸人の飯尾和樹が各地の純喫茶を巡って、オーナーの人物像や店の歴史を聞く内容である。

番組自体は人畜無害というか、1ミリの毒気もないが。

この番組でBGMとして、必ずオールディーズが流れる。

私にとっては、思春期の原体験として、リスナーとしての血肉となったジャンルである。

60年代の当時から、60年近い年月が経過した。

  しかし、その楽曲の魅力は1ミリも褪色することがない。

勿論、自分にとっての原風景があって、そのノスタルジーと相乗して風化しないということは否定しないが。

それでも、主観を除いても、その本質や実相は普遍的と断言したい。

昨日の番組では「天使のハンマー」が流れた。

定番ではあるが。

この曲のソングライターはピート・シーガーだった記憶があるが、不確かなので、検索すると正解だった。

  1950年にピートを中心に結成された、ウィーバースの録音がオリジナルである。

番組で使用された曲のアーティストはピーター・ポール&マリーであり、フォークソングの代表的なトリオであった。

1962年に彼らがリリースしたヴァージョンが最も多くのリスナーに認知されたと言える。

ニューヨークのグリニッジビレッヂ出身という謳い文句だった。

すでに3人とも鬼籍に入っているが。

何度も来日して、公演も行っている。

  検索すると、実に多くの歌手がカバーしている。

順不同だが、サム・クック、ジョニー・リバース、オデッサ、シーカーズ、マーサ&ザ・バンデラス、ブラザースフォア、ジャッキー・デシャノン、アリサ・フランクリン、メル・トーメ、フォートップス、ジョニー・キャッシュなど。

フォークソングやポップスは勿論、リズム&ブルース、ジャズ、カントリー&ウエスタンのシンガーまでカバーしている。

上記に連なる名前だけでも、アメリカの広義のポピュラー音楽の本流の太さに、スケール感に圧倒される。

トリニ・ロペスのラテン系のカバーも印象深い。

  記述が前後するが、ピート・シーガーこそが、フォークの神様であり、フォークの大御所と称された人物である。

神様は決して、ボブ・ディランではなく、ましてや岡林信康ではない。

彼については、このブログでも以前に記したが、再度簡単に触れたい。

1919年生まれで、2014年に永眠している。

享年94歳。

プロテストソングのパイオニアと言える存在ではあるが、過激な主張を展開する訳ではなく、極めて内省的で思索的で、文芸的な志向のシンガーソングライターだったと言える。

  ピートの作品では「花はどこへいった」が余りにも有名。

ロシアのノーベル賞作家、ショーロホフの長編小説「静かなるドン」を読んだときのインスピレーションから作曲したというエピソードが知られている。

この曲についての能書きも長尺になるので、今回は割愛したい。

音楽活動は先人がいて、感化を受けてキャリアをスタートさせるケースが圧倒的に多い。

ビートルズでさえも該当する。

だから、源流を、原点を知って欲しい。

決して時間と労力の無駄にはならない。

目から鱗が落ちる、ような発見も時折あるので。