中国へ | ある建設コンサルタントの日記

中国へ

 以前にブログで書いた

知り合いの留学生(モンゴル人で職場が中国) が、
博士号を無事に取得し、
先週末に中国に帰っていった。




 彼は本当に温厚な人で、
ありふれたフレーズを使うと、
今の日本人が忘れた
「ナニか」を常に胸の中に潜ませている。



 ある学会の日、
僕は研究発表予定だったため、
少し緊張をしながら、その順番を待っていた。



「これどうぞ、ノド乾くでしょ」。

 と、後ろから彼。


 彼が差し出してくれたペットボトルのお茶が、
雨の中、わざわざ遠くのコンビニから

買われてきたものであることは、

彼のスーツの濡れ具合で直ぐにわかった。


 そのときのお茶の味は、今でも忘れられない。


 発表が無事に終わり、
席に戻ると、「お疲れさま」と、
雨に濡れた上着を脱いで乾かしている彼。


 お茶よりも彼の気遣いでココロが潤った。



 先日、彼の博士号取得のお祝いと
送別会を兼ねて、
彼も僕も共通で大変お世話になっている
大学の先生宅に招待して頂いた。


 僕は、彼がいつでも日本を思い出せるように、
日本製で和風デザインのボールペンを彼に贈った。


 彼は少しとまどいながら、
「私ナニも用意していない。お返しできない」。


 ”イイよ。もう十分に貰ったから。”
僕は、ココロの中、小さな声で呟いた。



 彼は内モンゴル出身である。
来年、季節のイイ初夏の頃に
故郷に招待したい、と言ってくれた。



 「なにかお勧めスポットあるの?」
ヤボな質問をする僕に、
彼は拍子抜けするくらいに、
あっけらかんとこう言った。


「広い草原です」


 そうか、草原か。そりゃ草原だな。



 送別会の帰り。
 彼と一緒に地下鉄に乗り込んだ。

 彼の方が先に電車を降りた。

 電車を降りる際、彼と握手をした。
「色々、ありがとうございました」と彼。


 僕は、お別れのコトバを言わなかった。
地下鉄のシートに座ったまま、
いつもどおり、大学の研究室から先に帰るときのように、

「じゃあ、また」。


 同時に、ココロの中でこう言った。
「本当に、本当に、本当に、楽しい時間をありがとう」


 彼に会わせてくれた運命に、
 彼の記憶の中に僕という存在が刻まれた運命に感謝した。