人は誰しも差別をする。
それは事実であり、人の本能として当然のことなのかもしれない。
“誰かのことを可哀想と思う”
それは既に差別であり、相手を自分と同等として扱っていない。
どうしようもないことなのだけれど、どうしようもなく事実だ。
兄弟の犯した罪で、人生をねじ曲げられる直貴を見つつ、自分ならどうするだろう。自分が直貴と出会ったら、どう接するだろうと思考を巡らす。
結局、行き着く先は物語と同じ。
苦しみ抜いた後に縁を切り、可哀想と思いながら一定の距離を保つ。
それ以外に選択肢がないようにも思える。
そんな中、平野社長の存在は大きい。
できればあんな人間になりたいと思う。
何かを守る為に、何かを捨てる。
それは、きっと諦めではなく決断なのだ。
簡単にはできない選択。
東野圭吾を読まず嫌いしていたが、こんなに素晴らしい作品を書く方だとは……今まで、損していたかもしれないな。
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