※注意!!※
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としては読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
~~~~~~~~~~~~~~~
登場人物紹介
NAME:アズ・ルードリア
HR:6
主な使用武器:太刀・片手剣
元大闘技場の門番兵。前回のタロの戦いに感動して「ハンター」に戻る決意をする。
NAME:ミリア
HR:6
主な使用武器:ハンマー
アズに「拾われた」少女。二年前にアズと共に集会所を駆け抜けるが…。
※アズの紹介イラスト:新八様
27
レウス装備に身を包んだ二人。
集会所の上位に上がっても、この二人の勢いは止まらなかった。
ミリアのハンマーがその才能を開花させると共にまた、アズの「サポーター」の才能も開花していく。
アズはとにかく一つ一つのクエストに必死だった。
それはミリアを「守る」事。
心臓病という病を抱えながらハンマーを振るミリアは、その事情を知るアズにとってはどうしても「儚く」映る。
力強くハンマーを振るミリアのその姿だったが、アズにとってはいつフッと消えてしまうか不安で仕方がなかった。
そんな気持ちを抱えながらサポートするアズには余裕もなく、一つ一つのクエストにとにかく神経をすり減らす。
しかしそんな真剣さが、いつしかアズにとって「サポーター」としてのその能力を引き出させた。
ミリアにモンスターの頭付近を任せるとまずアズは部位破壊が出来る所はドンドンと壊して行く。
部位破壊が終了すると、今度はアイテムを使ったサポートに回る。
閃光玉が有効なモンスターには率先して投げて、罠が必要ならすばやく仕掛け、回復においては常に粉塵を用意していた。
その内サポートとしての役割も慣れてくると、今度はミリアと一緒に頭部を狙い始める。
一見太刀とハンマーはその攻撃判定の広さから相性が悪いように思われているが、太刀独自の攻撃中の強靭さをわきまえていると案外と邪魔にならないものだ。
ミリアにはドンドンと攻撃をさせて、アズはその攻撃の合間に頭に向かってその太刀を振って行く。
その連携が息を合わせ始めると、この二人の勢いはもう止まらなかった。
上位に上がっても特に苦戦することなく、そしてそんな時をかけることなく二人はHRを5に上げた。
今まだこの二人は下位の装備であるレウス装備で上位を駆け抜けている。
いつも行く集会所でもいよいよこの二人は有名になっていった。
そのクエストをこなす速さと、二人揃ってのレウス装備という出で立ちに、その集会所ではアズとミリアの名前を知らぬ者はすでにいなかった。
一見順調に集会所の上位を駆け抜ける二人だったが――――
しかしここまできて遂にミリアの方に異変が起こり始める。
時折、胸辺りを押さえて苦しそうにするミリアがいるのだ。
まだ戦闘中は特に何もなかったが、クエストが終わると苦しそうに胸を押さえるミリアの姿が目立ち始めた。
そんなミリアを見たアズは堪らず、ミリアをまた医者に連れて行く事にした。
診察を終えてミリアを一旦診療室から出すと、アズと医者の二人きりになる。
アズはミリアの病状を聞いた。
「一体どうしたというのだ…。以前私が診た時は心臓も正常だったというのに。」
医者はそう呟くと、アズの方を見た。
「彼女の心臓に若干の不規則な鼓動を感じる。この不整脈…心臓に何か負担をかける事をさせているのかい?」
医者がそう聞くと、アズはうっと言葉を詰まらせた。
ミリアが「ハンター」となった事は、アズ自身心臓病だった事を承知で認めたために、あまり言いたくなかったが。
やはりミリアの事が心配で仕方がないアズは、目の前の医者に事細かに事情を説明した。
「君達が集会所で有名なのは私も知っていたが…しかしよりにもよってハンマーとは…。私はこの前二年は大丈夫だと言ったが、この調子では一年も持たんぞ…。」
医者はアズの説明に愕然としたまま、そう説明した。
そんな医者の言葉にアズもまた愕然とする。
「そんなに…まずい状況なのか…?」
ぐっと拳を握りしめたままアズが聞いた。
「まだ…大丈夫だとは思うが…。しかし、もういつ心不全がきてもおかしくはないな…。」
医者は顔を俯けると、そう呟いた。
「やはり…ミリアにはもう『ハンター』はやめさせた方が良いのか…。」
アズはそう呟くと、ぐっと自分の唇を噛みしめた。
「まあ医者の立場で言わせてもらえば当然だ。…だが、君達のしようとしている事も解っている。今じゃ君達は有名人だからね。彼女の病を治すために…金が必要なんだろう?」
医者はそう言うと、目の前の机の上に置いてあった紙を手に取る。
「実は先日、旅行中の旅人がここに運び込まれてね。診療ついでに旅費がいくらかかるか聞いたんだ。後西洋での治療費の相場も調べておいた。これを。」
医者はそこまで話すとアズに手に持っていた紙を渡した。
そこにはなるべく細かく、旅費や治療費などの金額の内訳が書いてあった。
一番下の段に書かれていた数字を見て、アズは目を見開く。
「160万z…なのか?」
その数字を読み上げて、医者にアズは改めてその金額で合っているのか聞いた。
「そうだ。とりあえず旅費と治療費もその金額があれば…なんとかなるようだ。他にも色々雑費なども考えれば…それでも200万もあれば行けるだろう。」
そんな医者の言葉にアズは目を輝かせた。
「それなら…後少しで行けそうだ。」
現状、今の所アズは手持ちでも100万zも持っていないが下位装備で頑張ってきた甲斐というべきか、売れる素材が結構ある。
全部売れば140万zくらいにはなる計算だった。
「しかし200万…か。まだ…ミリアの力が必要だ…。」
あと少しなのだが、ここでアズが一人で戦うとなるとまた以前のように現状維持の生活になる。
上位に上がってその依頼料も上がっているが、しかしアズ一人では貯められたとして微々たるものだ。
そうなるとやはり「時間」との戦いになるのは目に見えている。
そんな葛藤にアズが苦しんでいると、
「そこでだ…。彼女の本人の意思もあるだろうが…彼女の病気を治すためならば、私は彼女の『ハンター』を止めはしない。ここで養生させた所で若干 死を遅らせる事ができるだけだ。結局、金が無ければ死を待つだけだからな。…ただやはり『時間』との戦いになるだろう。どちらの選択の方が可能性がある か…それは君の判断に任せるよ。私もなるべく協力する。」
と、医者がアズに話す。
「可能性…か。」
そんな医者の言葉に「選択」とあるが、アズは「道は一つしかない」と悟った。
ミリアの「命の炎」が燃え尽きるのが先か。
金が貯まるのが先か。
ミリアもアズも。
二人ともにこれからは、より苦しい戦いを余儀なくされる。
ミリアの生存に具体性が出てきた事。
―――ミリアが助かるかもしれない。
―――しかしミリアの体が持たないかもしれない。
そんな二つの明暗に、アズはいよいよ「結果」が迫ってきているのだと悟った。
28
しかし実際の所、その心臓を弱らせる「ハンター」という仕事を、アズはもうミリアにはしてほしくなかった。
当たり前の事だ。
儚き華の散る姿―――。
今のアズはこれを一番恐れている。
ミリアが一つそのハンマーを振る姿は、一枚の花びらが舞う姿。
華の美しさも、その花びらが舞うごとにその姿を寂しくさせる。
いつか…そんな花びらも尽きてしまうのではないか…。
アズの心中はもう心配と不安で一杯だった。
精神的な疲労感がアズを襲う。
「ねえアズ。」
診療所からの帰り道、ミリアはアズに話しかけた。
夕暮時、歩調を合わせて歩く二人。
夕日を背に受けて歩く二人の影が伸びる。
「私ね…、今とても幸せなの。」
唐突にそう言うミリアの顔は本当に幸せそうに笑っていた。
アズはそんなミリアの顔を見て言葉を詰まらせる。
先ほどの医者との会話が頭を過ぎり、そんなミリアの笑顔でさえアズにとっては「散りゆく花びら」に映ったからだ。
「幸せ…か…。」
アズはミリアの笑顔を見ながらそう呟く。
そんなアズの呟きを聞いたミリアは足を止めた。
急に立ち止まるミリアにアズも足を止めると、何事かとミリアの方に振り向く。
「アズ。聞いて。」
そう言葉をかけるミリアの顔から先ほどの笑顔が消えた。
視線を真っ直ぐにアズに向ける。
そんな真剣なミリアの表情に、アズは何かいたたまれない寂しさを感じた。
「私は『ハンター』となって、モンスターとの『殺生』にこの身を置いたわ。生死をかけた職業。そして相手に『死』を強要する職業。そしてまた相手も私に『死』を強要する。そんな中で生きてく身として…私は『死ぬ』事に対して『覚悟』を決めているの。」
視線の先を全く動かすことなくミリアはアズを見ている。
そんなミリアの視線に、アズもまたその視線を動かさない。
アズはミリアの「言いたい事」がその視線から解ったからだ。
「アズ、だからあなたも『覚悟』して。私が死ぬ事を。あなたが今何を考えているか解ったから、敢えて言わせてもらうけど。」
そこまで言うと、ミリアは一つ息を吐く。
アズはミリアの次の言葉を黙って待っていた。
「私は…死ぬのなら『ハンター』として死にたい。いくらあなたが止めようとも…私は、私の思うように生きたい。でなければ…また、私はあなたと『対等』ではなくなるから…お願い、死ぬまで…あなたの横を歩かせて。」
「ミリア…。」
アズはミリアの顔と今の言葉で、自分の命が残り少ない事を知っているのだと悟った。
そんなミリアの覚悟に、アズはまた泣きそうになる。
しかしグッと涙を堪えると、唇を噛んで涙腺の綻びを締め直した。
「解った。俺も『覚悟』する。お前と…最後まで横を歩き続ける。だから…共に歩こう。」
そう言ってアズはミリアに手を差し出した。
アズはまだ涙をこらえながら唇を噛みしめている。
油断すればすぐに涙が出そうになる。
しかし、アズはグッと堪えた。
それが『覚悟』なのだと心に刻みながら―――。
ミリアはそんなアズの差し出す手を嬉しそうに掴むと、手を繋いで横を歩きだす。
夕日に映る、二人の影がそっと繋がる。
「私ね!!『G級』に早く行きたいの!」
手を繋ぎ、嬉しそうに歩くミリアは、急にそんな事を言う。
「G級に?そんな恐ろしい所に早く行きたいなんて…。」
アズはミリアの言葉に首を傾げた。
ミリアはたまあに突拍子もない事を言う。
しかしそれが全てハンターとして「一流」を裏付ける発言だと言う事も、アズは解っていた。
「今より全然強いモンスターがいるG級…。そこにいるモンスター達の『目』はどんなのなのか早く見てみたいんだ。」
嬉しそうに話すミリアの顔に、「恐怖」の色は無い。
心からG級を願う、好奇心に満ちた顔がそこにあった。
「アズと一緒に…G級に行って、色々なモンスターと戦う…想像しただけでワクワクしてこない?G級にしかいないモンスターもいっぱいいるんだよ!楽しみだな。」
空を見ながら幸せそうに語るミリア。
アズもまた、これからもずっと二人で狩りをしていく―――そんな夢を見る。
なるほど、それは実に楽しそうだ。
アズもまた、そんな狩猟生活に胸躍る。
握り合う手に、ちょっとだけ力を入れるアズ。
その手に反応するようにミリアも少し、力を入れる。
そんな夢を叶えたい。
二人は夕日に照らされながら、言葉を交わすことなく約束を交わす。
「二人でG級へ。」
二人の握り合う手が先ほどよりも固く、お互いの意思の表れとでもいうようにきつく握り合った。
夕日に照らされ伸びる二人の影。
繋がる手はもう一生離れる事はないとでも言うように、しっかりとその影が繋がる。
しかし―――そんな二人の約束は。
守られる事は無かった。
29
いよいよ遂に二人はHRも6に上がった。
ここのクエストを越える事ができれば、夢のG級だ。
ミリアはG級を目指し、そのハンマーを振るう。
アズは目標金額を目指し、その太刀を振るう。
HRも6になれば、出てくるモンスター達も強敵ばかりだ。
ティガレックスを筆頭にディアブロス、リオレウス希少種、リオレイア希少種、そしてラージャンなど。
モンスターとして強豪揃いの面子が揃っていた。
しかしそれでも、二人のクエストをこなすスピードは落ちない。
息の合ったPT戦は、ただ戦力が倍になるというような単純な物ではない。
それは時に最大限の効率を生み、そして最大限の力を発揮する。
息が合い、ハンマーの攻撃が最大に生かされ、太刀が追い打ちをかける。
時に片手剣が相手を拘束すれば、またそのハンマーが威力を発揮する。
息の合ったPT戦は「加算」ではない。それこそ三倍、四倍と威力を高める「乗算」なのだ。
さすがに武器は上位のものだが、そんな二人の装備は相変わらずの下位のレウス装備だった。
しかしこの二人には上位の装備など必要ない位に、あっさりとそして鮮やかに、上位のモンスター達を仕留めて行く。
「二人が足を止めるには上位のモンスターでは物足りぬ」、そんな言葉が集会所内でも飛び交うようになっていた。
そして運命の「時」が来る。
遂に二人は―――G級ライセンス昇格を掛けた、「緊急クエスト」を受ける資格を得る。
「起源にして、頂点」
アカムトルム討伐の依頼だ。
これを越えれば…G級だ。
ミリアはその「G級」に胸躍らせ、そしてアズはこのアカムトルムの討伐の報酬金と次に行くG級の報酬金に期待を膨らませた。
ここまで、目標額まで残り少しまでは貯まっていた。
アカムトルム討伐だけではまだ届かないが、それでも後はG級を少しこなせば届く金額だった。
いや、G級をこなさなくてもそこまで行ってしまえば、後は友人や知人に頭を下げてでも金を借りれば良い。
その金額だったら、返済しながらでもなんとかやっていける。
アズ、ミリアの想いは共に一つ。
このアカムトルムの討伐の先に、二人が夢見た「未来」がある。
二人は嬉々としながら、そのアカムトルム戦に向かった。
しかし、そんな二人は功を焦ったと言うべきか。
特にアズの方が浮足立っていた感がある。
このアカムトルム戦に挑む上で見落としていた物がいくつかあった。
一つは下位のレウス装備だ。
この装備は下位装備という、ただでさえ上位のモンスターに対しては厳しい装備なのに、アカムトルムとの相性が最悪だったと言う事。
ここまで特に問題もなく来てしまった慢心が、この装備を選んでしまったのだろう。
「愛着」というものもあったのかもしれない。
しかし、それにしてはアカムトルムという相手は厳しすぎた。
もう一つはミリアの容体だ。
ここまできて、ミリアの心臓は悲鳴を上げていた。
ミリア自身、そんな容体をアズに見抜かれたくなかったため気丈に振舞っていたが、しかし普段のアズなら気付いていただろう。
ミリアの容体の変化に。
時折、息ができないような苦しさに胸を押さえるミリアがいた事に、アズは気がつかなかった。
そう、そんな容体の変化を隠したミリアの「覚悟」に、アズは気が付かなかったのだ。
ミリア自身、この一戦に「思う事」があったのかもしれない。
ミリアはこのアカムトルムの決戦前に、アズに一通の手紙を書いた。
それを自分のアイテムボックスの下にそっと置くと、その手紙を動かさないように石を置く。
その石はライトクリスタルという綺麗な石だった。
―――今、まだこの手紙の存在をアズは知らない。
そして時は来る。
二人の「未来」をかけた戦い、アカムトルムとの決戦。
夕日の中、繋がれた手の中で交わされた「約束」。
その戦いは二人が夢見て交わした「約束」の地への切符。
しかし遂に果されることの無かった、「約束」―――。
集会所編10に続く
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としては読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
~~~~~~~~~~~~~~~
登場人物紹介
NAME:アズ・ルードリア
HR:6
主な使用武器:太刀・片手剣
元大闘技場の門番兵。前回のタロの戦いに感動して「ハンター」に戻る決意をする。
NAME:ミリア
HR:6
主な使用武器:ハンマー
アズに「拾われた」少女。二年前にアズと共に集会所を駆け抜けるが…。
※アズの紹介イラスト:新八様
27
レウス装備に身を包んだ二人。
集会所の上位に上がっても、この二人の勢いは止まらなかった。
ミリアのハンマーがその才能を開花させると共にまた、アズの「サポーター」の才能も開花していく。
アズはとにかく一つ一つのクエストに必死だった。
それはミリアを「守る」事。
心臓病という病を抱えながらハンマーを振るミリアは、その事情を知るアズにとってはどうしても「儚く」映る。
力強くハンマーを振るミリアのその姿だったが、アズにとってはいつフッと消えてしまうか不安で仕方がなかった。
そんな気持ちを抱えながらサポートするアズには余裕もなく、一つ一つのクエストにとにかく神経をすり減らす。
しかしそんな真剣さが、いつしかアズにとって「サポーター」としてのその能力を引き出させた。
ミリアにモンスターの頭付近を任せるとまずアズは部位破壊が出来る所はドンドンと壊して行く。
部位破壊が終了すると、今度はアイテムを使ったサポートに回る。
閃光玉が有効なモンスターには率先して投げて、罠が必要ならすばやく仕掛け、回復においては常に粉塵を用意していた。
その内サポートとしての役割も慣れてくると、今度はミリアと一緒に頭部を狙い始める。
一見太刀とハンマーはその攻撃判定の広さから相性が悪いように思われているが、太刀独自の攻撃中の強靭さをわきまえていると案外と邪魔にならないものだ。
ミリアにはドンドンと攻撃をさせて、アズはその攻撃の合間に頭に向かってその太刀を振って行く。
その連携が息を合わせ始めると、この二人の勢いはもう止まらなかった。
上位に上がっても特に苦戦することなく、そしてそんな時をかけることなく二人はHRを5に上げた。
今まだこの二人は下位の装備であるレウス装備で上位を駆け抜けている。
いつも行く集会所でもいよいよこの二人は有名になっていった。
そのクエストをこなす速さと、二人揃ってのレウス装備という出で立ちに、その集会所ではアズとミリアの名前を知らぬ者はすでにいなかった。
一見順調に集会所の上位を駆け抜ける二人だったが――――
しかしここまできて遂にミリアの方に異変が起こり始める。
時折、胸辺りを押さえて苦しそうにするミリアがいるのだ。
まだ戦闘中は特に何もなかったが、クエストが終わると苦しそうに胸を押さえるミリアの姿が目立ち始めた。
そんなミリアを見たアズは堪らず、ミリアをまた医者に連れて行く事にした。
診察を終えてミリアを一旦診療室から出すと、アズと医者の二人きりになる。
アズはミリアの病状を聞いた。
「一体どうしたというのだ…。以前私が診た時は心臓も正常だったというのに。」
医者はそう呟くと、アズの方を見た。
「彼女の心臓に若干の不規則な鼓動を感じる。この不整脈…心臓に何か負担をかける事をさせているのかい?」
医者がそう聞くと、アズはうっと言葉を詰まらせた。
ミリアが「ハンター」となった事は、アズ自身心臓病だった事を承知で認めたために、あまり言いたくなかったが。
やはりミリアの事が心配で仕方がないアズは、目の前の医者に事細かに事情を説明した。
「君達が集会所で有名なのは私も知っていたが…しかしよりにもよってハンマーとは…。私はこの前二年は大丈夫だと言ったが、この調子では一年も持たんぞ…。」
医者はアズの説明に愕然としたまま、そう説明した。
そんな医者の言葉にアズもまた愕然とする。
「そんなに…まずい状況なのか…?」
ぐっと拳を握りしめたままアズが聞いた。
「まだ…大丈夫だとは思うが…。しかし、もういつ心不全がきてもおかしくはないな…。」
医者は顔を俯けると、そう呟いた。
「やはり…ミリアにはもう『ハンター』はやめさせた方が良いのか…。」
アズはそう呟くと、ぐっと自分の唇を噛みしめた。
「まあ医者の立場で言わせてもらえば当然だ。…だが、君達のしようとしている事も解っている。今じゃ君達は有名人だからね。彼女の病を治すために…金が必要なんだろう?」
医者はそう言うと、目の前の机の上に置いてあった紙を手に取る。
「実は先日、旅行中の旅人がここに運び込まれてね。診療ついでに旅費がいくらかかるか聞いたんだ。後西洋での治療費の相場も調べておいた。これを。」
医者はそこまで話すとアズに手に持っていた紙を渡した。
そこにはなるべく細かく、旅費や治療費などの金額の内訳が書いてあった。
一番下の段に書かれていた数字を見て、アズは目を見開く。
「160万z…なのか?」
その数字を読み上げて、医者にアズは改めてその金額で合っているのか聞いた。
「そうだ。とりあえず旅費と治療費もその金額があれば…なんとかなるようだ。他にも色々雑費なども考えれば…それでも200万もあれば行けるだろう。」
そんな医者の言葉にアズは目を輝かせた。
「それなら…後少しで行けそうだ。」
現状、今の所アズは手持ちでも100万zも持っていないが下位装備で頑張ってきた甲斐というべきか、売れる素材が結構ある。
全部売れば140万zくらいにはなる計算だった。
「しかし200万…か。まだ…ミリアの力が必要だ…。」
あと少しなのだが、ここでアズが一人で戦うとなるとまた以前のように現状維持の生活になる。
上位に上がってその依頼料も上がっているが、しかしアズ一人では貯められたとして微々たるものだ。
そうなるとやはり「時間」との戦いになるのは目に見えている。
そんな葛藤にアズが苦しんでいると、
「そこでだ…。彼女の本人の意思もあるだろうが…彼女の病気を治すためならば、私は彼女の『ハンター』を止めはしない。ここで養生させた所で若干 死を遅らせる事ができるだけだ。結局、金が無ければ死を待つだけだからな。…ただやはり『時間』との戦いになるだろう。どちらの選択の方が可能性がある か…それは君の判断に任せるよ。私もなるべく協力する。」
と、医者がアズに話す。
「可能性…か。」
そんな医者の言葉に「選択」とあるが、アズは「道は一つしかない」と悟った。
ミリアの「命の炎」が燃え尽きるのが先か。
金が貯まるのが先か。
ミリアもアズも。
二人ともにこれからは、より苦しい戦いを余儀なくされる。
ミリアの生存に具体性が出てきた事。
―――ミリアが助かるかもしれない。
―――しかしミリアの体が持たないかもしれない。
そんな二つの明暗に、アズはいよいよ「結果」が迫ってきているのだと悟った。
28
しかし実際の所、その心臓を弱らせる「ハンター」という仕事を、アズはもうミリアにはしてほしくなかった。
当たり前の事だ。
儚き華の散る姿―――。
今のアズはこれを一番恐れている。
ミリアが一つそのハンマーを振る姿は、一枚の花びらが舞う姿。
華の美しさも、その花びらが舞うごとにその姿を寂しくさせる。
いつか…そんな花びらも尽きてしまうのではないか…。
アズの心中はもう心配と不安で一杯だった。
精神的な疲労感がアズを襲う。
「ねえアズ。」
診療所からの帰り道、ミリアはアズに話しかけた。
夕暮時、歩調を合わせて歩く二人。
夕日を背に受けて歩く二人の影が伸びる。
「私ね…、今とても幸せなの。」
唐突にそう言うミリアの顔は本当に幸せそうに笑っていた。
アズはそんなミリアの顔を見て言葉を詰まらせる。
先ほどの医者との会話が頭を過ぎり、そんなミリアの笑顔でさえアズにとっては「散りゆく花びら」に映ったからだ。
「幸せ…か…。」
アズはミリアの笑顔を見ながらそう呟く。
そんなアズの呟きを聞いたミリアは足を止めた。
急に立ち止まるミリアにアズも足を止めると、何事かとミリアの方に振り向く。
「アズ。聞いて。」
そう言葉をかけるミリアの顔から先ほどの笑顔が消えた。
視線を真っ直ぐにアズに向ける。
そんな真剣なミリアの表情に、アズは何かいたたまれない寂しさを感じた。
「私は『ハンター』となって、モンスターとの『殺生』にこの身を置いたわ。生死をかけた職業。そして相手に『死』を強要する職業。そしてまた相手も私に『死』を強要する。そんな中で生きてく身として…私は『死ぬ』事に対して『覚悟』を決めているの。」
視線の先を全く動かすことなくミリアはアズを見ている。
そんなミリアの視線に、アズもまたその視線を動かさない。
アズはミリアの「言いたい事」がその視線から解ったからだ。
「アズ、だからあなたも『覚悟』して。私が死ぬ事を。あなたが今何を考えているか解ったから、敢えて言わせてもらうけど。」
そこまで言うと、ミリアは一つ息を吐く。
アズはミリアの次の言葉を黙って待っていた。
「私は…死ぬのなら『ハンター』として死にたい。いくらあなたが止めようとも…私は、私の思うように生きたい。でなければ…また、私はあなたと『対等』ではなくなるから…お願い、死ぬまで…あなたの横を歩かせて。」
「ミリア…。」
アズはミリアの顔と今の言葉で、自分の命が残り少ない事を知っているのだと悟った。
そんなミリアの覚悟に、アズはまた泣きそうになる。
しかしグッと涙を堪えると、唇を噛んで涙腺の綻びを締め直した。
「解った。俺も『覚悟』する。お前と…最後まで横を歩き続ける。だから…共に歩こう。」
そう言ってアズはミリアに手を差し出した。
アズはまだ涙をこらえながら唇を噛みしめている。
油断すればすぐに涙が出そうになる。
しかし、アズはグッと堪えた。
それが『覚悟』なのだと心に刻みながら―――。
ミリアはそんなアズの差し出す手を嬉しそうに掴むと、手を繋いで横を歩きだす。
夕日に映る、二人の影がそっと繋がる。
「私ね!!『G級』に早く行きたいの!」
手を繋ぎ、嬉しそうに歩くミリアは、急にそんな事を言う。
「G級に?そんな恐ろしい所に早く行きたいなんて…。」
アズはミリアの言葉に首を傾げた。
ミリアはたまあに突拍子もない事を言う。
しかしそれが全てハンターとして「一流」を裏付ける発言だと言う事も、アズは解っていた。
「今より全然強いモンスターがいるG級…。そこにいるモンスター達の『目』はどんなのなのか早く見てみたいんだ。」
嬉しそうに話すミリアの顔に、「恐怖」の色は無い。
心からG級を願う、好奇心に満ちた顔がそこにあった。
「アズと一緒に…G級に行って、色々なモンスターと戦う…想像しただけでワクワクしてこない?G級にしかいないモンスターもいっぱいいるんだよ!楽しみだな。」
空を見ながら幸せそうに語るミリア。
アズもまた、これからもずっと二人で狩りをしていく―――そんな夢を見る。
なるほど、それは実に楽しそうだ。
アズもまた、そんな狩猟生活に胸躍る。
握り合う手に、ちょっとだけ力を入れるアズ。
その手に反応するようにミリアも少し、力を入れる。
そんな夢を叶えたい。
二人は夕日に照らされながら、言葉を交わすことなく約束を交わす。
「二人でG級へ。」
二人の握り合う手が先ほどよりも固く、お互いの意思の表れとでもいうようにきつく握り合った。
夕日に照らされ伸びる二人の影。
繋がる手はもう一生離れる事はないとでも言うように、しっかりとその影が繋がる。
しかし―――そんな二人の約束は。
守られる事は無かった。
29
いよいよ遂に二人はHRも6に上がった。
ここのクエストを越える事ができれば、夢のG級だ。
ミリアはG級を目指し、そのハンマーを振るう。
アズは目標金額を目指し、その太刀を振るう。
HRも6になれば、出てくるモンスター達も強敵ばかりだ。
ティガレックスを筆頭にディアブロス、リオレウス希少種、リオレイア希少種、そしてラージャンなど。
モンスターとして強豪揃いの面子が揃っていた。
しかしそれでも、二人のクエストをこなすスピードは落ちない。
息の合ったPT戦は、ただ戦力が倍になるというような単純な物ではない。
それは時に最大限の効率を生み、そして最大限の力を発揮する。
息が合い、ハンマーの攻撃が最大に生かされ、太刀が追い打ちをかける。
時に片手剣が相手を拘束すれば、またそのハンマーが威力を発揮する。
息の合ったPT戦は「加算」ではない。それこそ三倍、四倍と威力を高める「乗算」なのだ。
さすがに武器は上位のものだが、そんな二人の装備は相変わらずの下位のレウス装備だった。
しかしこの二人には上位の装備など必要ない位に、あっさりとそして鮮やかに、上位のモンスター達を仕留めて行く。
「二人が足を止めるには上位のモンスターでは物足りぬ」、そんな言葉が集会所内でも飛び交うようになっていた。
そして運命の「時」が来る。
遂に二人は―――G級ライセンス昇格を掛けた、「緊急クエスト」を受ける資格を得る。
「起源にして、頂点」
アカムトルム討伐の依頼だ。
これを越えれば…G級だ。
ミリアはその「G級」に胸躍らせ、そしてアズはこのアカムトルムの討伐の報酬金と次に行くG級の報酬金に期待を膨らませた。
ここまで、目標額まで残り少しまでは貯まっていた。
アカムトルム討伐だけではまだ届かないが、それでも後はG級を少しこなせば届く金額だった。
いや、G級をこなさなくてもそこまで行ってしまえば、後は友人や知人に頭を下げてでも金を借りれば良い。
その金額だったら、返済しながらでもなんとかやっていける。
アズ、ミリアの想いは共に一つ。
このアカムトルムの討伐の先に、二人が夢見た「未来」がある。
二人は嬉々としながら、そのアカムトルム戦に向かった。
しかし、そんな二人は功を焦ったと言うべきか。
特にアズの方が浮足立っていた感がある。
このアカムトルム戦に挑む上で見落としていた物がいくつかあった。
一つは下位のレウス装備だ。
この装備は下位装備という、ただでさえ上位のモンスターに対しては厳しい装備なのに、アカムトルムとの相性が最悪だったと言う事。
ここまで特に問題もなく来てしまった慢心が、この装備を選んでしまったのだろう。
「愛着」というものもあったのかもしれない。
しかし、それにしてはアカムトルムという相手は厳しすぎた。
もう一つはミリアの容体だ。
ここまできて、ミリアの心臓は悲鳴を上げていた。
ミリア自身、そんな容体をアズに見抜かれたくなかったため気丈に振舞っていたが、しかし普段のアズなら気付いていただろう。
ミリアの容体の変化に。
時折、息ができないような苦しさに胸を押さえるミリアがいた事に、アズは気がつかなかった。
そう、そんな容体の変化を隠したミリアの「覚悟」に、アズは気が付かなかったのだ。
ミリア自身、この一戦に「思う事」があったのかもしれない。
ミリアはこのアカムトルムの決戦前に、アズに一通の手紙を書いた。
それを自分のアイテムボックスの下にそっと置くと、その手紙を動かさないように石を置く。
その石はライトクリスタルという綺麗な石だった。
―――今、まだこの手紙の存在をアズは知らない。
そして時は来る。
二人の「未来」をかけた戦い、アカムトルムとの決戦。
夕日の中、繋がれた手の中で交わされた「約束」。
その戦いは二人が夢見て交わした「約束」の地への切符。
しかし遂に果されることの無かった、「約束」―――。
集会所編10に続く