「家事従事者」といえば,通常は「主婦」つまり女性であるとされます。しかしながら,昨今では価値観や家族形態の多様化に伴って,「主夫」(英語ではhousehusband)も増加し,また高齢者の介護のために壮年男性が離職・休職したり,老々介護で高齢男性が高齢の奥様や姉妹の世話をするという例も少なくありません。
そのような場合,男性がその世帯の家事労働の中心となるわけですが,それではその男性が(現金収入がないか少ないとして),交通事故等の損害賠償の局面において,「家事労働者」としての休業損害ないし逸失利益を認められるかということが問題となります。
結論的には認められ得るといえますが,世帯構成がどうなっているか,家計はどこから調達しているか等といったことから,当該男性が家事労働の中心にならざるを得ない事情,家事労働を中心的にやっている実態を詳細に立証しなければならず,女性の場合と比較して立証のハードルは高いというのが実感です。
私の経験では,軽度認知症の父親と二人暮らしの壮年男性について,家事従事者と主張して賠償請求をしたことがあります。小規模な自営業を営みながら,その収入(少額のため,確定申告もしていないようでした)とお父様の年金とで生活をしていたように記憶しています。
結果としては,女性全年齢平均の8割程度で計算した休業損害・逸失利益が認められましたが,相手方の反論も相当あり,立証のハードルの高さを感じました。