人身損害の時効の件ですが、改正法が施行された時点(令和2年4月1日)ですでに時効にかかっている事案については、新法は適用されないとされています。いったん時効消滅した債権が復活するわけではないということです。ですから、症状固定ないし治療終了日が平成29年4月1日以降のもののみ、時効期間が5年に延びることになります。この点でも注意が必要です。

令和2年4月に施行された改正民法で、不法行為による損害賠償請求権の時効が、人身損害について変更されました。損害及び加害者を知った時から、従来は「3年」であったのが、「5年」となりました。ただ、物的損害は従来どおり3年です。交通事故などで、人、物両方に損害が出た場合どう扱うかについては、最高裁判例で、別々に時効が成立するという扱いが確立しましたので、注意が必要です。 物的損害の場合は、事故当日か遅くとも修理費の見積が出た日が起算日となるのに対し、人的損害の方は治療終了(症状固定、事故から1年以上になることも珍しくありません)の日が起算日となるのが一般的です。 そのため、時効完成日が人と物とで3年くらいずれることがあるのです。

また、自賠責保険への被害者請求の時効期間は従来どおり3年(傷害は事故日から、後遺障害は症状固定日から)です。

弁護士の泉本宅朗です。


6年半ぶりくらいに投稿を再開します。


交通事故に関しても、民法の改正で時効や中間利息など、重要な事項にここ数年で変化が見られました。

それらについて、いろいろと記していこうと思います。


また、私が愛する祖国について考えているあれこれについても、併せて記載したいと思いますので、何卒宜しくお願い致します。

『論語』顔淵第12に,孔子の言葉として「訴へを聴くは吾猶ほ人のごときなり。必ずや訴へなからしめんか。」とあります。「裁判をさせたなら,私も人並にはできよう。私の理想は,訴訟事のない社会を作ることだ。」というような意味です。

 

これはまさに,法律家として忘れるべからざる根本でしょう。最高裁判事も歴任された家族法の泰斗,穂積重遠博士は,「昭和24年の春,はからずも裁判官を拝命したとき,そのとたん心に浮かんだのはこの一句である。」と言われています(『新訳論語』(講談社学術文庫版315頁))。

 

この句を敷衍して,『大学』ではさらに「情(まこと)なき者はその辞を尽くすことを得ざらしめ,大いに民の志を畏れしむ。此れを本を知ると謂ふなり。」とあります。

「意を誠にす」ということを説いたものですが,濫訴・虚偽告訴などをなからしめることの重要性を述べるものです。

わが国の現行法の以下のごとき規定と考えあわせるとき,まことに意味深長なものがあるといえましょう。

 

憲法12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によつて,これを保持しなければならない。又,国民は,これを濫用してはならないのであつて,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

民法1条 私権は,公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は,これを許さない。

 

民事訴訟法2条 裁判所は,民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め,当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

 

刑事訴訟規則1項2項 訴訟上の権利は,誠実にこれを行使し,濫用してはならない。

 

 

 

判決例については,裁判所が一部を公開し,また主要な法律雑誌に掲載されるものも多いため,その分析・検討は一般に広く行われています。私たちのような法律家も,司法試験受験時代から繰り返し,判例・裁判例の分析・検討は行ってきました。

 

ところが,和解となった事案につきましては,その結果が一般に公開されていないため,分析・検討のしようがありません。しかしながら,民事事件の過半数は和解で終結するため,和解で終わった事案の分析・検討も必要性は高いはずだと思ってきました。

そうしたところ,平成28年12月に第一法規から『交通事故裁判和解例集―裁判上の和解における損害賠償実務とその傾向―』(弁護士法人サリュ)という書籍が刊行され,私も独立後,参照しています。

 

交通事故事案以外の和解事案についても,分析・検討できる資料の刊行が待たれるところですね。