香月泰男(1911-1974)

洋画家。山口県大津郡三隅村(現三隅町)生れ。東京美術学校(現東京芸大)に在学中から国画会に出品、同人となる。39年、新文展で特選。43年に召集され、満州へ。捕虜としてシベリアに抑留され、過酷な体験を経て47年にやっと復員がかなう。シベリアでの体験が「埋葬」に代表されるシベリア・シリーズを生み出し、1969年第一回日本芸術大賞を受賞。他に「告別」(東京国立近代美術館)、「奇術」(京都国立近代美術館)、「雪」(山口県立美術館)など。ふるさとの三隅町には香月泰男美術館もある。

 

この、香月泰男美術館に一度行ってみたいと思い始めて四半世紀、こうも長い間行けなかったのには理由があり、


交通の便が悪すぎて・・・・

(公共交通機関ではほぼ無理)


テーマが重いので精神的に余裕がないと観られないということもあり・・・

思えば長い間余裕なかった。

 

そんなこんなで25年。

 

山口県立美術館で没後50年の展覧会が開催されていると聞いて、最終週に足を運んだ。





シベリア・シリーズは黒や黄土色など暗い色調で描かれたものが多い。



今回は、従軍とシベリア抑留にまつわる57点を、山口での召集、満州での軍隊生活、敗戦、奉天でのソ連軍による武装解除、同年のセーヤ収容所への収容、翌年のチェルノゴルスク収容所への移送、そして1947年の「ダモイ(帰還)」の時系列で展示されているところに特徴があった(と思う)。

 

シベリアに抑留された日本人は52万人、そのうち1割を超える5万4000人が過酷な状況の中で亡くなったとされる。3万人以上の遺骨が見つかっていない。

 

絵には香月泰男本人による解説が添えられていて、武装解除の後行き先も知らされず列車に乗せられ太陽の位置から自分たちは日本から離れて西に北に連行されているのだと知り絶望したことや、蟻になれたらどんなにいいかと思ったこと、食べるものがなく土がついた草すら口にしたことなどが語られる。

 

なお、香月泰男は、身近な草木や花、虫なども多く描いている。


「春夏秋冬」より

手元の画集ではなく、美術館で観る価値はあった。