そうして荒(正人)は、「天皇は全然責任をとっておらぬ」と述べながら、こう主張している。「文学者は政治の事だから俺は知らんぞといって看過したり、或は共産党に一枚加わって天皇の戦争責任を追求するーーーそういう態度においては文学者の戦争責任は絶対に追及出来ないんだよ。文学者が文学的に天皇の戦争責任を追及するならば、自分の内部にある『天皇制』に根ざす半封建的な感覚、感情、意欲ーーーそういうものとの戦いにおいて始めて天皇制を否定することができ、究極において、近代的な人間の確立という一筋の道が開けて来るんじゃないか」。218p